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納棺師嫌われ小説
ポストマン、心眼、カウボーイ、庭師のみが優しい世界。
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社交恐怖を患う彼は人と一緒の生活をするのはとても難しい。けれどもここの人はそんなイソップを気遣ってくれるのだ。自身に必要以上に触れることなんて、少し精神年齢の低いエマやトレイシーや「記憶」しかしない。彼女らも少しは気をつけていてくれるし、何より自身のことを避けないでくれて、適切な距離で話してくれる。彼にとってこのことは何よりも救いになっただろう。
納棺師の彼はベッドの上からのそのそと起き、時計を見つめる。いつもどうり、そう、何の変哲もないいつもどうり…、彼にとってそれは喜ばしいことだが今日はどこか嫌な予感がした。
「カールさん、おはよう。良く眠れたかしら。目元にクマがあるわ」
「医師」のダイアー先生がそう聞く。ゲーム内ではいつも注射器を持っていて、自身の治療もすぐできるし味方のデバフを無くしてしまうような治療の能力の持ち主だ。彼女がこう聞くのはいつもの
ことで、僕はいつもこう返す。
「はい。人の取らなければいけない睡眠量は取っていると思いますよ。 」
そう言い返すと医師の彼女はふわり、と微笑んでそうならよかった。と言った。そう、食堂で食事を済ませて部屋に帰ってゲームに出るまでは良かったんだ… 。
僕はゲームの中で大きなやらかしをしてしまった。今朝方から調子が悪く冷静な判断が出来なかったのだ。それ故に「心眼」、「カウボーイ」、「庭師」の3人が出血死、「納棺師」の1人飛びという悲惨な結果になってしまった。結果僕は利敵のような行為をしてしまった。
ゲームが終わり、居館に戻ると皆が口々にこう言った。
「ヘレナ!エマ!大丈夫?イソップさん…なんであんな利敵みたいな行為したの!?」
機械をいつもいじっている少女が僕を睨みつけながらそう述べた。
次は 「あぁ、やっぱり君はそうなんだね。人が嫌いというだけでこんな残酷なことが出来る。君が解読もしないし救助もしないからヘレナもエマもガウィンも出血死を迎えたんだよ。君がしてる行為は立派な利敵だ。」
いつも穏やかな目隠しをした彼の声がとても冷たくて、胸にチクチクささって、苦しかった。その時にガウィンさんが帰ってきてまぁまぁ、とその場を和ませてくれた。ガウィンさんやヘレナさん、エマさんは仕方ない。と言ったが他のみんなは僕のことを「利敵の無納棺師」と呼ぶようになった。
次の日もベットからのそのそと起きる。あぁ、みんなに会いたくないな。なんて考えながら部屋から出ると自身の部屋の表札の紙に付け足しがされていた。
「 ” 無 ” 納棺師 」
まるでそれを強調するようにそう書かれた表札を見て僕はここに来る前だったら出来た「無視」が出来ずにただただそれを見つめることしか出来なかった。
食堂に行くと今日も「医師」のダイアー先生がいた。彼女はこう言った。
「寝不足だなんて理由を付けてきっと私達をいまかいまかと殺そうとしてるのよ。はぁ、おぞましい。」
僕にとっては 彼女 に言われたことはどうでもよかった。だけれど 「おぞましい」 この単語を聞くなり僕は泣き出してしまった。
ごめんなさい、ごめんなさい。と言いながらその場に崩れると先に食堂にいたみんながまるで気持ちの悪いもの、パーティー会場に出てきて踏み潰された鼠とでも言おうか。それを見つめるような瞳で此方を見てきた。
「
カールさん 、 立てますか?
」
1人の青年が僕に対してそう聞いてきた。そう、1人だけ。たったの1人だけ。彼だけが僕にそう声をかけてきた。何故かは分からないがそれだけでものすごく心が救われた。
スケッチブックに描かれた言葉にただ頷くことしか僕は出来なかった。