いつも通りの注意事項。
・なんか…ですね。思いついたので書いてみました。
はよバッドエンド書けって?…すみません。
・多分短い筈です。多分。
・ソナチです。苦手な人は回れ右。
・R-18ありません。
・ナチは死んでます。
・ソ連目線
大丈夫な人は本編へ、Go。
1991年12月26日。
どうやら今日が俺の命日らしい。
「…頭痛い」
段々と崩壊してゆく、自分の体。
指先から始まり、今は頭が少しずつ欠けていっている。
多少の痛みと共に少しずつ体が消えていくのは、ただただ恐怖だった。
そんな中でもウシャンカ帽は変わらず被り、手袋をはめ、雪道を黙々と歩く。
時たま視界に入る赤い破片が、俺は今まさに崩壊している途中なのだと実感させる。
そして、古びた木で出来た十字架の前に辿りつく。
雪深い山の中、ここに一人の男が眠っていた。
「よぉ、ナチス」
俺は墓に語りかけた。
ここは、ナチス・ドイツの眠る墓。
今から大体50年前、俺はこの男と独ソ戦で殺し合った。
毎日のように飛ぶ弾丸。爆弾。毒ガス。
最新の兵器を用いて、俺はナチスの侵攻を食い止めようと必死に戦った。
だが、そうやって殺し合っていても…クリスマスの日にはお互いに雪玉を投げ合って、共に話をしたりサッカーをしたりと…限定的な状況下であれば色々と交友が深い相手でもあった。
でも、こいつは1945年、突然自殺してしまった。
拳銃でBang、とな。
こいつの死体を見た時はびっくりしたぜ。
側頭部から血がだらだら垂れてて、でもナチスはどこか笑顔で。
なんだか、不思議な死に顔だったのをいまだ鮮明に覚えている。
「今日は記念すべき日だぞ。
お前が嫌ってやまない俺がとうとう崩壊だ。
まさか俺みたいな大国が崩壊するとはな、全世界びっくりするだろうよ」
一人で笑いながら、返ってくることのない返事を期待して話す。
でも、こんな時間もたまになら良い。
俺は持参したウォッカを同じく持参した二つのグラスに注ぎ、一つは俺に…もう一つはナチスの為に墓前に供える。
「ほれ、飲め。
折角だし、久しぶりに酒飲みたいだろ?
…え、ウォッカは嫌い?好き嫌いすんなよ馬鹿が」
なんとなくナチスが言いそうなことを予想して、俺は会話を途切れさせない様に言葉を返す。
ナチスに注いだグラスにチンとグラスをぶつけ、乾杯の意を示してから一気にウォッカを煽った。
「美味い」
…なんて心にも思っていないことを、声に出す。
ナチスが死んだ日から、俺は酒を浴びるように飲んだ。
ベラルーシにやめろと言われても、俺は飲んだ。
『ナチスが居なくなった』
その事実から逃げる手段として、俺は酒をただ飲み続けることを選んだ。
あれだけニンゲンが現実逃避の手段として酒を飲むんだ。
じゃあきっと、俺も酒を飲めば忘れられると思って。
だが、代々うちは酒に強い体質だったのがこの時ばかりは災いした。
沢山沢山ウォッカの瓶が空いても、決してナチスの事は忘れられなかった。
むしろ、飲んでいる間になぜか虚しくなって涙がぼろりと零れる事さえあった。
それくらい、ナチスの存在は大きかった。
もう一杯、と思って、俺はウォッカを注いだ。
「…ソ連崩壊記念日だぞ。
お前なら笑って喜んでくれるだろ」
クリスマスの翌日。
降り積もった白い雪の中。
こうしている間にもどんどんと崩れていく。
赤色が、どんどんと崩れていく。
どことない虚しさが、崩れた分だけ埋め合わせの様に心に降り積もる。
「…自殺したときのお前も、こんな気持ちだったのか」
答えが返ってくる筈もない問いを投げかけた。
「お前とは、戦争が終わった後…
とても良い友人になれると思っていた。
でも、そんなことはなかったな」
ナチスが生きていたら、と何度も思った。
きっと、意見は対立してようと根は仲良くあれたのかもしれないと思った。
でも、きっとそれはいくら俺が考えても決して実現しない。
ナチスは意外と律義な奴だ。
日本でいう、『立つ鳥跡を濁さず』。
ナチスは、自分が犯した罪を放ったらかしで終わらせたりしない。
何かしらの形で、絶対にケリをつける男だった。
「俺もあの時、死のうかと悩んだ」
空気が変わった。
俺はナチスの墓にもたれかかった。
「お前が死んだ日、俺も一瞬…一瞬だけ、お前の後を追うことを考えた。
あっちへ逝って、俺とは二度と会うことも無いだろうと思ってただろうに俺がそっちへ逝ってお前と未来永劫顔を合わせ続けたら、一体どれくらい絶望というか…ショックを受けるんだろうって期待して。
でも、やめた。
ここで俺が崩壊すれば、きっと第二次世界大戦は終わらないと思ったから。
その時には、もう日ソ中立条約を破って侵攻することは決定していた。
もし俺があの場で死んだら大日本帝国へ日ソ中立条約を破って侵攻することも無かっただろう。だから多分…日帝が降伏した8月から数えて、短くても数カ月間はまだ戦争が続いていた筈だ。そんな状況、ナチスは望まないだろう」
「だったら、みっともなくあがいて崩壊した方が良い。
お前に見せつける様に発展して、科学力も向上させて、人口も沢山増やして。
そうやってお前を超えてからフッと自然に消えた方が、お前にとって一番の嫌がらせだと思った」
口元に笑みが浮かぶ。
「…なぁ、ナチス。
また、これでお前と会える。
崩壊して、俺の意識が消滅して、そっちへ逝ったら……きっと、また……」
なんだか眠気がやってきた。
崩壊はかなり進んでいる。
「きっと、これからは『ソビエト社会主義共和国連邦』…社会主義の世界ではなくなり、『ロシア連邦』として資本主義の政治を進めていくはずだ。
あとは全部、息子のロシアに任せている」
ときたま喧嘩っ早い所がちょっとアレだけどな、と付け加える。
「…ナチス・ドイツが崩壊した後も、後任の東ドイツと西ドイツが国の政治を請け負っただろう?
あれと一緒だよ、もう後の世代に任せる時が来た」
ふわりと頭に手が置かれる感覚がした。
見上げても誰も居なかった。
「…ナチス、そこに居るのか」
そう聞いても、返事は返ってこない。
何となくそこだけ暖かい空気があるような気がして手を伸ばす。
何も、無かった。
元より返事が返ってくるとも、俺を迎えに来てくれるとも思っていない。
ただ━━━━…
この言葉が、お前に届いてほしいと願っているばかりだ。
「…嗚呼、もうそろそろか」
体全体の感覚がもう既に無い。
そろそろ、俺は完全に崩壊する。
視界が、段々と不明瞭になっていく。
「…さようなら、世界」
「Я иду туда сейчас, любовь моя.」
その瞬間、俺の意識は途絶えた。
ドイツと話している時だった。
雪の降る、寒いクリスマスの翌日。12月26日。
不意に、涙が目から零れ落ちた。
「…んぁ?」
ぽたぽたと零れ続ける涙を、一瞬信じられなくてぱちくりと瞬きした。
悲しくなど、ないというのに。
「…ってことがあってよ……って、ろ、ロシアッ!?
俺何か気に障るようなこと言ったか!?」
話していたドイツが慌てて俺に駆け寄り、肩を揺さぶった。
俺は意識して、へら、と何でもないように微笑む。
「なんでもねぇって…」
「なんでもなかったら泣かないだろ!?
なぁ、ど、どうしたんだよ!?」
目を見開き、心配そうにこちらを見つめるドイツ。
俺は、何となく事情が分かった。
「…崩壊、したんだろうな」
「…え?」
「親父が…ソ連が、崩壊した」
ドイツが大きな目をさらに見開いた。
「ソ連って…お前の父親で、世界一の領土持ってるとこだろ?
そこが、崩壊したのか…?」
「嗚呼。これで、ソビエト社会主義共和国連邦は国の地図から完全に消える。
次は…俺か」
「泣きながら冷静に解説するな…」
ぼろぼろと涙が零れていくのと並行して、心の中にぽっかりと穴が開く感覚がした。
きっとこれは、俺の中から消える『ソビエト社会主義共和国連邦』の分。
でも、それと同時に『自分がやるべきこと』も、一緒に流れ込んでくる。
俺は涙を拭った。
「…すまんな、ドイツ。これからは、俺が頑張らないと。
新しく…『ロシア連邦』として、今度は社会主義じゃなくて、資本主義として…親父の分まで国を発展させないといけない」
拳を握り締め、俺は誓うように一言一言に力を込めていった。
ドイツは、俺の拳をそっと両手で包み込むように握った。
「…お前なら、きっと大丈夫だ。
応援してる」
ドイツが、優しい笑みをたたえて言った。
『………ここ、どこだよ』
目が覚めると、見知らぬところに居た。
一面の、花畑。
『…そうか、俺は崩壊して…
じゃあ、ここは…あの世、か』
あの世なんて存在、全く信じてなかったが…
まさか本当にあったとは。
草花を折ることに関しては心配いらない様だと本能で感じ取り、俺はどさっと草原に寝転んだ。
綺麗に澄み渡った青空と、澄んだ風。
俺の頬を風が撫でていき、その数瞬後に草花が揺れる。
『…………』
ただ、何もせず眠り続けられるような気がした。
このままここで一歩も動かず、ただ草花と青空だけを眺めて永遠の時を過ごせるような気がしていた。
でも、その平穏を打ち破ったのは、
やはりあいつだった。
『…おい、ソ連。
こんなところで何をしているんだ。
早く行かないと、ウォッカ。俺がすべて飲んでしまうぞ』
黒い軍服に身を包んだ懐かしい姿をした“あいつ”は、寝転がる俺を見てにっと笑った。
つい思いついたソナチ。
描けて幸せです。ハイ。
きっと次回は監禁日帝のBADENDをちゃんと書くと思います。タブン。
では!
コメント
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(久々に顔出し致しますよ Niin mukavaa
初コメ失礼します、えっと……プロの小説家さんですか?プロですよね?(( 全部読み漁ったんですがどれも神作品すぎました…バッドエンドの方も楽しみにしています!
(言葉にならない叫び) 透明なソナチ小説だ、、、(?) ほんとありがとうございます