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「、」
死因前のものを記すにしても、今回の死因は流石に気持ち悪いもので筆が進まない。
「魅六様。お時間ですよ?」
長く伸びた廊下から一角にある茶室に顔を覗かせるこの執事が全部の原因なんだが、
硯(すずり)に筆を置き、横に置いていた学生鞄を手に持ち立ち上がる。
…やけに腰が痛い。
「、今日は休む」
「はて、何故です?どこか具合でも?」
首を傾げる執事、お前のせいだよ。
はぁとその場にため息を一つ残し、中央広間へと足を進める。
大々的に広がるその空間に、ポツンと一つだけ置かれたソファ、そこに寝転がる。
腹の上に何か少し重いものが乗ってくる。
『昨日の死因はどうだった?魅六』
ニヤニヤとうすら笑いを浮かべるこの小狐のせいで昨日は死んだと言っても過言ではない。
込み上げてくる苛立ちを抑えながら、腹に乗った物体を気にせず左回りに体を捻った。
もちろん乗っていた狐は驚いたように床に落ち、不貞腐れた表情をしている。
「疲れた、…少し休ませてくれ。」
重たくなる目蓋に逆らわず、そのまま瞳を閉じる。
数分も経たないうちに寝息を立て始める魅六様。
そして未だ腹部あたりに乗ることを諦めようとしない小狐。頭の上には音符が飛び交っている。
ソファでは体を痛めてしまうかもしれないが、まだ眠りの浅い状態で運ぶのは余計な善意になりかねない。
ご要望通り、リビング端にある受話器に手を掛け魅六様が普段通っている学校へと一報入れた。
「貴方は気にならないんですかぁ?」
腹の上に乗るのを断念したのか、人間の姿に変化し頭をガシガシと強く掻く彼。こちらに歩いてくる。
「何がですか?」
言葉を返せば「何がって…」と呆れたように笑い、私の顔を睨みつける彼。
何か気に触ることを言ったみたいです。
「魅六の仮面のことですよ、本当鈍感ですね。」
付け加えた皮肉とも呼べない挑発に乗る馬鹿ではないので軽く受け流してやる。
「小さい頃から付けていましたね、彼は。」
「だから気にならないのかって‼︎」
あぁ、彼の怒る理由が分かったかもしれない。
「銀狼。私の憶測にはなるでしょうが、今回貴方が魅六様を襲ったのは他でもない、魅六様の”仮面”を事に紛れて外そうとしたのですか…」
私の憶測に、驚いた顔をする彼。
「なんだよ。ようやっと気づいたのかよ」
「ご本人様は”羞恥心で死因を書き記せないようにさせる”ことが目的だと思い込んでいるようですがね。何故このような真似を?」
子供のように口を尖らせる彼。
「だって…気になるじゃないすか、」
整った顔が台無しだと思いましたね。