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ky = 赤 rt = 黄
「黄ー」
「ちょっと待ってよ」
「お前体力なさすぎだろ」
ひとつ上の段からバカにするような友人の
笑い声がする。
「ここの階段が多すぎるせい」
「まぁ、たしかに多いな」
「ねぇ、もう帰ろうよ」
「怖いの?」
「違う、馬鹿らしいと思って」
「だいたい噂なんて嘘に決まっとるやん…」
「そんなのわかんないだろ?ほんとにいるかもしれないし」
「神社でお参りしている狐の化け物が!」
「……狐ねぇ」
今の時刻は深夜の2時。俺の学校 いや、俺の街ではこんな噂があった。
街の灯りが消えたその時 月の灯りのみが
辺りを照らすその時 右の手のひらを下にし
て手を合わせ、 お参りをする狐の姿 をした化け物 が 現れる。
「もし、見つかったら、どうなるんだっけ」
荒い呼吸の中 タイミングを見つけては声を出す。それと同時に酸素も吐かれる。これが辛くて辛くてたまらない。
「あの世に連れていかれるって本には書いてあるけどな」
「ふーん…」
「ちょっとは興味が湧いてきたか?」
「全く」
そろそろ喋る余裕が尽きそうな時階段が終わった。
「はぁ、はぁ…狐、どこや…」
「とりあえず休もーぜ」
「ほら、あそこに座るところが」
ちりんっ……
「え、鈴?」
どうしていきなり…俺は持ってないし友達のでもないはず。だってここに来るまで
ちりんっ…
鈴なんて一度も鳴らなかったから
「風も吹いてないし」
「ねぇ、今の鈴の音ってどこから」
後ろを振り向いた途端 視界 に座り込んで体をふるわす友達が映った。口をはくはくとさせ声を荒らげて叫んだ。
「ば……」
「化け物!!」
「は?ぇ、ちょっと…!」
そういい友達は転げ落ちるように階段を降りていった。呼び止めたかったが今は深夜。
ここで大声を上げたら地域の人が学校へ告げ口すると思いぐっとこらえた。
ぱんっ…ぱんっ…
手を叩く音。
再度俺は後ろを振り向いた。
「…!」
そこにはたしかにいた。狐が。
しかし動物のあの狐のような姿ではなかった。正しくは赤い浴衣を身にまとい、狐のお面をつけたニンゲンのようだった。
ちりんっと鈴を鳴らしこちらを向く狐。
静寂の中 鈴の音だけが辺りを明るくみせていた 。
「……」
しばらく此方を凝視したあと、 再度鈴を鳴らし何処か遠くへ歩いて行ってしまった。
「…あ」
ぼーっとしていると黒一色の景色の中に1つ
異なる色が賽銭箱の前に落ちていた。
「赤色の鶴…?」
「折り紙や」
さっきの狐が落としたものなのか、元々あったものなのか。
「……」
丑三つ時。俺は
「ねぇ」
あの神社にまた来ていた。
昨日と同じ姿の狐が此方に視線を移す。
俺は立ち上がり歩み寄った。
「これ」
狐に赤色の鶴を見せると、驚いた様子が伺えた。
「ここに落ちてたから、届けにきた」
「返すよ」
狐の両手に鶴を置いてあげた。狐はそれを
大事に懐(ふところ)にしまった。
用事が済み帰ろうとした時、後ろから優しく小指を掴まれ小さく声を上げる。
「怖くないの」
それに重ねて狐もぽつりと呟いた。
「みんな逃げるのに、どうして君は逃げない」
「怖くない」
不思議だよねと笑う。
「ていうか浴衣かわいいね、赤色好きなん?」
「…すき」
「へぇ、…なんか変な感じやな」
「都市伝説とまでなってるものと話せるなんて」
「俺も、まともに会話したのは君だけだよ」
「みんな逃げるからね」
「逃げずに声かけてみたらええのに」
「そうしたら俺が逃げるかな」
遠回しに俺には話しかけたと伝えてくる”彼”
が可愛かった。