青い空
白い雲
どこにでも、よくあるもの
どんな些細なものでも 君と一緒に見たかった。
あの幸せな日常を…もう一度
♪───
病室の中に音楽が響き渡る
『いや〜このやっぱりこの曲が一番いいよね!』
ベッドの上の女の子が俺に向かって言った。
『すずめはこの曲ばっか聞いてるよな』
『うん!この曲、すっごくいいんだから!』
「彼岸花」という曲をべた褒めしているこの女の子は鈴芽 羽莉(すずめ うり)
そしてうりの幼馴染の俺、
花守水樹(はなもり みずき)は前からずっと入院している羽莉の為に
お見舞いに来ていた。
『ほんっと音楽に興味ないよねー!』
『別にいいだろ』
すずめと交わす何気ない会話
これがずっと続けばいいな
『あ、そうだりんご持ってきたんだけど食う?』
『え!食べたーい!』
『ん』
『ありがとー!』
シャクシャクとすずめが美味しそうにりんごを食べているとき、俺は空を見ていた
『また空見てるのー?』
『空って何もないのに』
『何もないのがいいんだよ』
『へ〜』
…わかってないなすずめは
何もないのが一番いいことだ
俺がどうしてこんな日常を望んでいるのかには理由がある
4年前
暑い夏の日のことだった
『あ、みずくんいたー!』
『帰ろー!』
『おう』
当時中学生だった俺達のクラスは違って、帰りはいつもすずめが俺のクラスに迎えに来てくれていた
家が近くて帰る道が一緒だから、いつも一緒に帰っていた
『いやー暑い!』
『確かに、最近は特に暑いよな』
いつものように帰宅していたら、事件は起きた
『ね〜おんぶして─』
バタッ
振り向いたときにはもう遅かった
さっきまで一緒に歩いていたすずめが、急に倒れたのだ
『おいすずめ!?』
『大丈夫か!? 』
パニックになった俺は、すぐに救急車を呼んだ
『がんですね。』
病院で医者が言った
『治るんですよね!?』
すずめが死ぬかもしれないと思って怖かった俺は食い気味で医者に聞いた
『落ち着いて聞いてください』
『鈴芽さんの余命は5年です』
『えっ』
『そんなに少ないんですか!?』
『はい』
『どうにかできないんですか…?』
『もっと早かったら手術が出来ていたんですが…』
『もう遅いです。』
『なんで…』
衝撃的な事実に俺は泣き崩れてしまった
『花守さん、まだ5年ありますから』
『伝えたいことや一緒にしたい事、やっといた方がいいですよ』
『…わかってます』
『みずくーん?』
『どうした』
『いやぼーっとしてたから』
『大丈夫?』
『…ああ』
余命があと1年しかないことは、まだすずめには言ってない
言わないといけないのは分かってる
でも言おうとしたら、喉が潰れそうなほど痛くなる
言ってしまったら、すずめがいなくなる気がした
言わなかったら、すずめがずっといてくれる気がした
だめだな…俺って
『ちょっとトイレ』
『お、おう』
10分後
『帰ってこないな』
行ってみるか
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