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夜飴で〜す
兎赤の音大パロで、赤葦ピアノ、木兎さんは…うん、なんだろうな((指揮ですすいません
赤葦のお父さんが酷いです(捏造苦手な方は自衛お願いします)
音楽とかなにも知らないよ雰囲気で読んでね((殴ごめんなさい
眠いとコメントで話してるとき赤葦化する件について(?)
本編どーぞ!!
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赤葦side.
抑揚がなく読経でもしているような校長の話を聞き終え、漸く朝の自主練習が始まる。まだこの学校の空気に慣れていない大多数の1年生はカフェテリアや休憩室でする必要もない雑談に耽っていることが多い中、俺は人の話し声のする場所を避けるようにそそくさと自習ができる個室の方へ向かう。
「ピアノ室でいいですか」
「お願いします」
受付で使用の手続きを済ませ、なにかしら楽器を持っている人の多い廊下をなにももたずに歩いていく。校長の話は長かったとはいえ起きてまだ1時間とたっていない目は廊下の照明すら眩しく感じられ、やたら見た目のチャラチャラした人がいないのが救いだった。目的の部屋の前までくると、まだ前の人が使っていたようで、いくつかの弦楽器とピアノの音がした。あまりにも統率の取れている音の重なりに、きっと指揮科の人もいるのだろうと想像しながらそっと窓を覗く。
「…すごい」
特徴的なセットの銀髪に、自信と希望に満ち溢れた金色の瞳。何より、その表情から、全身の動きから、「指揮棒を振るのが楽しくて仕方ない」と痛いほど伝わってきた。
「あ、もう時間!?ごめんね!!」
「…あ、えっと、いやその、はい…」
「おい木兎、一年困らせんな〜」
食い入るように見つめているうち、いつの間にか演奏は終わって俺は部屋の中に引き摺り込まれていた。大声で叫ぶように謝る指揮者の人に、ピアノの前に座る少し淡い緑のような金髪の人が突っ込む。思わぬところで他のピアノ奏者に接敵し知らず知らずのうちに手を強く握っていたようで、その人は慌てて駆け寄ってきて俺の手を開かせた。
「ちょ、お前もピアノ科だろ!?手は大事にしろって…あっぶねえな」
「“も”ってことは…えっと」
なんて呼んでいいか分からず言葉に詰まると、ああ、とその人が小さく微笑む。繊細な髪色も相まって、綺麗な人だな、と思った。なんとなく、接敵、だなんて思った数秒前の自分を殴りつけたい気持ちになった。
「俺はピアノ科二年、木葉秋紀。で、こっちの指揮者が指揮科二年の木兎光太郎。あとは…」
つ、と俺の前に立った木葉さんが振り返ると、大きなコントラバスを持った(この中では)小柄な人がニコッと笑う。
「俺は弦楽器科の小見春樹!で、こっちのチェロは猿杙大和!」
「どっちも二年だよ〜」
「よろしくお願いします、木葉さん、木兎さん、小見さん、猿杙さん」
木葉さんはどうしてか俺の言葉にまた小さく笑って、「じゃ、君は?」と聞いた。
「…ピアノ科一年、赤葦京治です」
「ピアノ科!?!?」
「うわっ」
俺が自己紹介をした途端、木兎さんが大きな声を出す。そしてツカツカと歩み寄ってきたかと思えば、俺の両肩を掴んで揺さぶった。
「俺指揮するからさ、なんか弾いて!!」
「…は?」
掴まれた肩が痛い。目の前には先輩、しかも指揮科で目をキラキラさせている。しかも、さっきの指揮を見た後では、断ることなんてできなかった。
『なんでこんなこともできねえんだ!!京治は俺の指揮に従ってればいいんだよ!!俺の操り人形のピアニストの分際で知ったふうな口を聞くな!!』
脳裏に、父の罵声が響く。父の指揮はどこか無機質で、俺のピアノには合わなかった。けれどその表現の一切を殺して、俺は父の人形としてピアノを弾き続けた。でも、自由に弾けない時間が長くなればなるほど、俺のピアノは繊細さを増したと言われた。そんな生活を続け、そんなピアノを弾き続け、もうどうでもいいと思っていたのに、諦め悪くこんなところまで来て己のピアノを弾こうとしている俺はなんて卑怯なんだろうか。
「…では、一曲だけお願いします」
「やった!よーしお前らやるぞーー!!!」
渋々、と言った雰囲気を出しながらそう答えると、より一層キラキラを増した木兎さんが弦楽器の人たちを振り返る。俺はー?と声を上げた木葉さんには一回見てて!と叫んで、俺をピアノの前に座らせる。何度も、何度も見てきたこの風景。白鍵と黒鍵だけの白黒の世界で、音だけが自由に漂っている。一度だけなら、好きに弾いてしまおう。どうせ嫌われるのだから、好きにやったところでなにも被害は被らない。
そう、本気で信じていた。
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木兎side.
赤葦の指が鍵盤に触れる。
「──っ!?」
曲が始まった瞬間、隣で木葉が息を呑むのが分かった。ピアノは木葉のを聴くばかりの俺でも分かる、圧倒的なオーラが赤葦を包んでいた。その指先から、繊細で、綺麗で、それでいて芯があって、絶対に自分に触れないで欲しいという、明確な拒絶の意思が表れている音が響く。救いようのない、苦悶と絶望を孕んだ演奏が、苦しいはずなのに弾き続ける赤葦の姿が、とても綺麗だと思った。指揮が置いていかれそうなほど寸分の狂いも許さない赤葦のピアノは、俺にはどこか「助けて」と叫んでいるように聞こえた。心をずたずたにされて、ぼろぼろの体でまだ光を求めて足掻いている。徐々に弦楽器2人が引き離されていく。俺と赤葦だけになる。そんな状態で1人にさせてたまるかと半ば自棄になりながら喰らいついていく。もう少しで手が届く。もう少しでその手が掴める。もう少しで、お前の音楽を孤独じゃないと証明できる。
「…あかあし、…」
いつの間にか曲は進み、隣で微かな嗚咽を漏らす木葉につられて俺も泣きそうになった。でも腕は指揮棒を振り続ける。一度掴んだその手を離さないように、赤葦の音を手繰り寄せて他の2人の音と一緒に奏でていく。少しずつ、赤葦の音が温かく、柔らかくなる。曲が終わる。繊細な弦楽器の音と一緒に、最後の和音がフェードアウトしていく。
「…すげえ」
木葉がぽつんと呟いた瞬間、赤葦が我に返ったように俺を見た。俺も赤葦を見ていた。いつも走り過ぎ、とか、もっと演奏者のこと考えて指揮しろ、とか言われている俺が、初めて完璧に息があったと感じた瞬間だった。
✥✥✥✥✥✥✥✥✥✥✥✥✥✥✥
終わりで〜す
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それじゃ〜おつかれ〜