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雲の上で話し合いをしているのはナオト(『第二形態』になった副作用で身長が百三十センチになってしまった主人公)と擬人化したメスドラゴンとミノリ(吸血鬼)である。
「えっと、お前はこれからどうしたいんだ?」
「あなたと交尾したい」
「それは知ってる。けど、そんなことしたら、お前はここから離れないといけないぞ?」
「どうして? あなたはここで一生、私と暮らすんでしょう?」
「あんたねー、ナオトはあたしたちと旅をしてるんだから、そんなことできるわけないでしょ?」
「じゃあ、あなたたちを殺す。そうすれば、あなたは私のもの」
「やめろ。そんなことしたら、俺はお前のこと一生恨むぞ?」
「そ、それは嫌だ。私はあなたとずっと愛し合いたい」
よくそんな恥ずかしいセリフを素面《しらふ》で言えるな。
「だったら、ここから離れないといけないぞ。交尾の件は一旦保留になるけど俺たちと一緒についてくるって言うのなら、その機会はいずれ……」
「それはいつになるの? 私は今すぐ、あなたと交尾したい」
「ううん、まいったな……。なあ、ミノリ。ドラゴンっていうのは、みんなこんななのか?」
「まあ、他の種族より多くの子孫を残そうとする傾向があるのは知ってるけど、ここまで積極的なのかどうかは分からないわ」
つまり、こいつは特殊な方だということか。
「そうか。うーん、困ったな」
「少しだけでいいから、あなたと愛し合いたい。そうしてくれたら、あなたたちの旅に同行する」
「少しって、具体的に何をするんだ?」
「あなたが私以外のメスに興奮しなくなるまで開発する」
「うん、それは少しじゃないな」
「そうね。全然少しじゃないわね」
メスドラゴンはキョトンとする。
「でも、私のお母さんはお父さんが他のメスに奪われないように毎日、〇〇とか〇〇してたよ?」
「お前がそうなったのは両親のせいか。さて、どうしたものかな」
「とりあえず、一旦アパートに戻りましょう。話の続きはそこでもできるでしょう?」
「私は……ここから離れたくない」
「誰か他に家族がいて、そいつが帰ってくるのを待ってるのか? それとも、他にここから離れられない理由でもあるのか?」
「そ、それは……」
「無理に話そうとしなくていいぞ。けど、もし後者なら、ここから離れられるようにしてあげたいから、ちょっとは話してもらうけどな」
あなたは本当に優しいんだね。
本当に人間なの?
違う。あなたの体はもうほとんど人間じゃない。
けど、心はたしかに人間。
だけど、他の人間のものとは違う。
「他種族の血……」
「え?」
「他種族の血を飲めば、私はここから離れられる。でも、私ドラゴンだから、みんな怖がって逃げていった」
「ドラゴンの姿のままだったら、逃げるか戦うかのどちらかを選ばざるを得ないだろうな。けど、今は違う。幸か不幸か、お前は人の姿で俺と話している。そして、ちゃんと意思疎通ができている。そのおかげで俺はお前のこと、ちっとも怖くなんかない。むしろ、可愛いと思ってる」
「可愛い?」
「ああ、そうだ。まあ、説明するのは難しいけど、少なくとも俺はお前のこと、嫌いじゃないぞ」
「そっか。じゃあ、ちょうだい。あなたの血で私を満たして」
「そんなに吸われたら、俺は死んじまうよ。えっと、じゃあ、三秒だ。その間なら、俺の血を飲んでもいいぞ?」
「ありがとう。じゃあ、早速……」
「待って。ナオトの血が欲しいなら、あたしを倒してからにしなさい」
「ミノリ。別にそんなことしなくても……」
「ナオトは黙ってて!」
「あっ、はい」
「それで? どうするの? 戦うの? 戦わないの?」
「もちろん戦う。あなたが屈服するまで」
「さて、それはどうでしょうね?」
女同士の戦いが今、始まる。