館内放送が響き渡る。
船内で、その声はやけに軽かった。
「あーあ、つまんないねぇ。」
スピーカーから流れる声は、陽気で、呆れたような響きを持っていた。
「詩音も、ま~だチマチマと戦ってんの?」
その瞬間、船内の監視カメラの映像がすべて切り替わった。
廊下、食堂、客室――どこを映しても、戦闘の痕跡が生々しく残っている。
死体が転がり、壁には血飛沫が舞う。
中央モニターには、微笑む一人の男が映っていた。
「皆さ~ん、こんにちは。はじめまして。ボクはトア。」
彼は黒い軍服を着こなし、肩をすくめながら笑っている。
目の奥にあるのは、純粋な悪意。
「この船の主導権、も~らい♪」
銃声が鳴り響いた。
船内の武装した乗客たちが次々と倒れる。
トアの”駒”たちが、命じられるままに暴れ始めたのだ。
彼は指を鳴らす。
「さぁて、残りは誰かなぁ? ボクの新しい駒になりたい人~?」
愉悦に満ちた声が、船を支配する――。