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桜峠にゃ近づくな。山神さまに祟られる。
幼い頃から田舎の祖父母の家にいくたびに言われてきた。
祖父母の家は山の中にある小さな集落にあり、山神さまという、土地神を信仰していた。おばあちゃん子だった私は、よく祖父母の家に連れて行くように両親にねだっていた。両親も家に籠もってゲームばかりするよりはいいと考えていたのだろう、夏休みになる度私を連れて行ってくれた。
普段とは違う大自然の雄大さに興奮し、寝付けない私に祖母は決まって話をしてくれた。
『山の中には山神さまがおる。』
『山神さまが住む桜峠にだけは近づくな。』
当時は昔話程度にしか聞いていなかった。しかし、中学校に上がって最初の夏、私は祖母に訪ねた。『なんで山神さまは桜峠に住んでるの?』
『桜峠は死者の国との間にある。昔はそこに生贄を捧げて儂らを死者から守ってもらっていたんじゃ。だからこそ、生贄を捧げていない今、近づいたら・・・・。』
幼いながらも私は普段と違う雰囲気の祖母に怯えていた。しかし、同時に尚更その山神さまを見てみたいという好奇心が沸き立つのを感じていた。