――白川結那がまだ10歳だった頃。
白川結那は、少女としての面影を残していた。細く、儚げな姿。すでに異能者としての強さが見えていたが、心は未熟だった。
その頃、吉田の部下を始めた。しかし、最初の頃は教練と呼べるものもなく、周囲に使われているだけの存在に過ぎなかった。
――その日も、結那は罰を受けていた。
抵抗をしたわけではない。ただ、命令に従わなかった。それが理由で、暴力を受けることが日常になっていた。
「お前、また命令無視したな。」
その声は、無慈悲で冷たい。結那の背後から、身長の大きな男が近づいてくる。彼の手にあるのは太い棒――金属製の棒だ。
結那は、一歩後ずさりながらも、目を伏せてその暴力を受け入れようとした。
「……わかってる。」
棒が結那の顔面に激しくぶつかる。
それでも、結那は泣かなかった。
痛みに顔を歪めながらも、目には何も映らない、ただ無感情にじっとしていた。
「もっと強くなれないと、お前は生きていけないんだよ。」
男は冷徹な目で言い放った。
その言葉が結那の胸に深く刺さった。
――その時、あの男が現れた。
「もう、やめろ。」
冷たい声が響いた。
その声は、結那にとっては忘れられない、そして恐れてもいたものだった。
吉田だった。
普段は冷徹で無愛想、だがどこか孤独を漂わせるその男が、まるで何も考えずに暴力を止めた。
「……吉田。」
結那はその声に驚き、顔を上げる。
目の前には、吉田が立っていた。
「結那を傷つけるな。」
その言葉は、ただの命令のようで、同時に警告でもあった。
吉田は、男に近づくと、冷徹な目で彼を見据えた。
「お前らは、結那を強くするつもりか?」
男は驚いたように吉田を見つめたが、吉田の冷たい目に逆らうことができなかった。
「強くするためには、痛みが必要だろう。」
その男の言葉を、吉田は一瞥し、低く吐き捨てた。
「強くするために、弱者を痛めつける。お前、それで満足か?」
吉田の目に一切の迷いはなかった。
そのまま、吉田は男を殴った。
強烈な一撃が男の顔に直撃し、男はその場に倒れた。
「お前がするべきことは、教え込むことじゃなく、支えることだ。」
吉田は、結那に向き直った。
「結那、お前はもうそんなことで苦しむ必要はない。俺が強くしてやる。」
結那は、その言葉に少しだけ目を見開き、そしてそっと小さく頷いた。
――それが、吉田との絆の始まりだった。
結那が初めて「信じる」ということを覚えた瞬間だった。
その日から、吉田は結那に「力」を教え始めた。
そして、結那は自らの異能を覚醒させ、次第に強くなった。
――だが、傷は深かった。
吉田が言った通り、結那は強くなった。
だが、その強さが何のためにあるのか、彼女にはわからなかった。
その心の奥底で、ふとした瞬間に孤独が顔を出すことがあった。
でも、もう一度だけ。
彼女は吉田を信じることにした。
その言葉に、彼女の中で何かが変わったから。
――そして、その信じる力が結那を支えることになる。
コメント
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今回も神ってましたぁぁぁぁ!!!!! あーね??なるほど?そういうすーぐ暴力振るっちゃう系の奴はもうヤバいですね(? 、、、あ、そういう意味ではないですけどね?((( よっしーは怖いけどまじで仲間思いのいい人なんだよなぁ、、すこだわ( 次回もめっっっっさ楽しみいぃ!!!!!