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せんせーが生徒たちに親近感あるような話し方なのそのまますぎてくっそ好き
『〜♪』
5月の大型連休が近づいたある日。その日最後の予鈴の音が鳴り響き、今まで静かだった校内は一瞬で帰宅を急ぐ生徒や気だるげに部活へ向かう生徒たちの声に包まれる。
「ねえ今からカラオケいかない??」
「部活まじだりぃー」
「明日〜駅に集合ね!」
「ちょ、お前らまだHR終わってないねんけど、、」
普段の放課後よりも浮き足立つ生徒たち。無理もない、今日は華の金曜日。それも大型連休前の。
それぞれの予定があるとはいえやはり浮き足立つのだろう。自分の高校時代も実際そうだった。
…自分は華やかな高校生活とは縁遠く、部活と勉強とランニングに全てを捧げていたような……
今思えば、大学時代の遊び回っていた自分は高校時代の自分からは到底想像できないものだった。それは今にも当てはまることだが。
「せんせ〜まだ〜??」
話を聞かない生徒たちから現実逃避して、自分の高校時代に思いを馳せていたら、響いてきた声によって意識を戻された。どうやら金曜日に浮かれているのは自分も同じらしい。
「わかった、先生休みに彼女とでもイチャイチャする妄想でもしてたんでしょー!!」
「うるさい、うるさい、誰や今教師をからかったんは???」
「否定しないんだー!」
「妄想もしてないし、彼女もおらんがな!言わせんなや…えぇい、さっさと終わらせるで!」
特に大事な話がある訳でもない形式上のHRだったため、ささっと終わらせ解散の合図を出せば、直前まで俺に向いていた生徒たちの興味はあっという間に薄れ、それぞれの放課後へ向けて準備を始め、帰路につき始めた。
せっかくの週末、自分も早く帰りたいのは山々だったが、生憎仕事はまだ沢山残っている。普段なら、HRが終わればすぐ職員室に戻って仕事をするが、なんとなく今日は生徒が帰るまで教室に残ることにした。
「せんせー、さよならー」
「おー、気ぃつけてかえれよーー」
「彼女とのイチャイチャたのしんでねー」
「おらんって言うとるやろ、お前それ以上言うたら宿題倍やで」
「それはいや!!!」
「ならさっさと部活いけー」
「へーい」
教師用に置かれた机で事務作業を終わらせつつ、教室から出ていく生徒たちと会話を交わす。
高校三年生になりたてという、難しい年頃の生徒たちの中には教師を嫌いな人だって居てもおかしくないはずなのに、自分の教え子たちは素直な、そして自分を慕ってくれているように見える子たちが多い。
嫌われるのも教師の仕事なんて昔は言われたが、やはり表面上だけでも好いてくれることは嬉しい事だった。