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君は君のままでいい

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君は君のままでいい

9 - わからない。君が6

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2024年08月16日

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学校が夏休みに入ってからは特に何もなく、ただ、だらだらと毎日を過ごした。



月曜日と水曜日だけは、夕方、涼しくなってからは悠さんと会うため桜舞公園に通った。



それでも時間は有り余っているし、だからと言ってこれ以上勉強する気にもならないし、ベッドに転がってスマホでSNSを開く。



すると、SNSのおすすめ紹介欄に泣ける恋愛小説三選というショート動画が出てきた。



こんな恋愛に疎い私だけど、顔も別に可愛くもないけど、いつかは私のことを好きと言って大切にしてくれる、素敵な人と出会って本物の恋愛をしてみたい、そう思ってしまう。



恋愛小説はそんな私にいつも元気をくれる。辛い現実など忘れて空想の世界の中だけでも心が踊るような恋愛を体験したい。



ショート動画の中に気になった恋愛小説を見つけたので近くの本屋に行くことにした。



本屋に入ってから恋愛小説が置いてある棚の、近くの児童書コーナーで真剣な表情をしている昭彦さんを見つけた。その隣にはベージュカラーのショートヘアがよく似合うおっとりした雰囲気の女性がいる。



「あら、朝陽ちゃんじゃん」とすぐ昭彦さんが気づいて、公園で会った時と同じ笑顔で私に手を振った。



「どうもです」と私も会釈をする、二人の近くにいくと子どもの絵本ではなく、出産についての本の前にいたのだとわかる。



「君が晴に似てるって悠君が言ってた子ね。私、隣のこいつの嫁の八満明里です、よろしくね」



こいつ、という親しみを込めた呼び方から、二人の仲の良さや長年の関係であることが伝わってくる。



晴に似てるという言葉に疑問を感じたが、それよりも、私は昭彦さんが持っていた本に目がいってしまった。



本のタイトルには『不妊治療』と書いてある。高校生の私には出産なんて遥か先のことで、相手がいるかも経験するかもわからない、未知の想像もつかないことだけど、不妊という言葉くらいは聞いたことがある、赤ちゃんが授かりづらいということだ。



「あぁ、この本?うち不妊みたいでさ、今度、二人で病院にいくことにしたんだ。その前に自分たちでも勉強しようと思ってね」と、昭彦さんが教えてくれた。



しまった。私が本を凝視してしまったせいで、言いたくないことだったかもしれないのに説明させてしまった。この前の桜舞公園では、あんなに明るい雰囲気だった昭彦さんがさっきの真剣な表情をしていたのだ、夫婦にとってはただ事ではないはず。



「そうなんですか」と心配そうな顔を作って言ってはみたものの、やっぱり私には想像がつくようなことではない。



そのあと目当ての恋愛小説を買ってから家に帰って、小説を読む前に気になったので不妊についてスマホで検索をした。



すると、『終わりの見えないトンネル』『パートナーとの不仲』『うつ病になった』と出てきた。



私には想像でしかなけど不妊というものが、夫婦に与える辛さが重大なものなのだと検索内容から伝わってくる。



児童書コーナーには子どもの絵本や出産について、赤ちゃんができたらという明るい内容の本も置いてあって、不妊治療の本もそこに置いてあった。



昭彦さんと明里さんは、どんな気持ちでそこで不妊治療の本を探して手にとったのだろうと考えてしまって、勝手だけど、私は少し涙が出た。

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