部屋に戻った優真は、ベッドに倒れ込み、何度もスマホを開いては閉じた。蓮からメッセージは来ていない。当然だ。連絡先すら知らないのだから。それでも、今日一緒に帰ったこと、公園で少しだけ話せたこと、そして何より、音楽の話ができたことが、夢のようだった。
翌日、優真は昨日よりもさらに緊張しながら教室へ向かった。蓮はすでに席に座り、参考書を広げている。優真が「おはよう」と声をかけると、蓮は顔を上げ、小さく「おはよう」と返してくれた。その声は、昨日よりも少しだけ柔らかい気がした。
授業中、優真は蓮の横顔を見るたびに、胸が締め付けられた。昨日の夕焼けの中で見た、少し憂いを帯びた横顔が焼き付いて離れない。ノートの隅には、無意識に蓮の似顔絵がいくつも描かれていた。
昼休み、優真は購買で買ったサンドイッチを手に、教室を出ようとした。その時、背後から声をかけられた。「あのさ」
振り返ると、そこに立っていたのは蓮だった。優真は驚きのあまり、手に持っていたサンドイッチを落としそうになった。「は、はい?」
蓮は少し躊躇いながら言った。「昨日、話してた音楽のこと……もしよかったら、今度、何かおすすめの曲とか、教えてくれないかな」
優真の心臓が、爆発しそうになった。「ほ、本当ですか?もちろん!僕の好きなバンドなんですけど……」
そこから、二人の間に少しずつ会話が生まれるようになった。優真が好きなロックバンドのこと、蓮が最近ハマっているというクラシック音楽のこと。最初はぎこちなかった会話も、音楽という共通の話題を通して、少しずつ滑らかになっていった。
放課後、優真は勇気を出して蓮を誘った。「もしよかったら、この後、少しだけ時間ありませんか?僕のウォークマンに入ってるんですけど、聴いてほしい曲があって……」
蓮は少し考えて、「うん、いいよ」と答えた。
二人は近くの公園のベンチに座り、優真はイヤホンを蓮の耳にそっと差し込んだ。流れてきたのは、少し切ないメロディーのロックバラード。優真は、蓮がどんな表情で聴いているのか、ドキドキしながら横顔を見つめた。
曲が終わると、蓮は静かにイヤホンを外した。「うん、すごくいいね。歌詞も、なんだか心に響く」
優真は、自分の選んだ曲が蓮の心に届いたことが、何よりも嬉しかった。「本当ですか?よかった……」
その日から、二人の距離は目に見えて縮まっていった。一緒に音楽を聴いたり、好きな本の話をしたり、時にはくだらないことで笑い合ったり。優真にとって、蓮と過ごす時間は、何よりも大切で、かけがえのないものになっていった。
しかし、優真の心には、まだ拭いきれない不安があった。蓮は、ただの友達として自分に接しているだけなのではないか?もしかしたら、自分の気持ちは一方通行なのではないか?
ある日の帰り道、夕焼けがいつもより 赤く燃えている 空の下で、優真は意を決して口を開いた。「あの……蓮のこと、もっと知りたいなって思ってるんだ」
蓮は少し驚いたように優真を見つめた。その瞳は、夕焼けの色を映して、 赤く 輝いていた。
「僕もだよ」蓮はそう言って、優真の目をまっすぐに見つめ返した。「優真のこと、もっと知りたい」
その言葉を聞いた瞬間、優真の心臓は大きく跳ね上がり、全身に 喜びの波が押し寄せた。 赤く染まった夕焼け空の下、二人の距離は、また一歩、近づいたのだった。
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生成AI 学研の準備はできているんだろうな