一週間後「さー、トマト採るか」
そう言って作業を始める恋の隣で、私は衝撃を受けていた。
・・・ちょっと規模大きすぎない!?
あんなことを言ったのも、「畑始めたんだよね」と軽い感じで言われたから家庭菜園だと思い込んで言ったのであって働きたくて言ったのではない。
「ちょっと大きくない?これ仕事場とかだったりする?」
「こんな大きさの畑で家庭菜園しないってww 農家始めたんだよ」
農家・・・
叔母さんが重機に乗っているんだから言われなくても薄々わかっていたのだけれど、3年の間に農家を始めていたということにかなり驚いた。
まあ一緒にやると言ってしまったのだから仕方がない。
「わかった、教えてね」
私はトマトを採ることにした。
数時間後・・・
「疲れたあー!」
「俺も・・・」
「水・・・って、あれ?」
ポケットに入れていたペットボトルが無くなっていた。
おそらくバスに置き忘れてしまったのだろう。
「飲み物なくしたの?・・・俺の水筒あげるよ」
恋は青色の水筒を取り出し、蓋を開けて私に渡す。
「えっ、いいの?恋も飲み物減ったって言ってたから無くなっちゃうかもしれないけど」
「いいよ、家まで近いからそれくらい我慢できるし、この水筒捨てようと思ってたから」
そうか、「貸す」じゃなくて「あげる」だった。
・・・あげる?えっ・・・!?
「ありがと」
困惑しながらもそう言った私を見て、恋は煌煌とした笑顔を私に向けた。
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