コメント
2件
びっくりしまたw
長いですねw
過去作品です。
if日本のファシズム思想の物語です。
なろうで投稿しようとしましたが、ご時世的にアレなので没にしました。
長いです。とにかく長いです。
途中なので変なとこで終わってますがよければ。それでは良い時間を。
架空戦記とある大都市帝国。かつて軍事に長け、商業と巧みな外交交渉で華々しい時代を遂げたその国の名。そしてその頂点にして最高峰の原点。民から呼ばれた名は女王。その名を赤月神楽あかつき かぐら彼女こそがこの国の支配者である。そしてその彼女の基の支配で埋め尽くされる国。それが我らが帝国なのだ。
どの時代にも無茶苦茶な命令をいう上司は一人くらいいる。そしてその上司に逆らうことはできない。それは華々しい大帝国時代でも変わることはない。仰げば其処はいつもと変わらぬ大理石で塗り固められた天井。他の官僚が規則正しく靴底を鳴らす。格なる自分もその一人だと、前を見据えゆっくり歩を歩みだす。規律を重んじ礼儀を忘れず。社会人としては当たり前どころか幼少学校でも教わるソレ。確と忘れるものか。耳に胼胝ができるほど言われてきた。そして軍人ともなれば背筋を伸ばし歩幅は一定に歩くのは常である。只、今だけはその軍規を破りたい。上司からきた書類の山。これを今日中にと言える上司の脳みそを見てみたい。出来ることならその脳みそを勝ち割り大音量直接脳みそに流し込みで反抗してやりたい。階級社会の嫌な点だ。かといって放棄すれば軍務ができない奴としてクビだ。最悪死刑。そんなのは勿論嫌だし、まだ首と胴体は仲良く繋がっていたい。重い足取りを運びつつ、自身の弐階にある軍務室に向かう。
ご丁寧にも弐階に上ると「朧谷 小夜」と書かれた扉の前に立つ。ドアを開けるために山のような書類を床に置く。これだけで重労働だ。普段から訓練は欠かさず受けているつもりでも前線勤務組にはかなわない。重い扉を開け、勤務机に最短距離で行くと、ドッと書類を落とす。時計を見ると「今日」が終わるまであと9時間。午後10時には仕事を切り上げたいから実質7時間である。書類に目を通しサインを書き連ねていく途方もない作業。最後のほうは投げやりになる。と突然部屋に鳴り響く電話。全く、魔導伝書を使えばいいものを。内心指摘しつつ、受話器を手に取る。奥から響く参謀本部の声。どうやら上司の仕事をさぼれる口実が来たらしい。まあ後方勤務でもなく前線勤務でもない自分は半端者なので仕方がないかも知れないが。軍用コートに身を通し、扉を蹴飛ばすように開け、この部屋の主は去っていく。
世の中には善と悪があり、善な行いをしたものは、必ず善が戻ってくる。……というのは迷信であり、いつだって善な行いをしても戻ってくるのは悪だった。神というものは常に信じられない存在であり、くそったれでもある。人生、何が起こるかわからない。だからこそ目の前にいる人物の意味がわからない。「朧谷小夜、第401遊撃化臨時部隊に只今着任しました。」形式的な挨拶と共に、敬礼をする。「大変ご苦労。」足を組み優雅に椅子に座る姿はまさに女王そのもの。まさかこの人直々にとは思わなかった。「貴官の活躍は聞いているよ。ああ、座ってくれたまえ。」「お言葉に甘え、失礼します。」にっこりと笑みを浮かべる上官に寒気を覚えつつも何食わぬ顔で椅子を引く。「さすがは朧谷といったところだ。」「はっ、有難きお言葉です。」朧谷という苗字は嫌でもついて回ってくる。この上官は何を考えているのか自分が知る由もないが。「それでね、貴官の腕を評価してこの部隊に配置換えさせてもらったよ。」「光栄に思います。」相も変わらず形式的なやり取り。全くどの世界にも無茶ぶりを要求する上司はいるらしい。「それでね。」まだ話があるのかこの上官は。「貴官に問いたいけどこの戦争、今後どう動くと思う。」まだ拙い日本語。彼女はまだ15歳だ。15歳の上官。はたから見たら滑稽であろう。栄華を極めた大帝国の総統がまだ成人年齢すら満たない幼子なのだから。しかし彼女にはその有無を言わせない実力がある。そう彼女は、赤月神楽は。この帝国の絶対権力者なのだから。そして彼女は言った。この戦争はどう動くと。「僭越ながら申し上げますと、この戦争は今後過去の第二次世界大戦のように世界大戦規模になったあと、アメリカの介入により連合国や同盟で国間を結ばれた後勝利で終わるでしょう。」過去は変えられないが過去から学ぶことはできる。今回も連合国が勝つと予想。これが無難な答えであるだろう。第二次世界大戦から153年。このままでは人口は増加し続け高齢者も急速に増えていた。其の真下世界的なインフラに陥る。経済状況は勿論悪化し、失業者も増え世界は混乱に陥った。そして恐れていたことが起きてしまった。ロシアが経済範囲拡大のために南下政策を始めたのだった。これにより中国と朝鮮、ベトナム応戦したがあっけなくやられてしまう。ロシアは経済圏を拡大せるという私利私欲の基、ヨーロッパ各国にも戦域を拡大させていったのであった。その戦域は日本にも及ぼうとしている。最近で言えば北方領土の攻防。元々ロシア軍が居座っていたが、其処が陥落してしまうとまず北海道が危ない。のこのこと敵陣地へ乗り込み戦争なんてことをしなくてはならない。敵地のことは敵が一番よく知っている。餅は餅屋とも言うがまさに北方領土の地形を把握した完璧な戦術でくるだろう。そのことを加味したのがこの第401遊撃化臨時部隊なのだ。敵の目を潰し、一気に叩く。戦意を削ぐのだ。これこそ本部の総統の目論見。今でこそ優勢だと思われるロシア軍は直に壊滅に陥るだろう。「……ですから我が帝国軍は今後他国との同盟を組み国力の強化を図ったほうが無難な策かと思われます。」まあよくも総統閣下の前で言えるものだ。と我ながら思うが、同盟を組めば最初の方こそ仕事量は多いものの直に減る。国力の強化と仕事の減量。御国と自分のwin-win関係。でもまあ総統の前で失礼なことを抜かしたことには変わりない。しかし僭越ながらと言っているのでまあそこは問題あるまい。「……そうか。どうも有難う。どちらにせよ貴官が後方勤務から前線勤務になるのは変わらない。」……前線勤務万歳。そもそも朧谷の本来の能力は前線でこそ発揮されるのだ。こんな家系にした神の皮をかぶった奴に災い荒れ。「謹んで拝見いたします。」典型的な会話part2。まあ訓練不足の訛った体を叩き直すには丁度いい。喜んで前線にこの身を投じて心身ともに鍛えなおさなければ。泥沼のような消化試合。一体何時になったらこの無謀な戦争は終わるのだ?
薄い酸素を求めて喘ぐうちにこの戦争に対する無謀さと回らない頭で必死に管制へ連絡を入れる。「ノース・コントロール!!!ノース・コントロール!!!応答せよ!!」必死な声も虚しいかな。返る返事はノイズのみ。空域を支配される。これは戦争において最も致命的であり、同時にほぼ負けということだ。そう、“ほぼ”負け。勝算は僅かな希望の光のみ。細い蜘蛛の糸を掴むような、砂漠の中でゴマ粒を探すような圧倒的不可能に近い。余程の奇想天外な作戦か、軍を寝返って亡命するか、生き残るには二択しかない。大体は後者を余儀なくされるだろう。しかし我々とて軍人だ。本国の要請するところに答えざるを得ない。本国を第一に本国のことを思い、本国への手向け花として敗戦を収めるのだ。もう我が国には巨大な帝国と戦うほどの余力など残っていない。そう手向け花。帝国の栄華100年とは誰が言ったのか。5年も経っていないじゃないか。じじ……じ……とノイズが走る管制からの連絡。しかし妨害電波が貼られているのか何も聞こえない。ロシアとの広大な国力の差をカバーできるほどの技術力があるにしてもこの戦いはいくらなんでも無謀だと感じざるを得ない。何故上は無謀な命令の下こんな戦いを始めたのか。しょうがない。遅延作戦だ。これは独断任務でもあり軍規に違反する行動でもある。『敵影、弐時方向より接敵まで五〇〇!!』最大出力で無線を垂れ流し、仲間の中隊へ危機を知らせる。これが最後になろうとも、せめて。せめて後続の戦闘部隊には有利に戦ってもらえるように。と、ノイズが晴れる。管制からだ。『呼び出し符号!!65!!!応答せよ!!』奇跡的観測だ。このタイミングで電波妨害が緩和された。でもこのタイミングで?兎も角管制とつながったことは奇跡だ。『此方65!!コントロール、状況は?』『貴官の中隊が確認しているように敵の大隊が近づいている。貴官の中隊は之より遅延戦闘に移行せよ。繰り返す、遅延戦闘に移行せよ』『65よりコントロール、離脱許可は?』『遺憾ながら許可できない』は?今なんと?『65よりコントロールすまないが未だ電波状況がおかしいらしい。今なんと?』『電波は改善されているぞ、65.繰り返す、離脱は許可できない』許可できない?いよいよここが墓地になるということか。私としたことが。温かいバカンスで死ぬつもりがこんなどこかもわからない極寒の地になるとは。『精々足搔いて見せましょう。オーバー。』そう一言やけくそで叫び無線をぶち切る。あぁ、神などがいたら大声で叫んでやりたい。この邪神め。と。『65より各員。今の無線を聞いた通り遅延戦闘だ。諸君の大好きな砲弾だぞ。しかも大隊規模ときた。さぁ、震える者はいないな?諸君戦争の時間だ。』其処まで一息に駄弁った後躊躇う間。この指示は何時だって部下の命を握っているのだ「……っ。各員、小隊長に続けぇぇぇっっ!!!」そして放たれる総攻撃。各々が国家の狂犬、ドーベルマンとして敵機体に噛みつく。「第6501小隊、切り込めっっ!!」「ヒット!!」「敵機体、一機墜落」「よし、その勢いだ!!高度を維持したまま敵機体を撃ちおとせ!!」「高度八〇〇〇から九〇〇〇へ上昇!!数的不利を技術力と高度でカバーしてやるぞ!!」「「了解!!」」「我が帝国の飼い犬、いや、狂犬は優秀だということを思い知らせてやれ!!親愛なるロシア国家の愛玩犬サモエドではなくドーベルマン、いや土佐犬だ!!暴れまわれ!!時間を戦場を帝国の物にするのだ!!!」「「はっっ!!」」部隊を鼓舞する一言。上官としてはこのくらいで大丈夫だろう。確実に堕ちていく敵機体。手足が末端まで働いているにも関わらず、中枢が働かなくては意味がない。さぁ、仕事の時間だ。
「戦況は第65航空中隊の遅延攻撃により主用網の突破は防げていますが…。」その言葉の後には重々しい空気。やはり諦めるしかないのか。主用網の突破は誠に遺憾であり、帝国にとっては敗戦を意味した。さすがに高官が弱音を吐くのは許されない。しかし暗にそう言っているのは高官もこの戦争の無謀さに気づいているのだろう。ロシアという広大な領土と国力を持つ国に戦争をしておいて本当に勝てるかどうか。否、勝てないだろう。出血だけでは済まされない程の損害を、すでに帝国は受け切ってしまっている。満身創痍なのだ。終わり方を知らないワルツはすべての四肢が捥げるまで続く。同じように帝国は戦争の終わり方を知らないのだ。いや、之もどれも総統が変わったからか。市中と戦地では状況の伝達が違う。市民が快勝に鼓舞される一方で兵士は疲弊しきっている。寝ることすらままならない戦地でどのように疲弊を解消するかなどと聞かれたら市民は我が帝国の兵士はまだ戦える。疲弊などしていない。と答えるだろう。そのぐらい戦地と市街では認識が違うのだ。引き返せないところまで来てしまった。ならば帝国の辿る道は一つしかない。限り得る兵力を集中投下するのだ。さぁ前進せよ。進め。屍を蹴散らせ。最後に君臨するのはこの帝国だ。
「朝霧少将。僭越ながら何時まで赤坂神楽を報知させておく気ですか?」溜息と共に目の前の事務次官を見下ろす。「仮にも帝国の総統だ。言葉遣いに気をつけろ。少佐」「ですが!!!」「少佐、諄いぞ。」「…本官はこの先の帝国の行く末を案じたまでです。」「……貴官の意見は重々承知している。しかし前総統が良しとされたのだ。認める他ない。」「……」「少佐、容易に口を開けば侮辱罪にあたるからな。」そう部下に釘を刺した後、罰だと言わんばかりに書類を目配せしながら渡す。それを受け取る部下は心底鬱憤の貯まった表情で少将を眺めていた。が、やがて自身の業務に戻る。少将は嫌でもわかっているのだ。終わりなき戦争の種をまいたのは帝国軍だと。少しも酔いしることのできない子供からみたら直ぐに気づくだろう。『可笑しい』と。しかしその子供が戦争の種をまいた帝国軍の長であり、戦地へ駆り出される兵士である。皆わかっているのだ。可笑しさはいつか捻じれを起こしくねり、そして地に還ることを。だからこそ少将は考えあぐねるのだ。駄々をこねている子供は実は私かもしれないなどと馬鹿げた思案の海に御身を鎮めるほどに。これは如何と苦笑しつつ目の前の書類の山を蹴散らすように。いつかは終わるのだ。ならば過去からの教訓を今に生かし、それも遂には過去の教訓へと成り下がることを、白きに澄み渡る陶器のマグカップに目が覚めるようなくらくらとするコーヒーを注ぎ込んだ。
「これから配属される部隊の確認は済んだか?」「失礼、どちら様にお尋ねの言葉です?」少々お道化た表情とは裏腹に、黒き深淵に誘うようなくさい文句に朧谷は少しげんなりとしていた。「ひどいなぁ…同期の言葉をこんなにも蹴とばすのはやはり君しかいない。」きしょい…なんだろう。救いようのないナルシストだろうか。「どうしようもない馬鹿に薬を使うのはこの戦時下もったいない気がしてつい。」「はは…中佐。私も怒るときは怒るぞ?」「それは失礼。しかしこんな冗談言えるのは少佐だけです。」そう言いつつ賄賂だとコーヒーを差し出す。「それは何とも名誉なことで。」そう少佐差し出されたコーヒーを遠慮なく受け取る。やはり連日の業務がたまっているのだろう。目の下には隠しようのない隈ができていた。「そういえば少佐、貴官には中佐への進級がかけられているようですが?」ふとたわいもない会話を持ち出す。「全く何処から聞いたんだ?貴官は耳が良すぎるな」「”朧谷”なものでね。」「貴官はどうやらファシズムらしい。」「民主主義は死んだ。でしょうか?」黒みを帯びた液体がカップの中を気持ちよくスイングする。「どうやら貴官の勝ちだ。中佐。しかし耳を立てると碌なことがないぞ。」「貴重な経験談をどうもありがとうございます。しかし私としては同期なのだからもう少し楽にしてもらいたい所存でして。」「階級の勝者だ。」「貴官が中佐に上がれば変わりのないことでしょう。」カップの液体を体に注ぐとねだるようにまたスティックを入れる。くるくるとワルツを踊るように。「抜かせ。貴官はまた戦場に出るらしいな。またすぐに先へ行ってしまう。」そう少佐が一息吐くと先ほどの自分のようにスティックをカップに注ぐ。二つの黒色が重なっている。「貴官の方こそ耳が良すぎるのでは?」「先ほどの御返しだ。」「いらない御返しですね。」「また死にかけるのか?」少佐がカップを傾ける。「今度も死にかけるの間違いです。」続けて自分もカップを傾ける。「…なぁ中佐。いい加減軍を辞めたらどうだ。朧谷とはいえ貴官は女性だ。私たちのように屈強でもあるまい。」「むしろ女性だからこそです。朧谷は軍の束縛から一生逃れられませんよ。」「軍も朧谷なら大切に扱えばいいものを。」「私が頼んだんでっす。朧谷だからと。名声や富など今の戦況下では何の役にも立たないとね。」「朧谷も随分なミニマリストになったものだ。」「私だけですよ。親愛なる同胞や先代は違う。」そう言うとカップを傾け二杯目を飲み干す。すでに少佐のカップは空になっていた。「…上官への意見申述はまた駄目だったよ。」「またか。貴官も懲りないですね。そろそろ懲戒免職が近づいてくるのでは?」「案外足音が聞こえるほど近いかもしれない。」「はは。しかし、帝国にそんな余裕があるのであればとっくに戦争は終わっているはずですよ。」「確かにそうだな。」暫しの沈黙の間、少佐はその自身の傷だらけの角ばった手でカップを遊ばせた。「…それではそろそろ軍務に戻るよ。」そう言って立ち上がろうとする少佐の軍服の袖を掴む。「な、なんだ中佐。」少佐の声色が戸惑う。言えない。「何もどうにも貴官はコーヒーを二杯飲んだんです。」「だからなんだ。」「この部署ではコーヒーは二杯目から有料なんですよ。」言えないのだ。「知らないな、そんなこと。」「規則です。」「やれやれ、ファシズムは厳しい。」そう言うと呆れ顔で軍用ポケットから幾何か小銭を取り出す。「次の会合は貴官が返ってきた時だな。」「骨ぐらいは拾ってください。」「またまた御冗談を。」そう言うと少佐は部屋を出ていった。部屋の中央の椅子に蛹のように蹲る。そう。言えない。貴官が懲戒免職になったら私も軍を辞めれる口実ができるなど。ただの同期だ。いざとなったら捨て駒だ。明日自分が地に足をつけるかどうかは自分で決めるしかない。一刻も早くこの監獄から抜け脱したい一心だった。