nk.side
「しゃけ!ただいまぁ」
「おかえり!なかむ」
「今日もお疲れ様」
ガシャン、ガシャンと、とても聞いていて心地のいいとは言えない耳障りなしゃけの足につけた足枷の音が俺にとっては心地いい。
断られるかと多少びくびくしながらつけてくれないかと頼んだらしゃけは顔色一つ変えずに二つ返事で
なかむがそれで安心出来るならいいよ、と言ってくれた。
そういう所が狂わしいほど好きなんだ。
「ありがと、しゃけ。今日もいい子にお留守番しててくれた?」
「当たり前だろ?」
「なかむが俺のために頑張って働いてくれてるんだから」
「そっか。よかった。」
「いい匂いがするね。今日の夕飯は何?」
「今日はね、なかむの大好物だよ」
「そっかぁ、ありがとう。嬉しい。もう俺幸せすぎて死んじゃうよ〜」
「大袈裟だって笑。ほら、早く食べよ」
しゃけは高校生までは料理なんてひとつもしてなかったしカップラーメンくらいしか作れなかったし
同棲をはじめてすぐは料理の担当も俺だったけど大学を卒業して俺が仕事をするようになってから疲れている俺に少しでも楽をして欲しいと少しずつだけど料理をしてくれるように練習をしてくれた。
勿論一緒に。
初めは卵焼き。
しゃけは不器用だから上手く巻けなくてスクランブルエッグの様になってしまってた。
俺の様に上手くできないと落ち込んでるしゃけは死ぬ程かわいかった。
次はカレー。
野菜を切る手が危なっかしくて今すぐに止めてほしいと思ったが俺を思ってやってくれているのだと思うと愛おしかった。
そう思うと練習の為に毎日の朝ごはん、夕飯がカレーになっても気にもならなかった。
その次はハンバーグ。
玉ねぎ切ってるときに少し涙目になってるのがかわいくてえっちだった。
今すぐ押し倒したい衝動に駆られたけどこれも俺を思ってなんだから我慢しなくては。
と己に言い聞かせた。
元々興味のあること、好きなことを学習する能力は人一倍高いから料理をマスターするのにそう時間はかからなかった。
俺が料理をしてあげなくてもよくなってしまったのは少し寂しいけど一緒に料理ができる楽しみが増えたからまあ良しとしようと思う。
「どう?どう?美味い?味変じゃない?」
「うん。美味しいよ。」
「手とか指、怪我しなかった?」
「うん!だいじょうぶ!」
「そっか。よかった、しゃけ今日一緒にお風呂入ろ?」
「え、嫌だ」
「何でぇ」
「は、恥ずかしから!」
恥ずかしい?
何それ、普段もっと恥ずかしいことしてんのにいつまでたっても一緒にお風呂に入るのだけは恥ずかしいって恥ずかしがってるの何なんだよほんと。
かわいすぎる。
__________________________________________
「ちょっとしゃけ!ちゃんと髪の毛乾かさなきゃダメって言ってるでしょ?」
「じゃー、なかむやって?」
「もうほんとにしょうがないなあ」
「へへへ。なかむに髪乾かしてもらうのきもちぃ、俺、なかむがいないと生きていけなくなりそー」
「それは俺としては本望だよ」
「えー?ほんとかよー」
「ほんとだよ」
ほんとに決まってるだろ。
そうなってもらう為に今こうして家から出さずに監禁まがいなことをしているんだから。
ほんとは俺の作ったご飯だけを食べて俺の作った身体にしたかったけどしゃけのしたいことはなるべく応援してあげたいし手伝ってあげたい。
まぁあくまで”ならべく”だが。
「しゃけ、おーいしゃけ?」
寝ちゃったのかな。
かわいいな。
でもそろそろ俺がいないと眠れない身体になってほしい。
性欲はもちろん俺が調教したからもう前だけではイけないし、
俺以外とはもう会えないから俺とシて性欲を解消するしかない。
三大欲求のうち、睡眠と性欲は俺がいないとダメになるようになって欲しい。
もしかしたらずっと考えていた計画を今実行するときなのかもしれない。
_______________________________________
「もしもし、しゃけ?」
「どうしたの?なかむ」
「今日ちょっと遅くなるかもしれない」
「ん。分かった。何時くらいになりそう?」
「わかんないけど日付が変わる前には帰れると思う」
「りょーかい」
んー。
反応が薄いなと感じてしまう。
俺は欲張りだから少しくらい寂しがってる素振りを見せてくれてもいいんじゃないかなと思ってしまう。
「なかむさん!お疲れ様です。今日の飲み会参加できるってホントですか?」
「はい。今迄あんまり参加してこなかったからたまには参加しようかなって」
「そうなんですか!なかむさんとゆっくりでお話できそうで嬉しいです!」
何だこの女。
余程自分の顔に身体に自信があるのか知らないがやたらと胸の脂肪を押し付けてくるし甘ったるい香水も臭くて鼻が曲がりそうだよ。
__________________________________________
「なかむさん〜私酔っちゃいましたぁ、なかむさんのおうちに泊めてくれませんか?」
「ご奉仕なら、私できますよぉ?」
「悪いけど、君に興味はないから」
気持ち悪い。
気持ち悪い。
ほんとに気持ち悪い。
なんなんだあの女。
なにが泊めてほしいだ、なにがご奉仕だ。
早く帰ろう。
しゃけが待っていてくれている家に。
あの女がしつこいせいで日付が変わる前に帰れそうって言ったのに結局もう2時になってしまった。
__________________________________________
「しゃけ?ただいま」
「なかむ!」
「しゃけ、どうした?」
「ん、んーん。何でもない。お帰り」
「なかむ、早くお風呂入ってきなよ沸かしてあるから」
「ありがと」
少し様子が変だったな。
おそらくあの女の香水の匂いがしたのが気になったんだろう。
でもこれも俺の計画の一部だからあくまで様子が変だったことには気づいていないふりをしよう。
「なかむ!」
「おわっ!どうしたの?」
「んーん。何でもない」
かわいい。
かわいい。
かわいい。
香水が移ったのが消えたのをわざわざ確認しに来るしゃけが本当にかわいい。
「もう寝る?」
「うん。なかむ、俺を離さないでね。ぎゅってしててね」
「今日は甘えん坊だね、」
「甘えたなのはめんどくさい?」
「めんどくさい訳無いでしょ?」
「よかった」
____________________________________
「なかむ今日は早く帰ってこれそう?」
「うん。今日は飲み会もないから多分早く帰ってこれると思うよ」
「よかった」
「じゃあ行ってくるね」
「うん。行ってらっしゃい」
しゃけは俺が家を出るときに今日は何時ごろ帰ってくるのか、とか早く帰ってくるのかなんて聞いてきたことはなかったのに今日は聞いてきたし、仕事に行ってほしくなさそうな顔をしていた。
かわいい。
恐らく俺の計画は順調に進んでいると思う。
「なかむさ~んおはようございます!この前は楽しかったですね!また飲みに行きましょ~よぉ」
「今晩とかどうです?」
「申し訳ないけど今晩はちょっと」
「えぇ~じゃあ連絡先交換しましょ?」
「今手元にスマホないんでまた今度」
うっざいなあほんとに。
俺は絶対に残業はしたくないから短時間で集中して仕事を進めて定時で帰る様にしてるのに
朝からずっとなかむさん、なかむさんってしつこく話しかけてきて口を開けば連絡先を教えてください教えてくださいって
今時スマホが手元にない奴なんて少ないのにそう断ってるってことは連絡先を交換したくないってことに決まってるだろ。
どうしてそんな程度のことを察してくれないんだ。
イライラする。
スムーズに仕事が進まなかったせいで結局今日中に終わらせなくちゃいけない仕事が終わらなくて定時で帰れなさそうだ。
_______________________________________
「しゃけ、ただいま」
流石に寝てるよな。
今日は早く帰れそうだって言ったのに
「なかむぅ?」
「しゃけ起きてたの?」
「うん。なかむ、かえってくるのまってた」
「ありがとぉ、しゃけぁ…」
「ごめんね。今日早く帰ってこれそうって言ったのに」
「いーよなんじになってもおれまってるから」
きっとさっきまでうとうとしながら待っててくれたんだろうなちょっとほっぺに跡がついてるし何より話し方がポヤポヤしてる。
かわいい。
後でカメラ確認しなくちゃ
「なかむ?」
「ん、ごめんぼーっとしてた」
「大丈夫?体調悪い?」
「だいじょぶだよ」
「シャワー浴びたらすぐ寝室行くから先に寝てて?」
「ん」
_______________________________________
「しゃけ、起きてたの?」
「うん」
「寝ててよかったのに」
「一緒に寝たかったから」
「そっか」
「なかむ、あのさ、」
「ん?どしたの?」
「あの、や、やっぱなんでもない」
「えーなんだよぉ」
「た、大したことじゃないから!」
「おやすみ!」
_______________________________________
「じゃあ、しゃけ、行ってくるね」
「うん。行ってらっしゃい。気をつけてな」
「今日こそ早く帰ってこれそうだからシようよ」
「ば、ばか!朝っぱらから何言ってんだよ!」
「ははは。じゃ、行ってきます」
_______________________________________
「なかむさん!おはようございます!」
「おはようございます」
「あのっ!」
「すみません急いでるので」
よし。
今日は順調だしあの女も朝適当にあしらったからか話しかけてこなくなったし今日は定時で帰れそうだ。
「あ、なかむくん!ちょっといいかな?」
「なんですか?」
「この仕事明日までなんだけどちょっと急用が出来ちゃって頼んでもいいかな?」
「え、でも」
「頼む!この仕事頼めるの君しかいないんだ」
「わ、分かりました」
「ほんっとにありがとう!今度何か御馳走するから」
ま、まだ定時まで時間があるし急げば定時には間に合わなくても日付が変わる前に帰れるだろ
なーんて思ってた自分を殺したい。
全然終わらねえ。
これじゃ帰るのは確実に日付が変わってからになりそうだ。
お、おわった。
疲れた。
久しぶりに疲れた。
あの先輩のことを何度頭の中で殺したかわからない。
早く帰ろう。
もう流石に寝ちゃってるだろうけど…
「うわっ!」
「す、すみませんなかむさん!」
「大丈夫です。なんですこれ、香水ですか?」
「は、はい。気分転換にと思って…」
「ほんとすみませんもう誰も残ってないと思ってて」
「かかっちゃいましたよね?」
「大丈夫ですよほんとに」
「もう帰るだけですし」
「それじゃあお先に失礼します。お疲れ様です」
まだ人が残ってたのか。
全然気が付かなかった。
_______________________________________
「しゃけ、ただいまぁ」
って起きてる訳ないよな
「なかむ?」
「しゃけ、起きてたの?!」
「なかむ、なかむ、おれ、おれ…」
「どうしたの?」
「ちゃんと聞くからゆっくり落ち着いて話して?」
「俺変なんだ」
「何が?」
「ここ最近なかむ帰ってくるの遅かっただろ?」
「それでな、ちゃんとわかってんだ。なかむは俺に毎日好きだって言ってくれるし連絡もこまめにしてくれてるからちゃんとなかむに愛されてるってわかってるんだけど帰ってくるたびに甘いなかむのじゃない香水とか煙草の匂いとかがするからいつかこんな仕事もなにもしてない毎日してる料理だって中々上達しない俺なんかいつか捨てられちゃうんじゃないかって思うたびに不安で、それで毎日そんなこと考えるようになってそれからなかむが隣にいないと眠れなくなっちゃったんだ。」
「……」
「ご、ごめんなかむ、こんなん重いよな」
「な、何それっ!かわいすぎるでしょほんとに勘弁してよ」
「じゃあ何?毎日俺が隣にいないと眠れなかったってこと!?そんなんかわいすぎるでしょ!ほんとに司はどんだけ俺のことを好きにさせれば気が済むわけ?それからこんなんひとつも重くなんてないからね?」
「俺、重くないの?」
「重い訳がないでしょ?これで重かったら俺何て思いどころの騒ぎじゃなくなるからね?」
「じゃあ俺のこと捨てない?」
「捨てる訳がないよね?死んでも離さないから」
「じゃあ俺もなかむのこと死んでも離さない!」
「かわいぃ…」
思ったよりも早く俺がいないと眠れないようになってくれたな。
俺の計画では半年くらいかけての予定だったんだけど。
香水やら煙草やらの匂いを付けたまま家に帰ってたのはわざとだ。
匂いを消そうと思えば消せたし避けようと思えば避けられた。
でもそうしなかったのはまぁそういうこと。
眠れなくなったということしか言ってくれなかったけど
俺はしゃけはもうひとりじゃイけなくなっちゃったってことも知ってるよ
コメント
2件
今回も神作品すぎました✨共依存とかの表現が上手くて個人的にめっちゃ好きです♡ほのぼのだったり感動系も大好きだけどこういうドロドロ系も性癖にぶっ刺さりました…次回作も楽しみにしてます!