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この1週間は1週間検査入院で、今日が退院の日だ。
同時に春休みが終わって明日から高二になる。
その次は高三になっている。でも、僕が高三になれる可能性は、
少ししかない。ふと時計を見ると、お母さんと妹が迎えに来ると
言っていた時間まで、あと十分しかない。僕は急いでさっきまで
勉強していたノートや文房具などを片付けて、二人を 待っていると
丁度扉がノックされ、開けると二人がいた。
妹「お兄ちゃん、迎えに来たよ」そう言ったのは妹の瑠夏だ。
母「亮平、体調はどう?」瑠夏に続いて部屋に入ってきた
お母さんが心配そうに言った。
僕「体調はいいよ。荷物はもうまとめてあるからいつでも出られるよ」
そう言い、服が入ってる紙袋と勉強する時の紙袋を持って僕たちは
部屋を出た。家族3人でたわいもない話をしてた。そのときだった。
エレベーターに向かう途中の通路で、ひとりの少女が前方から現れた。
艶やかな髪を揺らしながら、彼女は姿勢よく歩いている。
色白な肌に透き通るような瞳が印象的で、僕は思わず目を奪われた。
彼女の潤んだ瞳は、どこか遠くに見据えているようでもあった。
すれちがう瞬間、彼女と目が合った。一瞬の出来事だったのだが、
ゆっくりと時間が進んでるような感覚になった。瞬きをすると、再び
時が動き出したかのように彼女は歩き去っていった。
彼女はスケッチブックを小脇に抱えて歩いていく。僕は振り返り
目で追う。すると談話室の窓際の席に彼女は腰を下ろした。
そしてスケッチブックを広げ、なにやら絵をかき始めた描きはじめた。
妹「お兄ちゃん?エレベーター来るよ!」通路の先で瑠夏が
手招きをする。僕「ああ、今行くよ」そう言って僕は
瑠夏のもとへ向かう。曲がり角でもう一度振り返ると、彼女は眠たそうに
小さく欠伸をしていた。彼女はどうして入院しているのだろう。
なんの絵を描いているのだろう。帰りの車の中で、僕は名前も知らない
あの少女のことを考えていた。どうしてかは自分でもわからない。
衝撃的だった出会いでもない。その日から僕は絵を考えたりするたびに
彼女のことを思い出すようになった。