ただただ、当たり前で、普通の生活を送っている中学生 ―― 山ノ端 琳菜ヤマノハ リンナ 。
私は、そんな生活に嫌気が差していた。最近特に….
その理由が… 漫画のせいだった。
漫画には、異世界とか夢の国とか、現実じゃ有り得ない世界が沢山出てくる。
「地球」以外の世界が。。。
だけど、私達は異世界なんかに行くことが出来ない。いや、無いのだから当たり前だ。
そんなの行けるわけ無いし、妄想の話だとは分かってる。
でも、人生で一度ぐらい 味わえたって良いじゃないか!!
そんな事を思うようになっていたのだ。
私は、昔から妄想を繰り広げるのが大好きだった。
現実で無いことを考えると、自分もそこに入ったかのような気分になれたからだ。
でも、今はそんな事すら出来ない。
受験やらテストやら、やる事が多くて妄想する暇も無いからだ。
だから、余計に現実で味わいたくなっていた。
「はぁ….(昔の夢は、『誰も知らない世界に行くこと』 だったよね…)」
『誰も知らない世界』に行って、みんなを招待して…..
そんな楽しいことばっかり考えてたな… 考えられるだけでも幸せだった….
「はぁあ…」
もう一度深くため息をついた、その時だった…..!!
「う…っ!!(頭が、クラクラする…..~~ なんで….__?)」
もう、ダメ…..
世界が歪んで見える….. あぁ、苦しい….
誰か助けて…… !!
「た、す……っ」
―――――――――
「ワンゥゥ、ワオーン!(え、え、え!?何この声!?)」
気づけば、私は森のような所にいた。
何故か目線がすごく低く、声もおかしいし、歩きにくくなっていた。
「(どうしちゃったんだろ、私… 夢じゃないよね….??)」
そう思っていると、動物の巣穴のような所から “キツネ” が出てきた。
「!(わ、キツネだ!カワイイ〜〜〜ッッ!!!!)」
そのキツネは、どんどん私の方に向かってくる。
「!?(え、倒そうとしてる??だとしたらヤバイ…..!!)」
だけど、そんな心配はいらなかった。
キツネは、その場で止まり、とても優しい眼差しでこちらを見つめていたからだ。
「(え、カワイすぎん!?やっば〜〜!!)」
「ほら、餌持ってきたわよ!お父さんは狩りに行ってるからね!もう少し待っててね!」
「え、、!?(き、キツネ… キツネが喋ってる!?!?)」
ななな、なんで!?なんでキツネが喋ってるの…?
私、おかしくなった!?え……?
私は、パニックで何も出来なくなってしまった。
――すると、キツネがまた喋りだした…..
「あら、どうしたの?餌、いらない?まずい…?」
「え、まずくない….(何かとっさに言っちゃった… キツネじゃないのに….)」
「なら良かったわ!巣穴でゆっくり食べてていいわよ!」
「え、う、うん….?(巣穴…?なんで私が巣穴で食べなきゃいけないの??)」
キツネじゃ無いのになぁ…..
「…..!」
もしや…. 私……
いや、そんな訳…. ね?キツネになってる訳無いけど!!
でも…. 感覚的に…. キツネ、かも….
「(ま、夢だしいっか!)」
どうせこんなの「夢だ!」と気付いてる夢だろう。
だから、すぐ現実に戻るんだ。
「…(なら、思いっきり楽しんじゃう?)」
そうだ、私は異世界に行きたい!って思ってたんだった。
なら、この夢の間だけでも楽しめば良い!!
――じゃあ、キツネになりきってみるか!!
そう思って、森にちょっと出かけることにした。
森で――
「ワウ….(相変わらずの声だな… でも、さっき餌食べたしねぇ…)」
私は、餌が欲しいんじゃなくて水が欲しいんだけど….
「ワウ!(そういや、今って朝なのかな??)」
木と木の間から、眩しい木漏れ日が差していた。
輝いて見える太陽は、綺麗なオレンジ色… たぶん、朝早い時間帯なんだろうな。
――キツネの親は、そんな早い時間から狩りに出かけてるのかな?
――動物って凄いなぁ….!
ゆっくりと歩いていると、頭の上に温かい感触がした。
「?(何だろ…?)」
頭の上には、緑色の葉っぱが一枚乗っていた。
日光に当たっていた葉っぱだからかな。何故か温かかった。
「(葉っぱって温かいのかな??面白いなあ!!)」
自然の散策は、このキツネだからこそ出来る事。
今を楽しんどかなくちゃ!!
――ってか、私ってコギツネなのかな…?
親らしきキツネから餌を分けられたってことは… やっぱそうだよね!
「(私、コギツネになれてるんだ!夢とはいえ嬉しいなぁ!!)」
「(早く水を見つけて、飲もう!)」
――数分後
「ワオ〜ン!(やったやった!泉発見!!)」
私の目の前には、巨大な泉が広がっていた。
水はとても綺麗で、透き通っていた。
水面には沢山の木々が反射している。水が流れているから、地下から湧き出てるんだ…!
まぁ、“泉”だからね!!
その水が流れる音、景色・自然に包みこまれる感じ… その全てが心地よくて、喉が乾いていることをしばらく忘れていた。
我に返ると、泉周辺がザワザワしてきた。
そこには、カモや鹿などの多くの動物達だった。
みんな私の方には目もくれず、水を求めて走ってきている。
――私、ちゃんとキツネとして生きられてるんだ!良かった〜〜!
こんな風な状況なら、安心して水を飲める!
そう思い、泉の方に近づいてみた。
――口をそっとつけると、冷たい水が一気に口に入ってきた。
これが 天然水 だ。水ってこんなに美味しかったんだ!!
いつも当たり前に使いすぎて、『美味しさ』には気付かなかった。
新たな発見が、キツネ として出来たことが嬉しかった。
更に、他の動物達も大いに話しかけてくれた。
特に鹿などだ。
私が水を飲んでいると、鹿が隣にやってきたんだ。その鹿は、私が水から口を離すと話しかけてきた。
「やぁ、コギツネちゃん!」
「こんにちは!鹿くん!」
「君も水を飲みに来たの?初めて見るね!コギツネなのに大丈夫?巣はどこにあるの?」
「! 心配ありがとう!あっちに巣があるんだ!(優しい鹿くん…!)」
すると、その鹿くんが何かをくわえた。
それは…. ブルーベリー・ドングリなどの小物だった。
「もし食べ物が無くなったらドングリ、そしてブルーベリーを食べたら良いよ!」
「このブルーベリー、とっても美味しいよ!だからいっぱい食べてね!全部あげる!」
鹿くんは、私の足元に木の実等を全部置いた。
私にくれる ということらしい。
「え!良いの?こんなに沢山!」
「うん!僕は食料があり余ってるからね!色んな子たちに分けてあげるんだ!」
「! 優しいね…!!」
「そうかな?嬉しいな!君と会えて良かったよ!じゃあ、また明日会えたら良いね!」
「….! そうだね!またね..!」
「バイバイ!」
「ばいばーい!…..(もう会えないかも…)」
これは夢だから、すぐ覚めちゃうだろう。だから、鹿くんとはもう会えないかも知れない….
寂しいな…. こんなに楽しい生活から、また現実に戻るなんて…..
「….(ずっと覚めなきゃ良いのに…)」
――はてさて、私の願いは叶うのだろうか….?――
コメント
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良いな〜私も狐になってみたい!(戻れなくなるの嫌だけど。)
題の絵は、自分で何となくのイメージを描いただけです笑笑😁