「もう、先輩、なんか今日はやたらと意地悪ですよね!」
「別に。」
またそれ!またその「別に」!!
私は思わず頬を膨らませながら、先輩の横を歩く。
でも――
(なんか、やっぱりいつもと違う……)
先輩はいつもクールで、そっけない感じなのに、今日はなんとなく私のことを気にしてるような気がする。
電車の中で寝ちゃったのがそんなに影響してるのかな……?
「……なあ。」
急に先輩が立ち止まって、私をちらっと見た。
「え、な、なんですか?」
「お前、今週の土曜、暇?」
「えっ?」
思いがけない言葉に、一瞬フリーズする。
「え、えーと……たぶん暇ですけど?」
「なら、昼から出かけるぞ。」
「は???」
「文句ある?」
「いや、ないけど!?え、ええ!?どこ行くんですか!?」
「まだ考えてない。」
(考えてないのに誘ったの!?)
「え、デートですか?」
思わずそう言ってしまった瞬間、先輩がピタッと動きを止めた。
(あ、やば、今のはさすがに調子に乗りすぎた……?)
「……デートがいいなら、それでもいいけど。」
「えっっ!?」
思ってもなかった返答に、心臓が爆発しそうになる。
先輩はちょっと視線を逸らしながら、ポケットに手を突っ込んでいる。
「で、でも、先輩、人混み苦手じゃ……?」
「お前となら、まあ……別に。」
またその「別に」!!!
でも、その「別に」が、さっきまでとちょっと違う気がする。
少しだけ優しくて、少しだけ照れてる感じの――そんな「別に」。
(……なんか、今日ヤバい……心臓がもたない……)
「じゃあ、決まりな。」
先輩はそれだけ言うと、また歩き出した。
私はその後ろ姿を見つめながら、自分の顔がもう真っ赤なのがわかる。
(え、これ……もしかして、距離めっちゃ縮まってる……!?)
心臓のドキドキが止まらないまま、私は先輩の後ろを追いかけた。
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