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今回嘔吐注意です(一瞬)
院内に入ると同時に感じる、病院特有の独特な匂い。
そういえば前来たのはいつぶりだったかなと記憶に浸りながら受付を済ませ、待ち合い室で待機する。
と、すぐに名前が呼ばれ、検査室へ入るようにという指示に従い室内に入る。
恐らく、金持ちを贔屓しているのだろう、そう捉えれば俺らだけ早く順番が回ってきたのにも検査をする医師がやたらご機嫌取りをしているように見えるのにも納得する。
…まぁ、今それに口を出したところで何も変わらないのだから、とりあえず。
医師の話を聞くには幼い頃に受診したことがないため初めに注射を複数本打つらしく、既に周りにはそれらしきものが用意されている。
恐らくだが、悠佑の心には影響が及ばないだろうし、これで悠佑の健康も少しは保証されると思うと特に何も考えずに注射を打ってもらうことになった。
医師に言われて服をめくる仕草を見ながら、そういえば服を買いに行ってなかったなとか、腕の傷治ってきたな、とか、本当に普通のことを考えていた。が、
やっぱり悠佑の様子なんて微塵も理解出来ていない、そう、思った。
ーーーーーーーーーーー
目の前の人は、どこかの記憶にあるようなものを手に持っている。
懐かしいような、思い出したくないような、かといってそれがどんなものなのかなんてまったく分からないような、そんなもの。
そしたら、それが近づいてきて腕にちくっと痛むような感覚がして。
あぁ、思い出してしまった、あの記憶。
いつだったか、いつも通り御主人様の相手をしたとき、珍しく相手は二人で、御主人様の手には見たこともないような形のものが握られていた。
どういうものなんだろう、とかは深く考えずにいつも通り御主人様の相手をしていたら、腕を出すように言われ、それに素直に従っただけだった。
先が太いそれはその直後、自身の腕に刺さる。当然悲鳴をあげたけれど、その声で御主人様が制止することもなく。
そのまま毒々しい色の液体が体に入っていくのは当然のように激痛を伴い、自身の中に異物が入っていくというどうしようもない恐怖心に襲われた。
直後。
どくん、と体が揺れるような感覚に襲われる。
「あ゙っ、ぁ゙..ひぅッお゙ッ..?」
あつい、あつい、あつい
ぐらぐらと揺れる視界に、内部から侵食していくように熱に犯されていく体、ぼろぼろと流れる涙、それを嘲笑う御主人様、容赦なく奥へと進む異物。
それら全てによって猛烈な吐き気を催して。
びちゃびちゃと吐瀉物が床に落ち、それでも先の症状がおさまることも無く。むしろ汚いなんて言われながらさらに激しくされ。
「…っ、ひゅッ….ふッぅ゙、」
いつのまにか黒かった床だったのが白い壁紙へと変わって、目の前には人が座っている。記憶は、そのときを鮮明に残したままで。
少し下を向いて、下唇を噛んで、爪が食い込むくらい強く手を握って、そうして涙がこぼれるのを耐える。
記憶を辿るうちにさっきのは終わっていたらしい。横にいる今の御主人様が、前にいる人に説明を受けている。
その間、御主人様は前の人の話を聞きながら手をそっと取って、強く握ってくれた。
その、前までの記憶なら冷たい床につけていた手が、今は大きくても優しい手に包まれていること。
それが、酷く嬉しかった。