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⚠︎注意⚠︎
・スコアサ( 蘇英 )
・1話完結
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何時も雨ばかり降るロンドンは、その日は珍しく、雨の代わりに雪が降っていた。
寒さにより地面が少し氷を張っていて、慣れていないのか、数人はツルリと転んでいた。
夜になると寒さはより一層存在感を増す。
そんな、多くの者が自宅に居座る選択を取るような日の夜。イギリスはビッグ・ベンの前で、コートを羽織ながら、一人星を眺めていた。
雪は降っていても、空は澄んでいて、きらびやかに輝く星々がよく見える。
不意に自身の横を通り過ぎた北風に、イギリスは大きく体を揺らせた。
(寒い…)
寒さのお陰でほんのりと赤くなっている指先に、イギリスはほぅ…と小さく息を吹きかけた。
指に触れる息は、心做しか指の痛みを和らげてくれた気がした。
雨が降る時は、どちらかと言えばジメジメしていて、暑いと思う事の方が多い。
お陰で、イギリスは寒いのに慣れていない。
それでも、近くに明かりが煌々と光る、暖かそうな店があっても、イギリスは入ろうとはしない。
それは、着実に自身へと近づいてくる足音が、イギリスには聞こえていたから。
「…寒そうな格好してんな」
コートのポケットに両手を突っ込みながら、眉尻を下げた兄であるスコットが、イギリスの瞳に映った。
イギリスはスコットを見るなりふわりと笑い、傍に駆け寄った。
その様子を見て、スコットは犬みたいだと、心のどこかで感じたが、決して口に出す事は無かった。
互いにちょっとした談笑をしていると、先程と同じ様に、二人の横を北風が勢いよく通り過ぎた。
元より冷えていた体が、さらに冷たくなるのを感じたイギリスは、少々大きめにくしゃみをした。
そんな凍えるイギリスを見て、スコットは溜息を一つ吐く。
「お前なぁ…寒がりなんだから、もう少し厚着してくるとか、マフラー巻いてくるとかしろよ…学習しねぇ奴だな」
小さく文句を言いながらも、スコットは自身が巻いていたマフラーを取り、丁寧にイギリスの首に巻き付けた。
綺麗に巻き終わると、スコットはイギリスの額にデコピンを一発食らわして背を向けた。
兄の目が自身に向いていない事を確認すると、イギリスは口元をマフラーで隠しながら、小さく微笑んだ。
イギリスは寒がりだ。それでも、あまり厚着をしてこない。
それは、こういった些細な兄の優しさに触れるのが、イギリスは好きだから。
スコットは勘がいい。勘が良くなくても、毎度厚着してこない弟を見ていれば、何となく察せられる。
それでも、スコットは特に何か指摘する訳でも無く、イギリスの口に出さない甘えに付き合ってくれている。
「兄上」
イギリスの柔和な呼び止めに、スコットは大人しく振り返る。
しかし、イギリスは特に何をする訳でも、言う訳でも無く、静かに立ち止まったまま、後ろ手に手を組み、悪戯好きの子供のような笑みを浮かべるだけだった。
スコットは数秒訳が分からない顔をしたが、一分も経たない間に、イギリスの我儘を理解した。
左手はコートのポケットに入れたまま、ほんのり暖かい右手で、イギリスの顎を少し持ち上げ、そのままキスをした。
ん、とくぐもった声を確認すると、静かに口を離すが、右手が顎を離れる事は無かった。
「随分我儘になったな」
「兄上が、優しいからです」
普段は懐古主義を唄うのに、こういう時には過去の事を無いものの様に、甘く子供の様に笑うイギリスは珍しくなかった。
「兄上、もう一回」
自分よりも背丈の高い兄の唇に触れるべく、イギリスはグッと背伸びをするが、スコットは近づく弟の唇を手で遮断した。
「公の面前でするのは、好きじゃねぇ」
キスを拒まれたと思ったイギリスは、不貞腐れたように目を細める。
「家に帰るかホテルに行くか…好きな方を選べ」
冷たいようで、人情がある瞳が、イギリスを見下ろした。
イギリスは意味を理解して、緩やかに笑って見せた。
「前者で」
子供っぽさと大人っぽさを混ぜ合わせたような笑みが、スコットの緑色の瞳に映った。
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コメント
4件
素直なお二人がすごく可愛い…微笑んだり悪戯に笑ったりするアサなんて絶対可愛いじゃないですか
ぐふふふふ…最高です!! いいぞそのままやってしま((