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その魔女は村を幸せに満たしてくれました。
夢を叶える魔法を使ってくれたのです。
あるものは王に、あるものは大きな畑を手に入れ、あるものは嫌いな人が全ていなくなりました。
とても素敵なことです。魔女もとても満足していました。村も笑顔に溢れていました。
溺れるくらいの笑顔でした。
「新しい村長さんですか?」
魔女の家は村のいつも木が生い茂っている林の向こうにあった。魔女の家は暗くなく、木漏れ日が綺麗だった。蔦が巻いている所もあったが、それすらも美しく感じた。
「はい、この村では有名な貴女に一度会っておきたくて。突然で失礼だと思いましたが…。」
「いいんです、私こそ家からあまり出ないので助かりました。こちらに座ってください。」
魔女は椅子を引いた。木製の椅子で、あまり座られていない印象だった。
「ゆっくりしていってください。私も色々な話がしたいです。」
魔女は何やら紅茶を用意しているようだった。鼻を優雅な匂いが撫でる。ティーカップのかちゃかちゃという音が可愛らしい。
彼女は魔女には見えなかった。村にもいるような普通で簡素な服を纏い、紅茶を作る時も魔法を一切使わなかった。
「どうぞ。」
「ありがとうございます。」
魔女は私の前に紅茶を置いた。私は話題を振る。
「貴女はこの村を豊かにした張本人です。なので遠い恩人と言っては何ですがお礼を申し上げます。ありがとうございました。」
魔女はゆっくりと首を振る。
「いいえ、私は何もしていません。私ではなく魔法の力です。」
「私も小耳に挟みましたが、魔法を扱うのは難しいことだと。誰しもできることではないでしょう。」
「そう、ですか。ありがとうございます。」
魔女は笑顔になった。
また新しい話題を振った。
「そう言えば貴女は最近村に来ていないと村人達から聞きました。なぜでしょうか?」
魔女は少し躊躇ってから話した。
「いや、必要性がないだけです。私は私でどうにか生活できるので。」
私の頭に疑問が浮かんだ。
「どうにかでは大変ではないでしょうか。村に来ても大丈夫ですよ。」
「いいえ、遠慮します。」
私の額が汗ばんできた。
「むしろ来て欲しいくらいです。私も貴女の魔法が見てみたいです。」
「それはできません。」
「また村を潤せます。もう枯れ始めているのです。」
「私には関係…。」
魔女の言葉を遮って続けた。
「お願いです、私たちの願いを叶えてください。」
魔女は立ち上がった。
私は魔法使いだった。魔女とも呼ばれた。
魔法で人々を笑顔にしたかったが、師匠からあまり人に干渉するなと言われ、言いつけをしばらくは守っていた。
だがしかし、私は破った。師匠がこの世からいなくなった途端、村を救った。
人々の願いを叶える魔法を使ったのだ。
私は神なのか仏なのか。私は崇拝された。
いいや、崇拝でもなんでもない。もてはやされて、魔法を使うだけの道具かもしれない。道具を磨いてただけかもしれない。
また1人1人と魔法を志願する。村の幸せならと考え、魔法を使っていった。人々の怪我を治すように。
しかしその魔法は辛かった。痛かった。人々の願いにある棘が私に流れ込んでくる。
その棘は人々の願いが叶わないように付いているもので、願っても努力しても叶わない願いがあるのはその棘のせいだ。
その棘が世界の均衡を守っている。
その世界の均衡を私は破ってしまった罪人である。罪人には罰を、棘を。
魔法をかけるたび棘が刺さる。一度言った。しかし人々は無視した。私たちは魔法がわからないだか、私は願いを叶えられていないだか。
自分の利益のために人間は動いていた。そんなこと知っていたが、無視していた。
師匠の言いつけはそういうことだったのだ。暗幕を剥げばものは日焼けする。劣化する。
もうダメだった。
私は立ち上がった。彼の顔は紅潮していた。けれど私は訴えた。
「魔法の棘が刺さるんです!魔法をかけるたび!もう散々です!そんなことは決してできません!」
机を強く叩いた。鋭い言葉で刺した。
それを相手はすぐ修復する。
「いいんです、それでも。村が死にそうなんです!貴女が助けた村がそんなことになっていることも知らなかったんですか!?」
彼は続ける。
「また村が潤えば貴女も幸せでしょう?幸せが帰ってくるのはトゲなんか気にしないくらいに幸せになれるでしょう!?」
私は一息ついた。呼吸をする。
「痛みがわからない者には言われたくない!人の幸せを決めるな!ああ、私は幸せが好きだった。人々の欲も知らずに幸せだった、大層幸せだった。でももう気づいたんだ、私が道具だったってね!それに私がいないとまた村は乾いていく!それでいいんだ!私は私だ、私利私欲のために動く!汚いやつでもお前らが不幸なら充分に幸せだとな!」
ドブのような記憶が渦巻いた。そんな気がした。今まで思っていたことを誰かに話すことができるなんてね。
彼は顔を青くしていた。このまま返す気にはならなかった。また道具として私を見てきたやつなんて。
一つ蹴りを入れた。彼は壁を越えて吹き飛んでいった。滑稽だった。
まだ生きてるかもしれない。けれどそれでいい。まだ苦しんで欲しい。
もう自由だ。
人々は願いを叶えてやると王のようになった。幸せの影響でもあるし、大きな自信がもたらしたのかもしれない。王冠を持っているようだった。
その王冠を沈めてやりたかった。ずっと前から。
これからも訪問する奴がいるかもしれない。いつでも待っている。そのためにいたくもない村の近く住んでいるのだから。
また誰かが来ますように。
その魔女はその幸せが持つ棘に、王冠に溺れさせられました。
誰もが死んだと思っていましたが、彼女はずっと溺れながら、苦しみながら復讐に身を真っ黒にしていたのです。
彼女は這い上がってきました。人間の皮を持っているドブです。
魔女はじっくり人々を苦しめました。なんと意地の悪い魔女でしょう!魔法はもう2度と信じません!
[あとがき]
目を通していただきありがとうございました。
描きたいな〜と思っていたボツな内容を泥人形にしてみました。勝手に色は塗ってください。
元が泥人形なんで汚くなりそうですが。
いつか魔女が主人公のファンタジーを書きたいと思っていたんですがどうしても苦しめたいなぁと思いまして。なんででしょうね。全く酷いですよ。
長くなりましたがありがとうございました。よろしければ感想をコメントによろしくお願いします。これからも励むきっかけになると思います。