マヤ。本名、叶多真夜。こいつは、俺の親友だった──
事の発端は今から2週間前の事だった。
この日は、丁度、サークルの飲み会だった。こういう雰囲気の場は少し苦手で、いつもひっそりと端の方でいることが多い。たまに女の子が横に座ったりしてくれるが、俺が、ほとんど無口なので、すぐにほかのところへ行ってしまう。今日も今日とて、マヤの周りには女の子がたくさんいる。どうせ、いつも通りお持ち帰りするんだろうと思っていたが、様子が変だ。不思議に思っていると、ゆっくりとマヤが近づいてきた。そして、俺の左隣に座った。
「みーさちゃん、今のうち抜けよう!」
「は?…っおい!マヤ引っ張んな!!服、伸びるから!」
あっという間に外に連れ出されてしまった。そして、何故か路地裏へと入っていく。現在の時刻は23時。こんなところに誰もいるわけはなく、正直、大人の俺でも少し怖い。だが、マヤはまだまだ奥へと進もうとする。
「……どこに連れて行く気だ?」
5、60mぐらい歩いただろうか。やっとマヤが腕を離した。随分、というか、かなり奥にきてしまっている。もうどこなのかさっぱり分からないぐらいだ。
「んーもうここら辺でいっか。」
マヤはそう言って、1枚の紙を懐から取り出した。
「殺し屋 契約書?なんだこれ…マヤ、もしかして酔っ払ってるのか?笑」
「やっぱり。そう言うと思った。」
再びマヤは懐から何かを取り出そうとしている。マヤはスマホのライトを消し、取り出したものを俺に手渡した。ずっしりと重くて、冷たい。当たりは真っ暗で何を渡されたのかわからなかった。
「……絶対に叫ぶなよ。」
そう言って、マヤは俺の手元を照らした。見た瞬間、叫びかけたが、マヤが俺の口を咄嗟に塞いだ。俺が握っていたものは正真正銘、本物の銃だった。
「信じてもえないかもしれないんだけどさ、俺、殺し屋なんだ。」
「は?……いやいや嘘だろ。」
「だからこの契約書もガチ。本物だよ。」
俺はこの場から逃げようと思った。けれど、それと同時に親友を捨てようとも思わなかった。
そして、俺は、震えながら銃をマヤに渡した。
「あ、あのさ、殺し屋ってなんでやってるんだ?」
「殺されたから。そいつに復讐するためにやってる。」
「ど、とういうこと?誰が?」
マヤは、俺にマヤの母親の写真を見せてきた。普段、涙なんて見せないマヤの顔には涙が浮かんでいる。
「俺の母さんだよ……!」
マヤはその場に座り込んでしまった。多分、その後の言葉は一生忘れないと思う。
「あー…そうだ。あとな、お前の両親誰に殺られたか知ってるか?俺の母さんを殺ったやつと同じやつなんだぜ?」
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