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刺青の男視点です
◇
クソッ…クソックソックソッ…!!
苛立ちのあまり舌打ちすらままならない。
何もかもが気に食わない。
「何なんだよあのバケモノは…!」
あんなバケモノが国王?総帥?ありえない。
自分の主人である国王もバケモノだが、視覚的にも物理的にも、あんなバケモノは見たことがなかった。
あんな規格外の生き物がこの世に生きていていいわけがない。
「なんて言えばいいんだよッ…!」
玉座の間と広く長い廊下を仕切る分厚い装飾が施された扉の前で親指の爪を強く噛んだ。
ギリギリと軋んだ音がするのも気にせず何とか自分が助かる方法を考え込んでいるうちに、玉座の間へ通じる扉が開いてしまった。
「…して、結果は?」
「は、はっ…二十名中、九名が殺害されました…その、残り十名中…五名は未だバレておりません…残りの六名は、その…任務を放棄しました……」
しどろもどろになりながらも、何とか報告を終えて安堵したのも束の間。
はぁぁあっ、と盛大な溜め息に肩が跳ねて、手足が震える。
このまま、俺の首は無くなるかもしれない…
その前に目の前のこいつを殺して…いや、無理だ。
そんなことしようと足を踏み出した瞬間に俺の首と胴は泣き別れになってしまう。
「そうさな…コレを預けよう」
「こ、れは…?」
コロコロと絨毯の上を転がってきた円筒。
手のひらくらいの大きさで、側面はガラス素材で液体が見える。
先端にはキャップのようなものが付いていて、小さなボタンを押すとプシュと音を立てて針が飛び出した。
「その“青いバケモノ”とやらが気になる…ここへ連れてまいれ」
「…!?」
一体どうやって、と絶望に飲まれかけた男に、国王がそっと耳打ちをした。
“ソレ”を使えば、簡単なことだ…と。
男の手元で揺れる濃い紅色の液体が毒々しい光を放ち、ちゃぷり、と音を立てる。
「行け」
「…はっ!」
男の頭には、あの青いバケモノとみどりのガキを手中に収める未来が浮かんでいた。
俺たちは、楽しい日々の裏で動く不穏な影に気付くはずもなかった。
◇