《銀世界》に朝がやってきました。
「んーむにゃむにゃ。やっぱコニャックには
安めの キャンディーだよなー。」
サンタヒーローはとてもねぼすけです。
昨日深酒をあおって完全に寝過ごしてます。
「サンタヒーローサンタヒーロー早く起きて。 シキ様来ちゃう。」
トナカイ娘の双子の妹カイナはサンタヒーローをゆさゆさしながらサンタヒーローを起こそうとしました。
「だめにんげんの鑑、こんな大人にだけは
なりたくない。」
トナカイ娘の姉のアカハナは心底見下した顔でサンタヒーローを見ました。
「うへへへへじゃんじゃん酒もってこーい。」
突然、サンタヒーローにバケツ一杯分の水を
ぶっかけるものがおりました。
《銀世界》の女神、シキ様です。
とても冷ややかな顔をしたナイスバディな
女神のシキ様はこの酔っぱらいを叩き起こしに わざわざサンタヒーローの自宅まで出迎えに来たのでした。
「し、シキ様ぁ!!????」
寝ぼけていたサンタヒーローはシキ様の顔を
見るや否や速攻で正座しました。
「……ずいぶんといいご身分ね?」
シキ様、激おこです。身体からとてつもない
冷気が漏れ出ています。
トナカイ娘の双子達もシキ様を見て
ガタガタガタガタ震えておりました。
「いや、これには深い深いわけがぁ…..。」
媚びへつらいながはサンタヒーローは
シキ様に言いました。
「真っ赤な嘘真っ赤な嘘、サンタヒーローは昨日夜遅くまでお酒を呑みあかし一人でどんちゃん騒ぎをして今日二度寝をした挙げ句
寝坊をした。」
アカハナはかしこいのでしっかりとサンタヒーローの嘘を上司のシキ様に報告しました。
「そう、いいこねアカハナ。」
シキ様はトナカイ娘達を気に入ってるのでアカハナとカイナをよしよししました。
「ちべたい。」
「からだが凍りそう。」
カタカタ震えながらトナカイ娘達は口々にそう言いました。
「で?サンタヒーロー?」
「申し訳ありませんでしたぁぁぁぁ!!!!!!!」
サンタヒーローはものすごい速さで土下座しました。
「おそろしく早い土下座。」
「私じゃなきゃ見逃しちゃうね。」
トナカイ娘の双子達は口々にそう言いました。
シキ様サンタヒーローの胸ぐらを掴みながらは言いました。
「土下座とかマジでやめなさい私がパワハラしてるみたいでしょうがァ….!!!ねぇサンタヒーロー?私の春と夏と秋いつ返してくれるわけぇ?あなたが私から春と夏と秋盗んでどっかのわけのわからん島に転売したせいでこっちはものッッすごく困ってるんだけどどう責任とってくれるわけぇ…….!!??」
シキ様、ガチ切れです。サンタヒーローの
身体がパキパキと凍り始めます。
「はっははは働いて返しますッッ!!!!シキ様の夢!!!!全ての子供達が幸せになる世界を目指して死にものぐるいで働かせていただきますぅぅ!!!!!」
サンタヒーロー、とても情けない声で
叫びました。
シキ様、とても冷たいため息を吐きました。
「次寝坊したらマジで凍らすからな……。」
シキ様、そうやってなんだかんだサンタヒーローを許してくれます。
シキ様はわりとチョロい女神です。
「よしっ!!!行くぞアカハナ!!!カイナ!!!」
そうやってサンタヒーローは叫びました。
「こんな大人にだけはなりたくない。」
「カイナもそう思う。」
トナカイ娘の双子達はゴミを見るような目で
サンタヒーローを見ながらソリで子供の待つ場所に向かいました。
【大体三十分後】
「着いた。ここが子供の待つ家。」
カイナはそう言ってキキーッと急ブレーキをし、ソリを止めました。
サンタヒーロー達は煙突から家に入りました。
家にはボロボロの服を着た女の子がいました。
「シャボン玉のように消えてしまえるプレゼントをください。いなくなってしまいたいの。」
消え入るような声で女の子は言いました。
サンタヒーローはアカハナを見ました。
「真っ赤な嘘真っ赤な嘘、この子はクラスメイトからひどい苛めを受けている。その子達と先生を全員殺したいと考えている。」
赤い鼻をピコンピコンと光らせながらアカハナは言いました。
「よく分からない。人は殴れば黙る。殴ればいいのに。」
ナチュラルボーン強者のカイナは首を傾げて言いました。
「お前らなぁ…..。そんな単純な問題じゃねぇんだよ。色々あんの色々。」
頭をボリボリかきながらサンタヒーローは言いました。
《銀世界》ではトナカイ娘達に
人権は与えられないので彼女達は義務教育を受けておりませんでした。
義務教育に殺されかけている女の子と義務教育から見放されてしまったアカハナとカイナ。
《銀世界》ではこんな感じの不幸がそこらじゅうに転がっています 。
前任の女神様がものすごく適当だったからです。
サンタヒーローはうーーんと悩みました。
そしてサンタヒーローはがさごそと白い大きな袋を漁って綺麗な血の色をした掃除機を取り出しました。
「これなんてどうだ。ゴミと認識したものを
なんでも吸い込んでポイってできる掃除機、
ものすごい掃除機だ。これで吸い込んだ奴は人間じゃなくてゴミとして世界に認識されるから使っても法律では裁かれないぜ。ただし人間に使うのは一回までにしとけよ?こいつを何度も使うと、お前はお前を苛めた連中と同じみにくいばけものになってしまう。」
掃除機をぎゅっとにぎりしめ少女はポロポロ涙を流し言いました。
「ありがとう。ありがとう。」
「…..人に使わなきゃ普通にいい掃除機だ。
後は自分で使い方を決めな。」
サンタヒーローはそう言って去って行きました。
次の配達先に向かうまでサンタヒーロー達は
雑談をしておりました。
「サンタヒーローサンタヒーロー。」
「なんだアカハナ?」
「学校ってどんなとこ?」
アカハナはかしこいので学校という場所に興味を持ちました。サンタヒーローは答えました。
「実は俺も行ったことない。」
「なんだ、私たちとおんなじじゃん。」
「つまんない。 」
トナカイ娘のアカハナとカイナは口々にそう言いました。
「だが学校の先生を名乗る女にはあったことがある。」
「どんな人だった?」
アカハナが興味津々と言った風に聞きました。
「おっぱいが大きかった。」
アカハナはため息をつきました。
「こんな奴に聞いた私がバカだった。」
「アカハナ、こいつ振り下ろしていい?」
そうしてサンタヒーロー達は次の配達先へと向かっていきました。
サンタヒーローは先生と呼ばれる女性と恋をし、先生を病気から救うために春と夏と秋をシキ様から盗みました。
まぁ救えませんでしたがね。
サンタヒーローは伸びをしました。
(プレゼントを配っていったらよ、きっと子供達は今よりは多少は幸せになれるよな?
そしたら天国のアンタは俺を褒めてくれんのかな?)
サンタヒーローはそんなことを考えながら
ソリに揺られておりました。
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