こじまくんって、普段あんだけ喋る癖に、こーゆー時って声あんま出さんよなぁ⋯。
まさやは、ゆるゆると動きながら、いつものように口に手を当て、小さく呻くこじまを見ていた。
この奥ゆかしさが、可愛いとは思うものの。
まあ、とはいっても、まさやもそう経験がある方では無い。
どのくらいの声量が普通なのかわからないが、それにしても少ないのはわかる。
いつも、最後の方は自分が盛り上がってしまって激しくしてしまい、その時はさすがにこじまの声もある程度出ているから、感じてない訳ではないと思うのだが⋯
「⋯⋯んん?」
あれ?
つまり?
もしかして?
まさやはある考えに至って、口の端が上がった。
「なぁ、こじまくんほんまに気持ち良い?」
「⋯え?う、うん。どうしたん?ちゃんと気持ち良いけど⋯??」
こじまは、訳がわからず目の前に「?」を並べながら、まさやの目を見た。
その目は笑っている。
「だって、なんかいっつもあんま声出さんし、気持ち良く無いんかなーって、おれ心配になっちゃって」
少し芝居がかった言い方になってしまっただろうか。
「そ、んなこと⋯無いけど⋯っ」
少し目が泳いでいる。
当たらずとも遠からずといったところか。
「ええと⋯おれ、まさやとすんの、好きやで?」
何かを誤魔化したいような返答。
嘘が付けないところが可愛い。
好きだというのは、本当なんだろう。
「ほんま?嬉しい。じゃあさ、今日はおれの好きにさしてもらって良い?ちょっと疲れるかもやけど」
「え?う、うん?⋯ア``っ?!」
言葉の意味を理解できないまま、こじまの視界が揺らいだ。
「ゔっ、ぐ⋯ッ、んん⋯ンっ」
こじまは口に当てた手を噛み、必死に声が漏れるのを食い止めていた。
いつもは、ラストスパートに行われるような打擲で、体がびっくりしている。
中に仕込んだジェルが少しずつ掻き出され、卑猥な音をたてていた。
「まさ⋯ッ、や。んっ。はぁ、はあ!」
何とか、目で訴えるものの意思疎通は取れそうに無い。いや、まさやに取るつもりが無さそうだというのが正しいか。
肌が擦れる音に、ぐちゅぐちゅといった音が響き、居た堪れない。
しかしそれよりも。
いつもよりしっかりと、身体の中に擦り付けられるまさやの熱が、たまらない。
既に知られているこじまの弱い部分を、執拗に攻め立てた。
「はぁっ、うっ、ンン⋯ッぁ」
目の前がチカチカする。
頭がぼんやりする。
呼吸ってどうするんだっけ?
ゆさゆさと揺れる視界の中、こじまは、思考が鈍っていくのを感じていた。
怖い。
「なぁ⋯ッ、まさや⋯ぁっ!待っ⋯待って⋯」
胸を上下させ、途切れ途切れに訴えかける。
「どうしたん?こじまくん」
まさやは、腰を止める事なく、こじまに応える。
こじまは、もう泣きそうな顔になっていた。
「これ⋯ぃや⋯っ!」
駄々をこねるように、まさやの 肩をポカポカ叩いた。
少しやりすぎたか。
嫌われては困るので、少しペースを緩め、しかし止まること無く話を続けた。
「嫌やった?やっぱり気持ち良くないん?」
まさやが子犬の様な瞳で情に訴えかけるが、今のこじまには効かないようだ。
「違う⋯ッあっ!あっぅうッ」
身体を仰け反らせ喘ぐこじまに、まさやは興奮が抑えられそうに無い。
凄く色っぽい。
普段は自分も余裕が無い時にしか見れないので、こんなにしっかり見たのは初めてだった。
「気持ち良いんやったら、ええやんな?」
「嫌っ、気持ち良いの、嫌ッ!まさやのアホ!」
強く拒否され、流石に良心が痛んだ。
そろそろ本格的に嫌われそうだ。
こじまは、ギッと大きな瞳で睨んでから、枕を顔に押し当てた。
「おおお⋯それは窒息するから、やめよか?!」
無理やり枕を剥ぎ取ると、それでも離さまいと攻防戦になった。
「あほ!ぼけ!いや!」
「なんちゅーボキャブラリーやねん」
興奮したこじまは、語彙力の低い悪口を浴びせてくる。
しかし、その声はかすれている。
「⋯こじまくん、なんか泣いてへん?」
すんっ、と鼻をすする音がした。
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