酷い耳鳴りがした。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
ガタン、その物音で目が覚めた。
緑谷「う…」
麗日「あ、デクくん目覚めた?」
目が覚めるとそこにはクラスメイトのみんなが何やら動き回っていた。
飯田「!よかった、目覚めたのだな!!」
飯田特有の腕ブンブンがどことなく安心した。
轟「緑谷以外はもう目、覚ました」
緑谷「そうなんだ、なんかごめんね」
轟「?なんであやまんだ」
どうやら僕が1番最後に目覚めたらしいことに若干の罪悪感が湧いた。
そして気づく。
緑谷「あれ、ここどこ?」
記憶を呼び覚ます。
先程まで僕は寮にいたはずで、上鳴くんの狐騒動があって。
そうだ扉に手をかけた瞬間、酷い耳鳴りがしたのだ。
耳鳴り、と言っていいのか分からない。
今思い返すと、なにか言葉だった気もする。
緑谷「上鳴くん、いないんだね」
クラスメイトがほぼ全員揃っている中、上鳴の姿はそこにはなかった。
飯田「推測の域を出ないが、恐らく寮内にいた者だけがここにいる。」
多分、飯田の推測は当たりだろうな、と緑谷は思った。
上鳴と自分達の違いはそこにしかないように思えたのだ。
飯田「みんな!1度集まってくれ!緑谷くんが目覚めた!!」
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常闇「ふむ、目覚めたか」
砂糖「これで一安心だな!」
僕が目覚めたことで、1度会議を開くらしい。
飯田が柱石となって話を進める。
飯田「まずこの部屋について、なにか進展があった者はいるか?」
シーン、これが漫画やアニメならそんな効果音が着くことだろう。
切島「この部屋、出口…つか扉がないんだよな」
扉、窓がこの部屋にはなかった。
真っ白い空間はどこか異世界に迷い込んだような、不安感を煽る。
耳郎「…言うか迷ってんだけど」
耳郎が挙手し、飯田に発言権を認められる前に話し始める。
耳郎「私の個性、イヤホンジャック。みんななら精度とか知ってると思うんだけど、」
イヤホンジャックといえばクラスで最強の索敵だろうと、この場にいるものはみな認めていた。
耳郎「…ここ、音しないんだよね全く。」
切島「?別に普通なんじゃ」
蛙水「切島ちゃん、」
蛙水が耳郎の発言に丁寧に解説を入れていく。
こんな時に蛙水は心強いなと思う。
蛙水「耳郎ちゃんの個性はやろうと思えば学校全体の音を聞くことも不可能じゃないのよ」
つまりね、とクッションを置いて話を進めていく。
蛙水「何も聞こえない、はおかしいの。」
ぞわり、肌に何かが走るのを感じた。
誰もいない。
何もいない。
電車も、車も、バスも飛行機も電車も。
人も、動物も、虫すらいない。
それは異常でしか無かった。
葉隠「…音、で言ったらあれだよね」
芦戸「耳鳴り!!」
僕の最後の記憶は酷い耳鳴りで、どうやらそれは僕以外も同じだったらしい。
飯田「あれは耳鳴り…というより叫びだったよに思う。」
八百万「そうですわね、」
叫び、それが妙にしっくりと来た。
そしてぶわり、額に汗がにじんだ。
緑谷「…あれ、みつけたって言ってたよね」
誰かが息を飲んだ。
1人、いや全員だったかもしない。
瀬呂「、個性の類だよなコレ」
今は超人社会。
何が起ころうと不思議でないのが常識だった。
が、そんな淡い希望は希望でしかない。
爆豪「…可能性は無いわけじゃねえ、むしろこんな時代だ、十分有り得る。が」
爆豪が淡々と発言する。
爆豪「俺は前にも言ったな、雄英に侵入することが不可能だってこと。」
そう、雄英に不審者の侵入など、ありえないに等しかった。
青山「うわっ!」
ザッとみんなの視線が青山に集まる。
青山の額に、何やら白い紙が引っ付いていた。
青山「何が起こっているの?!」
アワアワとする青山を見て、なんだか緊張の糸が少しだけ切れた気がした。
飯田「…、これは」
紙にはなにか書いてあったらしい、拾い上げた飯田が神妙な顔をした。
蛙水「何が書いてあったの?飯田ちゃん」
飯田「…どうか落ち着いて聞いて欲しい。」
―――飯田が読み上げていく―――
ひさしぶり
あいたかった
ずっとあいたかった
やっとあえた
すき
ずっとすき
だけどきらい
うそつきはきらい
でもね
あそびであなたがかったらゆるしてあげる
あそぼ
いっぱいあそぼ
おにごっこにする
るーるはかんたん
わたしはおにで
あなたとおともだちがにげるひと
ひとりでおにはさびしいの
だからおともだちかりるね
それとわたしのともだちもおに
あなたたちはね
ひとりでもにげきったらかち
せいげゆじかんはね
にじゅうよじかん
へやをでたらすたーとだよ
いきのびてね
―――
鬼ごっこ。そういえば何年もやっていなかったように思う。
最後はそう、幼稚園。
まだ個性が分からなかった幼い日。
かっちゃんが鬼で、僕は逃げたっけな。
飯田「…以上だ」
切島「つっても扉なんて、、」
扉。
僕らの目の前に、扉が。
あたかも最初からあったように自然と、現れていた。
轟「…こええな」
爆豪「ハッ!字からしてガキのイタズラだろ」
手紙の字は全てひらがな。
それはエリちゃんの字より正確ではあるが、浩太くんの字より歪だ。
轟「やるしかねえみてえだし、行くか」
瀬呂「ちょっと行動派がすぎるよ轟、」
轟の首根っこを掴んで瀬呂が止める。
瀬呂「グループ行動はどう?委員長」
飯田「うむ、話によれば1人でも逃げ切ればよし。ならば全員で逃げるよりは単独、しかし1人では何かと不便。」
あ、あとさ。と芦戸が割行ってきた。
芦戸「…この紙に書いてある、《お友達借りる》ってさ、いや!考えすぎだと思うよ?!でも万が一…。」
誰もが気づいていたが、触れなかった現実を突きつけられたような気分だった。
芦戸「この中、鬼…いるよね」
信じたくない、それが緑谷の感想だ。
この中に鬼が、少なくともこの後に鬼になる。
そしてその鬼は、自分達を襲ってくるかもしれない。
その時僕は、鬼をどうするだろうか。
その時鬼は、僕をどうするだろうか。
飯田「…鬼の人数が分からない以上、2人での行動は危ないことになる。」
八百万「1グループ5人、が安心でしょうか」
ぐいっと瀬呂が轟を引き寄せた。
ぐえ、と轟らしくない声が漏れる。
瀬呂「5人グループが3つ、4人グループ1つって感じがいいのかな」
梅雨「ええ、そして爆豪ちゃん、轟ちゃん、緑谷ちゃん、飯田ちゃんは分けた方がいいわ」
耳郎「…鬼と戦うとか、そうなった時戦力とか欲しいしね」
話し合いの末、グループは決まった。
飯田班
障子、砂糖、葉隠、尾白
轟班
八百万、芦戸、峰田、常闇
緑谷班
甲田、青山、麗日、蛙水
爆豪班
切島、瀬呂、耳郎
そして一同は扉へと足を進める。
【2話・手紙】
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