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1 - 第1話 ヤマトを好きになったわけ

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2022年08月11日

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美しい人になりたい。

そう思ったのはいつだっただろうか。

お隣の幼馴染がとても可愛かったからかもしれない。

いつも双子のように過ごしていた。

同じ幼稚園の帽子を被り、同じ制服を着ていると、まるで双子みたいだった。

でも、かわいいね、と言われるのはありすだけだった。


はじめは通りすがりのおばあちゃん。

ありすのぱっちり二重のおめめがかわいいねってほめた。

そのあと、わたしの方を見て、男の子?と聞いた。

ありすが、「なにいってるのー?女の子だよ!」というと、あわてて、「元気がいいね」とごまかした。


小学生になって、同じ学校に入ると、クラスで一番足の速い男の子が、ありすを好きになった。


わたしの方が先に好きになったのに。


「ぐあい、悪いのか?」

ありすが風邪をひいて休んだ日。わたしはひとりで学校に行って、ありすのためのプリントをあずかってた。

ありすの隣の家に住んでいるわたしが、ありすに届けてあげなくちゃ!

そう思ってたから、ちょっと具合が悪くても、我慢してた。


でも、ヤマトは私に気づいてくれた。

「そんなことないよ。だいじょうぶ」

へらへら笑ったけど、力が出なくて、頭が痛かった。

給食をなんとか食べて、帰りの会をして、プリントを預かって、あとは帰るだけなのに、席を立てない。


マスクでほとんど顔は見えないけど、眉毛が下がって、ヤマトがちょっと困った顔をしてるのがわかった。


「ひとりで帰れるから、だいじょうぶ」


いま、世の中では病気がはやっている。だから、具合が悪い子はお家で休んでないといけないし、病気をうつさないように、あんまり近寄ってもいけない。

ヤマトもそう思ってるはずだから、具合が悪くなってしまったわたしはそう言った。

実際は、ちょっと難しかった。


そうしたら、机の上に置いてあったランドセルを、ヤマトがうばって、前に抱えた。

「ランドセル持ってやるよ。家どこ?送る」

小学一年生の小さな体に、ランドセルを前と後ろに抱えて、ヤマトはにかっと笑った。

わたしはありがとうと言って、その言葉に甘えた。


その日は手をつないで帰った。

ふたりで、ありすの家に行くと、お母さんが先に出た。

「わざわざありがとうね、るいちゃん。ありすももう元気になったのよ」

優しくて美人なお母さんがそう言って、アリスを呼ぶと、ピンク色にレースがついたパジャマを着たありすがやってきた。

「るいちゃん!来てくれてありがとう!ヤマトくんも!」

「元気でよかった。これ、今日のプリント。明日は一緒に学校行こうね」

「治ってよかったな!明日、学校で待ってる!」

わたしがプリントを渡して、ヤマトがにかっとわらった。

ありすは髪がぼさぼさで、パジャマ姿でも可愛かった。


ぶり返したらいけないから、とありすのお母さんが言って、すぐにお別れした。

わたしも、すぐに家に帰る。

ヤマトに、今日はありがとう、というと、気にすんな、とまた、にかっと笑った。

ヤマトは太陽みたいに明るくて、かっこよかった。


家に帰るとお母さんはまだ帰ってなくて、ひとりで熱を測った。

37.5℃

どうしよう、と思った。

病気だったらどうしよう、お母さんに迷惑をかけちゃう。


お母さんは仕事が忙しい。

我慢しなきゃ。早く治さなきゃ。

お水を飲んで、ベッドに入った。



そのまま夜まで眠ってしまった。

お母さんが帰った時にはすっかり具合が良くなっていた。

ちょっと熱っぽい気もした。

でも、それをお母さんに言う気にならなくて、晩ごはんを食べながら、宿題をやってなかったことを怒られた。


宿題をして、また眠って、次の日の朝、元気にありすと学校に行った。

「おはよ!二人とも元気そうでよかったな!」

ヤマトが笑って、わたしはヤマトを好きになった。

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