コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「ただいまぁ」
ただご飯を食べに出かけただけというのに寝起きのようなだるさが肩に手を掛けている。壁へ目線をずらすと1番下のメモリに針が密集していた。もう、6時になったらしい。
『もう、こんな遅くなっちゃったよ。誰かさんのせいで』
「元はと言えば誰のせいなんでしょうね」
『寝るとこどこ?…ベッド?布団?俺、床はヤダよ』
「あのさぁ…。ベッドだよ、ベッド。
あっ、あと僕も床はゴメンだね」
『…小さい頃何も苦労せずここまで来たんだね』
「は?」
Wki 視点
低く暗い声が身体に絡みつき不安を煽る。
『もと、き?』
先程まで細やかな笑みを浮かべながら靴を揃えていた彼の動きが止まり、目は闇に染まっている。
恐ろしさと不安と静かな記憶が怯えている
『元貴?元貴っ、』
「小さい頃から苦労せず…?僕が?」
『ち、違っ¸くて。、そんなつもりじゃ』
「僕がどれだけ、どれだけ…、。」
酷く崩れた顔で元貴は泣き出した。
「………っ、ごめんごめん…ははっ、。」
「こんなつもりじゃなかったんだけど、 」
「ほら、ッ。もうこんな時間だ、寝よう」
「君はベッドだね、おっけ。おやすみ」
『おや、すみ…。』
重く浅い空気を纏う暗闇が優しく元貴を圧している様だ。
先程の自分自身の発言が彼の心のどこかの凪に風として現れてしまったのだろう。
きっとあのお偉い達はこの凪の存在を消せと出来損ないの悪魔を送り込んだのだろう。
まだ時計の針は6時からそう離れていない目盛りを指していた。到底こんな時間には寝れない、勝手に窓を開け椅子を風の当たる位置まで寄せて座る。
今日の月は綺麗に輝ける。雲が1つも見当たらない。
重い空気の中口を開いたのは彼だった。
「____あの日もこんな*そら*だった。
忘れたかった。でも忘れたことは1度もなかった。」
『…小さい頃の話?』
「意外と大きい頃。14の話。」
『悲しいこと…?』
「とっても悲しいこと。」
そう言って彼は夕日の橙色に濃く反射された黒い目を此方に向けて口を開いた。
『今、俺に話すの?』
「話せるかわかんない。…最後迄泣かずに話す方法があればいいんだけどな…笑」
悲しく渇いた笑い声が小さく響いた。
『_今の元貴は多分無理だろうね。』
「そう、?自分でも分かるけどね。、」
少しずつ、言葉が丸くなっている。決して良い印象が付け足された訳ではなく、生気が勢いよく廃れていっている感じだ。
『いいんだよ、別に焦らなくて。元貴が掴んでてくれれば何処にも行かないから。』
「本当に?でもいなくなるんでしょ、笑」
『心配ならちゃんと掴んでてよ。』
自分手を前に突き出して元貴の眼を見つめた。
「ヤダよ急に、恥ずかしいなあ、笑」
『逃げないで、笑ってさ。何がそんなに怖いの?元貴。』
「逃げてないよ、怖さなんてこれっぽっちもな__」
『逃げてるよ。俺から』
「へっ、。?_」
橙色に反射された瞳の震えは、この会話をしている途中1度も止まらなかった。
気づけば元貴のいるクローゼット付近まで行き、手を取っていた。
「どう、したの。?」
『元貴の怖さが無くなればいいな、なんて思って…』
「_笑。…ズビッ。フッ、ズ」
静かに笑いながら崩れ落ちていく元貴は不甲斐ない俺の手をしっかりと握りしめていた。
『ありがとう。これでもう何処にも行かないから。安心して。』
俺の胴を柔く抱きしめながら子供のように泣く彼はゆっくりと暗い空気を吐き出していった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
今日の教え
縋りたい人は掴んで離してはいけない
__________そして逃げない
物理的にも心理的にも頼りたい人から逃げずに頼りましょう。きっとその人は貴方が頼ってくれることが嬉しいのですから。
もし、頼れる人がいなくなったら。いなかったら。信じれるものはなんですか?
今日の歌
夜空を駆ける