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片手にはビール、もう片手には君の手を。テレビでバレーを観戦中。ピーッと笛が吹かれて試合の終了の合図。テレビを切ったと同時にする甘いキス。
これまでと変わらない距離感なのに、どうにも君が遠くて届きそうない。
君を優しく押し倒し、首筋に何度かバードキスをする。ぴくりと反応をする君の耳は真っ赤で愛おしくて堪らなかった。
「…っあ、も、とき、もう、首はいいから、っ、」
早くと急かす君、はいはいと適当に返事をすると俺は君の柔らかい唇にそっと口付ける。
次の日の朝、君は帰り支度をして俺が目を覚ました頃には、上着の袖に腕を通していた。
「…あれ、智。珍しいね。…用事かなんか?」
「あーー…そう。今日友達と遊ぶから早く帰んの。じゃあ、また、な。」
「…うん、またね。…」
また、と言った君はすぐ玄関へ向かって歩いていく。前までなら、昼くらいまで一緒に寝ていたのに。
ーーバタンと、玄関の扉が閉まる音を聞くと何か、この関係が閉ざされたような、断ち切られたように思った。
俺と智の境界線が生まれた。
癖毛気味だった君の髪も、すっかり艶やかな真っ直ぐとしたストレートになって、何もつけていなかった腕には高そうなアクセサリー。それと、甘ったるい香水をつけて。どこへ行くの、聞きたくなかった。もう知ってるから。
それでも俺の気持ちは変わらないまま、また君を求めている。それでも日に日に君の気持ちは変わってゆく。
ねぇ、智。俺はさ、俺は、飯よりも、他の綺麗な女よりもお前の平熱よりも。愛してるから。それも熱烈に。
壁にかけてあるシャツ。この前買ったシャツだった、これも、あの服も他の服も、全部君好み。今では自分のために着てしまっている。
片手にビール、もう片手には、
ねぐせ。様の『片手にビール』を基づいて書いたものです。