「‥‥」
私は何をしているのだろう。気がつくと目の前には、野原が広がっていた。
丁度夕焼けで、辺りが黄金色に染まっていた。
ここは何処だろう。いつの日か見たことがある気がする。なんだか懐かしいような、少し寂しいような、そんな気がした。
「ねぇ、何してるの?」
振り返ると、小さな子供がころころと笑いながら話しかけてきていた。
その子は、‥倭だった。
どうして?とうの昔に、消えてしまったのに。でも、私が見間違えるはずがない。
聞こうとした。また、君は誰?って。
しかし、考えた言葉は喉につっかえて出てこなかった。
「‥いいや、何も。」
何かおかしいのは分かっていたけど、なんだかどうでも良くなっていた。また、倭の声が聞けただけで幸せだったから。
「ーーーーーー。」
強い北風が吹いた。倭の声は、風に吹き消されてしまった。
「なんて言ったの?」
そう言ったのと同時に、視界が霧に包まれた。淡く白くなっていく視界の中で倭は、クシャッとした顔で笑っていた。
重い瞼を開くと、見知らぬ天井だった。きっと誰かが運んだのだろう。敵か味方かは分からないが、何も拘束されていないところを見るとおそらく味方だろう。
さっき見たのはなんだったのだろう。夢にしては、細かい所までしっかりと覚えている。
「もう体調は大丈夫なのか?」
私の隣には、身体中が包帯で巻かれた日帝様が座っていた。その声はいつもより優しく、弱々しかった。
「ぅ、はい、もうだいぶ治りました。」
「そうか。」
「あの、戦いはどうなりましたか?」
動揺し、周りを見ずに勝手に行動してしまった挙句、仲間が戦っている最中気を失うなど言語道断であった。
「あのまま、戦況が不利な状況になり、撤退した。」
「そうですか。身勝手な行動をとってしまいすみませんでした。」
「いや、お前のせいではない。」
「それに‥気持ちも分かる。」
「?」
どう言うことだろう。日帝様にも、大切な人が居たのだろうか。
「‥まぁ、話してもいいか。」
日帝様は、気まずそうに目を逸らしながらポツリポツリと話し始めた。
それは、他愛のない家族との話だった。
「俺には両親がいない。でもその代わり兄弟が2人いたんだ。」
「片方とは喧嘩ばかりしていたが、まぁ仲は良かった。」
その後は、きっと昔にあったのだろう思い出話を聞かせてくれた。川に魚を釣りに行っただとか、初めて料理をして焦がしてしまっただとか、そんな普通の話だった。
でも、退屈ではなかった。日帝様は普段、自分の話はしたがらない人だったから嬉しかった。
「日帝様、そのお二人のお名前はなんと言うのですか?」
「‥空と海だ。」
少し詰まったような言い方に違和感を覚えた。嫌な予感がする。
「あの‥今お二人は何処にいるのですか?」
「‥‥」
「2人とも‥‥他界した。」
コメント
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斗環です‼︎なんか見返した時自分の雑談の部分が邪魔だったので今回からコメントに書きます‼︎ ♡ありがとうございます!!!!めっちゃくちゃ嬉しいです!!!! 3話目も見てくれてありがとうございます‼︎