淡い青が広がる夏が始まった。
青いそらへと昇る入道雲。
真っ赤なスイカ。
ゆっくり昇っては弾ける色とりどりの火花。
小さくちりん、と鈴を奏でるちょっぴりあたたかい風。
深い空の紺に良く似合う、屋台の周りを彩る暖かい灯り。
灯りに照らされててかてかと光る林檎飴。
熱い砂浜に押し寄せる綺麗な青がゆっくりと自分の体温を奪っていく。
左をちらっと覗き見れば、夏が苦手で今にも溶けそうな君が空を見つめていた。
「ゆきんこにはちょっと厳しい暑さやな〜……。溶けちゃうかも、ふふ」
なんて冗談めいたことを君は柔らかい笑みで言う。
光の反射のせいかこちらを向くまで君の顔が半分見えなくて。
ほんとに溶けて消えてしまいそうで、一瞬どきっとしちゃった。
儚げなあなたの横顔に見惚れてたら、貴方の首筋をそっと何かが伝った。
つー、って。
きっとただ暑いだけなんだろうけど、今見ると変に色っぽく見えるから困っちゃう。
しかも、それが顔に出ちゃってたみたい。
「顔、赤くなってるよ?日かげ行って休む?」
心配してくれてると思ったけど、いじわるな顔してるから、分かって言ってるんだろうな。
「んーん、ちょっと暑いだけだしいーよ。」
全部が眩しくて直視出来なくなっちゃった。
いっつもからかってばっかり。
ずるい。
「暑いしかき氷でも買いに行こっか。」
誤魔化すように提案したにしてはいい方だと思う。
「わー!食べたい食べたい!確かあの辺にお店あったよな?」
かき氷で無邪気に喜ぶ貴方は、さっきの儚げな横顔をした人とほんとに同じ人なのかな、なんて。
熱い砂浜の上をはしゃぎながら歩いて向かう。
暑いのは苦手だけど、夏っていい。
綺麗も楽しいもいっぱい詰まってる。
「「ついた……!!」」
君はブルーハワイのかき氷を買ったみたい。
自分は一番好きなレモン味。
氷の白と滲んだ青が、君に驚くほどよく似合っていた。
「めっちゃ美味しい…!!」
「ふふっ、おらふくんほんとにブルーハワイ好きだよね」
「えへへ、はじめは色が好きってだけの理由で食べてたんだけどね、」
「自分もそだよ、子供の頃はそんな感じ」
「やっぱそうよね〜」
なんともないこの会話が世界一幸せ。
「ほんと、おんりーってレモン似合うよね〜」
「おらふくんだって、ブルーハワイすごく似合ってるよ?」
「それ誰か他の人にも言われたことある!」
「だって誰が見ても似合ってるもん」
知らないうちにあなたのかき氷をずーっと見つめてしまってたらしい。
ただ青が綺麗で見とれてたんだけど。
「……おんりーも食べる?」
突然顔を覗き込んできて、びっくりした。
キスする時以外ないような至近距離で、無意識にどきどきしてしまう。
顔に熱が集まるのが自分でもはっきりとわかって、余計に恥ずかしい。
こういう無自覚であろうあざといとこ、ほんとずるい。
「ん、やっぱり食べたいんやろ?はい、あーん」
もう今更拒否権はないみたい。元から拒否する気もないけれど。
「、…あー……んっ」
ひんやりと冷たい感触が舌に触れた。
それと同時に、ゆっくりと甘さが口の中を満たしていく。
「どう?ブルーハワイもいいでしょ。」
「ん、レモンより甘くて美味しい」
「ねね、おんりーのもちょーだい?」
「……!え、あっうん、いいよ、はい、あーん」
「あー……んっ」
表情の一つ一つがずるい。
「美味しー!!」
「甘酸っぱくていいでしょ、さっぱりする」
「うん!次食べる時レモンにしよっかな〜」
「自分も次はブルーハワイにする。めっちゃ美味しかったし、」
何気ない会話の中に、また2人でかき氷を食べるって約束が混ざってて嬉しくなる。
「まだ7月だから、いっぱいかき氷食べれるね」
「わー!楽しみっ!」
相変わらず無邪気。
夏って楽しい。
この時間がずっと続きますように。
コメント
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表現力の神だ