「ちょっとミッドナイトさん、離してくたさいってば!」
優は腕を引っ張られながら、不満げにミッドナイト──香山睡を見上げた。しかし、睡はいつもの妖艶な笑みを浮かべながら、しっかりと優の手首を押さえている。
「ダメよ。そんな無防備な格好で外に出るなんて、ヒーローとしての自覚が足りないんじゃない?」
「別に誰も見てないでしょ? 近所のコンビニにちょっと行くだけですから…!」
「誰も見てない」って思うのが甘いのよ。あなた、ヒーローでしょ? それに……」
睡の指がスルリと優の肩に滑る。優は一瞬ゾクリとし、身をすくませた。
「 ちょ、ちょっと、変なとこ触らないでください!」
「変なとこ? ただの肩よ?」
くすくすと笑う睡の表情は、まるで小悪魔のようだった。
「でもねぇ……罰は必要よね?」
そう言うと、突然優の脇腹をくすぐり始めた。
「ひゃっ!? ちょっ、やめ──っ!! やめてってば!!」
「ダメよ、罰なんだから♡」
「は、はしたない格好で出歩かない!! だからやめてぇぇ!」
何度も身をよじらせながら、優は涙目で降参の言葉を叫んだ。ようやく手を離した睡は、満足げに頷く。
「よろしい。じゃあ、大人しく部屋に戻って、ちゃんとした服に着替えるのよ?」
そんなやり取りを繰り広げる深夜の寮。岳山優は、これから夜の外出を考え直すべきかもしれない__少なくとも、この意地悪な先輩がいる限りは。
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