隊晴
晴明視点
今は弐年参組の授業中。
この国語は、今日の1番最後の授業だ。
だからか、眠たそうにしている人が多い。
『~が、~~で、、、って、もうそろそろ時間だね。』
僕はチャイムが鳴る前に授業にキリをつけた。
授業終わりの挨拶を済ませると、みんなが椅子にどっと座り、グタッとしている。
僕は教室を出て、職員室へ向かった。
職員室へ向かう途中、学園長室を通りかかった。
「~~!!!」
「~~~~♪」
何だか少し騒がしいような、、、?
「~~~!!!!!!!」
少しじゃないかもしれない。
大分騒がしい。
生徒の保護者や来客相手にこうはならないだろう、、、。
そう思い、僕はそっと学園長室の扉を開いた。
ガチャッ
学「全く、、、。あなたは何度言えば分かるんですか?!」
隊「そんな怒るなんて酷いよ~!5千円貰っただけじゃない!」
学「貰うと言うより盗むの方が正しいですけどね?」
隊「ぴえぇぇぇ~!
あ!晴明君!!!助けてよぉぉぉ!!」
隊長さんが僕の方へ走ってくる。
そして、泣きついたかと思えばくるっと僕の後ろへ回り込み、僕を盾にしている。
まあ、何となく部屋に入る前からこんなことだろうとは思っていたが、、、。
学「すみませんね晴明君。何か用事ですか?」
『いえ、言い争いをする声が聞こえたので様子を見に来ただけです!』
僕は本当に用事が無かったから良かったけれど、もし用事があって学園長室に入ったとしても、こんな状況では素直なことは言えないだろう。
学「そうですか。ではその後ろに居る烏をこちらへ。」
翁面を被っていても溢れ出る禍々しい雰囲気。どうやら、裏の学園長の性格を既に知っている僕には、公衆で振る舞う爽やかで誠実さのある学園長としての仮面を外したようだ。まあ、今そうなっているのは大方隊長さんのせいだろう。
『どうぞ。』
僕はすんなり隊長さんの前を退き、隊長さんの背中を押した。
隊「うわぁぁ?!ひ、酷いよ晴明君!!!」
『そう泣きつかれましても、、、。
5千円盗んだのは貴方なんですから、自業自得ですよ。』
隊「晴明君が冷たいぃぃぃ!!!」
子供のようにギャンギャン泣く隊長さんを学園長は引っ張り、どう調理してやろうかとでも言うような目で見ている。
僕はそっと学園長室を出て、職員室へ向かった。
凜「晴明君?まだ仕事終わらへんの?」
『うん、、、。今日残業かもぉ、、、。』
凜「えぇ~。一緒に帰ろぉや~。」
『多分大分遅くなっちゃうよ、、、。今日は凜太郎君先帰ってて~!』
僕がそう言うと、凜太郎君は少し頬を膨らませ、荷物を持ち上げ始めた。
凜「明日は一緒に帰ろうや?」
『うん!』
僕は笑顔で頷いた。
それに満足したのか、凜太郎君は職員室を出て行った。
結局、僕の仕事が終わったのはもう太陽が沈みかけている頃。
疲れたぁぁ、、、。などと思いながら、教員寮までの道のりを歩く。
その時、、、
バサッ
という音がすぐ近くで聞こえた。
まるで翼を大きく広げるかのような音だ。
僕は驚いて後ろを振り返った。
けれど、辺りは漆黒とも言える黒さで囲われていたため、漆黒しか見えずに、何も理解出来ずに居た。やがて、その漆黒に体を包み込まれた。
(ああ、そういえばもう夜か、、、。
太陽が完全に沈んだんだ。
だからこんなにも、暗いんだ、、、。)
そんなことをぼんやりと考えながら、僕を抱える手や腕に、僕は身を任せた。
『流石に急すぎですよ?!本当にびっくりしたんですかね?!?!?!』
「えぇ〜?ただちょっと道の外れた公園のベンチまで運ぶために持ち上げただけなのにぃ~!」
さっきの漆黒の正体は、隊長さんの翼だった。僕は、変に抵抗して高い所から落とされるのが嫌だったから敢えて抵抗はしなかった。
『それで、どうして急に公園になんか連れてきたんですか?』
「あれ〜?
まさか昼のこと忘れた訳じゃないよね~?」
こちらを覗き込み、反応を楽しみに待つかのようににこにことしている。
『あれは自業自得としか言えませんよ。』
「ちぇ〜。協力してくれても良かったのにぃ。」
予想していた反応だったのか否か、口を尖らせ拗ねた様を真似するように言う。
『そんなことしたら今度は僕の給料が減ります。』
隊長さんは、確かにと言いながら笑っていた。
少しだけ沈黙の時間が続いた。
僕は、本当は気付いていた。
隊長さんが僕を助けてくれたことを。
百鬼学園から教員寮へ行くまでの道のりで、ずっと後ろから何らかしらの気配を僕は感じていた。
怖くてその時は振り返られずに居た。
きっと、1人で居る僕を誘拐か何かするつもりだったのか、はたまた人間の僕を殺すつもりでもあったのだろうか、、、。
そんな時に、隊長さんが僕の身を翼で覆い隠してくれ、僕を離れた場所まで移動させてくれた。
例えお金をせがむ様な人であっても、僕はたくさん隊長さんに救われてきた。
『隊長さん、ありがとうございます!』
「、、、。なんのことぉ?」
隊長さんは白々しく笑ってとぼける。
『やっぱり貴方は、良い人ですね。』
お金絡みになると色々厄介にはなるが、僕は今隊長さんに対して思っている事を純粋に、真っ直ぐに伝えた。
それなのに何故だろう?
あまり嬉しそうではない。
むしろ、少し目の色が暗くなった気がする。
「ははっ。君は盗賊団の隊長にそんなこと言えちゃうんだね~。」
隊長さんはすぐに顔色を変え、いつもの調子に戻った。
ああ、まただ。
濁されている。
隊長さんには、不思議ということばがぴったりとも思えるくらいに、裏がありそうで仕方がない。ありそうというより、絶対ある。
いつもヘラヘラとしている人ほど、闇を抱えている可能性が高いというのも、あながち間違いではないとも思える。
そう。感じている。分かってはいる。
けれど、隊長さんからはこれ以上踏み込むなという一線を張られている様な気がしてならない。
けれど僕は、そこで止まれるほど律儀でもないし、お利口でもない。
『良い人ですよ。本当に。』
「あはは。嬉しいよ。」
隊長さんは自分で言ってて、気付いているのだろうか?
その言葉の声に、全く感情がこもっていないことを。
それでも僕は押し続けようと、次の言葉を発そうとした時、隊長さんが急に立ち上がった。
「さて、もう暗いし帰ろうか!
僕が送ってってあげるよ〜!
今回だけ特別無料!!」
この人は何度濁せば気が済むんだ、、、。
まあでも、何回も踏み入ろうとしている僕が言えることでもない。
グイッ!!
「!」
僕は隊長さんの腕を思いっきり引っ張った。
その拍子で、隊長さんとの距離は一気に縮まった。けれど僕は気にせずに言う。
僕が今までどれだけ隊長さんに助けられたか。僕だけじゃない。一時期狸塚君や秋雨君、飯綱君達の毛を狩ろうとはしていたけれど、隊長さんが居なかったら、佐野君は命を落としていたかもしれない。学園長だって人間だったら今生きれていない。それに学園長が居なかったら僕はみんなに会うことすらも、、、。
そう考えると、隊長さんが救った命があり、そこから派生しまた救われた命がある。
僕は喋り続けた。
息を吸う間を最小限に、ずっとずっと喋り続けた。
隊長さんはずっと俯いていたけれど、僕はそんなことは気にしなかった。
そして、僕が喋り続けている途中、
それを遮るように隊長さんが叫んだ。
『うるさい、、、。
うるさいうるさいうるさい、、、!!』
ダンッ!!
僕はいつの間にか、
隊長さんに公園の地面に押し倒されていて、
首元にするりと冷たい指が触れた感覚がした。
と思えば、隊長さんの手は僕の首を絞め、力いっぱいに握られていた。
「君が僕の何を知ってるの?!!
何も知らないくせに!!!
何も知らないくせに知った様な顔で喋んないでよ、、、!!!!!!!」
公園中に響き渡る声。
その声は、か細いようで力強くて。
隊長さんの表情は分からなかった。
夜ということに加え、隊長さんに覆いかぶされている体制だから、光源がなく、見えるとしたら僕の目の端に映る星の光くらいだ。
ググッ!!
『ゲホッ、、、ケホッ、、、!』
隊長さんの手に入る力が更に強まり、そろそろ僕の呼吸するための気道が完全に閉ざされようとしていた。
僕は最後の力を振り絞り、声を出した。
『僕は貴方を、、、。
烏丸蘭丸さんを救いたい、、、。』
一瞬首に加わる力が弱まる様に思えたが、僕はそこで意識を失ってしまった。
「、、、きくん、、!」
ん、、、?何か声がするような、、、。
「、、あきくん!」
何だろ、、、?誰の声だろう、、、。
「晴明君!!!」
『!!!』
「ああ、やっと起きたわ、、、。」
『あれ、、、?ここって、、、?』
「僕の部屋の前やよ。晴明君がノックしたんに、何で寝てはんの、、、。」
どうやら僕は、教員寮の凜太郎君の部屋の前で寝ていたらしい。
「大丈夫?そない仕事引っ張っとったん?」
『大丈夫だよ!ごめんね!部屋間違えたみたい!仕事長引かせすぎちゃった、、、!』
心配する凜太郎君を落ち着かせるために、元気いっぱいで返事をして、凜太郎君に合わせて適当に理由をつけて言った。
それでもまだ心配してくれる凜太郎君に、優しいななんて思いつつ、本当に大丈夫だと言い、自分の部屋へ向かった。
帰ってきて、着替えを済ませようとシャツを脱いだ。
公園の地面の上に寝転がったはずなのに、砂の1つもついていない。
ついているとしたら、首元に赤い跡。
見ると少しゾッとする程痛々しく、呪いの跡に見えても不思議ではない。
きっと僕が意識を失ってから、隊長さんは僕の服や髪についた砂を払い、赤い跡が見えぬようシャツを整えネクタイを締め、僕を運び凜太郎君の部屋にノックをしたのだろう。
ほら、やっぱり。
隊長さんは良い人だ。
隊長さんは今頃絶対、自分がした事を悔やんでいるのだろう。僕はむしろ、隊長さんの本心を、心の奥底を見れたようで嬉しいというのに。
翌日。
僕はいつも通りの時間に起きた。
ただ、まだ喉は少々痛かった。
跡が見えぬようにシャツの首元をきっちりとネクタイで締めた。
職員室。
『おはようございます!』
飯「晴明、おはよー。」
凜「おはよーさん。」
『今日は凜太郎君早起きだったんだね!
てっきりノックしても出てこないから、また寝坊かと、、、。』
凜「な?!し、失礼やで晴明君!!
僕かて早起きな日もあるに決まっとるやん!!」
飯「ま、その早起きの日とやらは極めて少ないけどな。」
凜太郎君が一瞬飯綱君の方を向く。
けれど、僕の方に視線を戻した。
(あれ、、?いつもなら喧嘩が始まってもおかしくないのに、、、。)
そんなことを思っていると、凜太郎君にガッと肩を掴まれた。
凜「昨日、ほんまに大丈夫やったん?」
『うん!大丈夫だよ!やっぱり凜太郎君は優しいね、、、!』
凜「、、、だ、大丈夫やったらええんやけど、、、。」
凜太郎君は恥ずかしそうに顔を背けた。
そして次は、飯綱君目掛けて拳を振りかざしていた。
飯「お、おい、、、!さっきの俺の発言無くなったことになったんじゃねぇーのかよ?!」
凜「無くなるわけないやん。飯綱君が一生早起き出来んようにしたるわ。」
飯「ちょ、待て、、!それ死ぬやつ、、、!」
『あばばばばば!り、凜太郎君落ち着いてー!』
少し騒がしい職員室。
昨日の隊長さんの声しか響いていなかった静かな公園とは真反対だ。
授業が始まり、時間が淡々と過ぎていく。
生徒はもうみんな帰った時間だろう。
僕は最後の仕事を終わらせ、凜太郎君と一緒に帰った。
今日は凜太郎君の部屋にお邪魔してご飯を食べた。
ご飯を食べた後はテレビなどを見て過ごした。
『あ、もうこんな時間!僕もう自分の部屋行くね!』
「はーい。ほな、また明日ー。」
凜太郎君の部屋を出て、僕の部屋のドアを開けた。
そしたら、、、
「あ、晴明君!遅かったね〜?」
隊長さんが居た。
え、、、?どうして、、、?えぇ、、、?
昨日のこと、気まずく思ってないのかな?
僕はむしろそっちの方が良いんだけど、、、。えぇ、、、?そもそも何で居るの、、、?
困惑しまくり硬直してしまった。
そもそもどうやって入ったのかも分からない、、、。けれど、今1番聞きたいことは、、、。
『どうして、僕の部屋に、、、?』
隊長さんは少しの間黙り、僕の方へと近寄ってきた。
「それはね、ほら、昨日のこと。」
昨日、、、。昨日は色々あった。
けど何を伝えに、、、?
僕が困惑している最中に、隊長さんは口を開いた。
「昨日は、ごめんね。傷付けちゃって。跡も、、、残っちゃったよね。」
表情はあまり見えないが、いつものおちゃらけさは無かった。
『別に気にしてないですよ。むしろ、隊長さんが本心をぶつけてくれた証に見えて、僕はとても嬉しいです!!』
隊長さんはパッと僕に視線を合わせ、目を見開いていた。
も、もしかして首締められるのが嬉しいっていう風に解釈されちゃった、、、?あ、あれ、、、?それは相当やばいのでは、、、?
僕があたふたしている間に、隊長さんは僕の体を引き寄せ、ボソッと呟いた。
「、、、ありがとう。」
『、、、!
、、、どういたしまして!』
職員室。
飯「な、なぁ晴明、、、。」
『んー?どうしたの飯綱君?』
飯「い、いや、、、どうしたっていうか、、、どこからツッコめばいいのか分からないと言うか、、、。」
凜「な、なんでそないな奴と一緒に居んの、、、?」
隊「そんな奴って酷くない?!
ねぇ晴明君!!晴明君もそう思うでしょ?!」
『はは、、、。まぁ盗み癖あるのは本当だし、、、。』
隊「晴明君まで、、、?!酷いよぉ!」
学「何であんたがここに居るんですか。」
隊「あ、あっちゃん!やっほー!」
学「やっほーじゃないんですよ。そろそろ本気で焼き鳥にしましょうか?」
隊「ひょえ、、、。ぼ、僕食べられるなら晴明君が良い!!!」
『いや、、、僕巻き込まないでくださいよ、、、』
学「とりあえずこの学園から摘み出しますね。」
隊「そんなぁぁぁ!」
『あはは、、、』
隊「今日の夜晴明君の部屋行くからね!!あっちゃんに叱られ終わった僕のこと慰めてよ?!?!」
凜/飯/学「は?」
『もちろんです!任せてください!』
隊「そ、そんな自信満々で言われると、僕がボロボロになるまで叱られる姿を想像されてそうで何か複雑、、、。
でもまぁ、晴明君に慰めて貰えるならいっかぁ!!」
学「、、、あなたに言いたいことが増えました。説教の時間長くなりますからね。」
隊「なんでぇ?!」
凜「は、晴明君、、、。あ、あの盗賊団隊長と夜中会う関係なん、、、?」
飯「ま、まじかよ、、、。晴明洗脳でもされてるのか、、、?1回たかはしに見てもらえよ、、、?」
『なんでぇ?!』
何故かめっちゃ叱られた隊長さんと、
何故かめっちゃ心配された晴明君。
コメント
5件
隊晴好きだから発狂してしまう…… 首絞め、最高すぎます。
ԅ(♡﹃♡ԅ)グヘヘヘ∑( ˙ ꒳ ˙ )はっやばい好き最高な隊晴だ! ウオオオオ\( 'ω')/オオオオオ!!!!!!
良き…_:( _ ́ཫ`):_ 首絞め…隊晴…心配…私の好みどストライクですっ!!!!