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【今日でいいんだよね?】
馬1号からメールが来た。
【ごめん。今日は具合が悪くて相手できない】
ベッドに寝転がりながら返す。
【そうなの。わかった】
「……………」
漣は携帯電話を枕脇に放ると、ベッドに仰向けに寝転がり伸びをする。
ここ何日か、“仕事”を断っている。
“後ろ”は軟膏で完治しつつあるが、喉はまだ痛みが走る。
ただでさえ悲鳴を上げまくって傷んだ粘膜の上に、その後胃液を吐いたのが悪かった。
2日間はヒリヒリと焼け上がるように痛かった。
今日になってやっとまともに話せるようになったものの、歌うなんておそらくまだまだだ。
「……てか。クジ先生は心配じゃないわけ?カウンターテナーの欠席は……」
掠れた声で呟きながら携帯電話を睨む。
パートリーダーである杉本にはメールしたが、もちろん久次の番号は知らない。聞かれたこともない。
でも半ば強制的に書かされた入部票には自宅の番号は記してある。
連絡しようと思えば出来るはずなのだ。あちらは。
(しようとしないだけでね)
思わずため息が漏れる。
(……俺のことなんか、どうでもいいのかよ)
「って……おい」
自分の股間を見て突っ込む。
彼の顔を思い出していたら、なんだか下半身に血液が集まってきた。
執拗にされた後ろはまだ痛いが、シカトされた前は無傷だ。
「あーもう……」
硬くなってしまったものは仕方がない。漣はジャージを軽く降ろし、下半身のソレを取り出した。
「………ッ」
触って軽く上下させると、若いそれはたちまちのうちに硬度を上げて赤く反り返った。
先を親指でグリグリと刺激する。
「……はッ。……あ……!」
【豚1】だか、【ゴリラ2】だかに教えてもらったテク。割れ目に沿って親指を這わせた後は、手のひらを使って、先っぽを回す様に刺激する。
「……んん!」
自分で与えた刺激で足に力が入る。
十本の指が、悩ましくシーツの上を彷徨う。
『……お前、煙草やめろ』
彼の低い声が、脳裏に響く。
うんざりしたような、呆れたような……それでも、少し掠れた優しい声。
『喉にいいわけないだろ、こんなの。すごくいい声してるのに、勿体ないぞ』
自然と上下する手が早くなる。
『うぶな反応するなよ。悪いことしてる気分になるだろ』
「あ……は……」
自然と声が漏れる。
『自分の、触ってみろ』
今まで聞いた言葉が、都合よくつぎはぎされる。
『俺に聞かせろ。お前の声』
「……あッ!……んんッ!!」
漣は自分の掌に、白い液体を吐き出した。
「……はは。すげー濃い……」
自嘲的に笑いながら、勉強机に手を伸ばしティッシュペーパーを数枚抜き取ると、いつもよりも硬い気がするその液体をふき取った。
自分に、中嶋の恋を無謀だなんて笑う資格なんかない。
中嶋の純粋な気持ちを、無駄なものと呆れる資格なんてない。
「久次先生……」
ちゃんとした名前を超えに出して言ってみると、胸が締め付けられて、漣は思わずTシャツの上から胸を握った。
壁時計を見上げる。
午後4時。
もうすぐ部活は終わりだ。
今日も久次は中嶋と個人練習するのだろうか。
「――――」
今頃中嶋は久次に漣のことを「やる気のない生徒は外してください」と訴えてるかもしれない。
漣の代わりに杉本が個人練習に加わり、漣なんかよりも大きな声が出るようになっているかもしれない。
誰より……。
調子笛までもらっておいて、次の日から三日も休む自分に、久次が失望しているかもしれない。
(……声は出なくても、行ってみるか)
「………いッ!!」
勢いをつけてベッドから起き上がった拍子に、臀部に痛みが走り、漣は一人ベッドの上で悶絶した。