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(あれ、ここはどこ?)
かつて天才とも言われていたアイドル「アイ」
目が覚めると知らない天井があり、不思議に思った。
アイは一人で情報を整理してみた。
引っ越した家に突然来たファンにナイフで刺されたこと。
そして、自分が産んだ娘「ルビー」息子「アクアマリン」に初めて「愛してる」と言えたこと。
でも、そこからの記憶がなかった。
(ってことは私、死んじゃったってこと?)
(うん。きっとそうだよね。だって、お腹を刺されちゃったんだもん。)
そこまで考えていたら急に、知らない人が視界に入ってきた。
「あら、起きたのね。香姐(カーネ)。」
(かーね?私、そんな人知らないんだけどな…)
アイは不思議に思った。
でも、その人は私の目をはっきりと見て、カーネと言ったんだから、他に私しかいないはずだ。
(私、「星野アイ」っていうのになぁ…。)
そう思っていると急にその人がアイを掴み、持ち上げた。
(えっ、何⁉)
アイは驚いた。
けれど、その理由はすぐに分かった。
「見て、香姐が目を覚ましたわ。可愛いわね。」
アイの目には、たくさんの人が映っている。
(こんなに沢山の人が…っていうか、誰も見覚えのない人たちだな…)
アイを持ち上げていた女の人は、大勢の人の前にアイを置いた。
ある一人の男の人が
「おお、可愛いなぁ、この子の目には星があるみたいだ。」
と言った。
(みんなが私を愛してくれている…人を愛するって、こういうことなんだ。)
アイは嬉しくなってしまった。
でも、ふと見ると、自分の手がやけに小さい。
(え、なにこれ…。)
(これって、あの噂の「転生」ってやつ?)
アイはようやく正解にたどり着けた。
(転生って、なんかよくわかんないや。)
(でも今は、みんなからたくさん愛されてる。だから、転生って最高だな〜。)
〜16年後〜
アイが学校終わりに道を歩いていた頃。
(あれ、これってもしかして…)
カーネが見ていたのは、『苺プロ』のアイドルメンバー募集のオーディションのポスターだった。
(なんでだろう…壱護さんもミヤコさんも、アイドルは信頼できる人しか選ばないのに…。)
(でも、せっかくのチャンスだし、オーディション、受けてみようかな。)
「へ〜。オーディションね…」
アイは早速、お母さんに相談をしてみた。
「お母さん、お願い。どうしてもアイドルやりたいの。」
「あら、この苺プロって、あの有名な『B小町』があったところじゃない。」
(え、あった、ってどういうこと?)
アイは不思議に思い、何も知らないような顔をして、お母さんに訪ねてみた。
「ねえ、お母さん。そのB小町が「あった」って、どういうこと?なくなっちゃったの?」
「そうよ。B小町のスターのアイっていう人がいなくなっちゃったから、解散せざるを得なかったのよ。」
(へー。私ってスターって思われてたんだ。ふっふっふ。そのスターが私ってことを知ったら、お母さんどんな顔するかな。)
(でも言わないでおこう。絶対に「嘘ね」って言って笑うだろうし。)
「ねえ、それでさ。オーディション、受けていいの?」
カーネが聞くと、お母さんはふっと表情を柔らかくしてこう言った。
「いいわよ。でも、受からなくても泣くんじゃないわよ。」
「いいもん。絶対に受かるし。」
(私がアイだと知ったらびっくりして目をまんまるくしちゃうでしょうね!)
オーディションは終わり、今日は、結果が発表される日だ。
「もうそろそろ、合否発表の連絡が来るときじゃない?」
お母さんはソワソワしながら、カーネのスマホが鳴るのを待っていた。
「大丈夫だよ〜。お母さん。だって私、絶対に受かるし。」
お母さんとは反対にアイは余裕そうだった。
前世でスターになったから、今回もいけると思っているのだろう。
「そう言ってもねぇ…」
ピロリロリン♬
電話が鳴った。
「私、出てくる。」
カーネはさっきまで余裕そうな素振りを見せていたが、本当はとても不安だった、緊張していた。
中身はアイそのものだが、見た目が全然違うから。
でも、カーネの目には、アイと同じ『星』があった。
「_はい。」
カーネはドキドキしながら電話に出た。
『____』
「お母さんっ、合格したよ!!‼」
カーネは電話を切ってすぐお母さんに報告をした。
カーネの目には涙が浮かんでいる。
「まあっ、合格っ‼嬉しいわ、私のことでもないのに。でもとっても嬉しい‼お赤飯炊かなくちゃ。」
お母さんはルンルンでキッチンへ向かっていった。
(_良かった。ちゃんと合格できて。)
アイは内心ホッとしていた。
久々に苺プロへ戻ることができるのだ。
〜3日後〜
(苺プロ…久々だ、緊張するな。)
苺プロのドアの前で少し立ち止まっていたが、意を決して、思いっきりドアを開けた。
「こんにちは〜!」
ニコニコ笑顔で出たつもりだった。
でも、それは一瞬だけだった。
カーネは思わず、口を開けてしまった。
だってそこには、アクアとルビーが座っていたのだから。