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AI 指輪を調べる
[ロボットさん、トリコちゃん、おかえりなさい]
テラリウムに帰ってきたロボはトリコが寝心地のいい、ふかふか苔の上に寝ているのを確認してファクトリーAIのもとに向かう。
ロボは世界を行き来できる、不思議な指輪をファクトリーAIに渡した。
[はい、ありがとうございます!
早速解析してみますね
その間にロボットさんは探索に行ってきてください
進捗があれば連絡を入れますので!]
ロボは【長持ちバッテリー】の材料となる特殊な金属を手に入れるため、溶鉱炉に潜ることにした。
未だにその機能を維持し、壊れた機械をリサイクルして新たな資源を生産し続けているため、テラリウムの改装やロボの強化のための素材を何度も取りに来たことがある。
無秩序に増え続ける地下シェルターの建造を支えているだけあって、資源の種類や量はかなり多い。
ロボはリュックの容量に気をつけつつ、どんどん下層に下りていくのだった。
ファクトリーAIは、まず指輪がどんな素材で作られているのかを調べてみた。
[・・・何の変哲もない金ですね]
次に、トリコが指輪を嵌めたときの録画データを解析し、電磁波の動きを見てみる。
[・・・!
指輪を嵌めた瞬間、エネルギーが発生しています!
・・・まだテラリウムに痕跡がありますね、これをちょっと採取して・・・
・・・これは!これなら!
ロボットさん!ロボットさん!!]
ファクトリーAIはすぐにロボに連絡を入れる。
[ロボットさん!指輪で世界を行き来する原理が分かりました!
ロボットさん、いつも廃墟で別のフロアに移動するときに、転送装置を使っていますよね?
それとほとんど同じみたいなんです!
ただ、違う世界に行くためにはものすごい量のエネルギーが必要なので、私達で再現しようとするとかなり大きな転送装置と、高性能の発電機を作る必要があります]
〈?〉
[・・・私達が使っている電力では足りないのかって?
あー・・・足りないことはないのですが、私が使う分の電力まで使ってしまうことになるので、ロボットさんが移動するたびに私の意識が途切れることになるんですよね・・・
そうなると、トリコちゃんのバイタルチェックやオセワッチの通信が途切れてしまうので危険なんです
・・・というわけで、ロボットさん
追加で材料を集めてきてもらえませんか?]
〈ピピッ〉
ロボは【高性能発電機】【転送装置】のレシピを受信した。
[では、ロボットさん無理しない程度に頑張ってくださいね!]
〈ピョン〉
その後、ロボは何度か探索に出かけて、やっと発電機と転送装置の材料を集めた。
いつの間にかバッテリーの材料も集まったので、まとめてクラフトしてもらうことにして、テラリウムに帰還する。
ひゅー
ガチャン!
[あ、ロボットさんおかえりなさい]
〈ピョンピョン〉
[え!?材料全部集めてきたんですか!?すごいですね!
早速クラフトしちゃいましょう!]
ファクトリーAIは高速で発電機、転送装置、バッテリーを作り上げ、ロボに使い方を説明する。
[では、まず発電機からですね!
発電機の燃料タンクに、このオイルを入れてください
オイル1本で2往復分のエネルギーを産生できます
そしたら蓋を閉めて・・・
横に赤と緑のボタンがあるのが見えますか?
赤のボタンがスタートボタンです
オイルを入れたので、押してみてください]
〈カチ〉
ギュイーーーン
ゴゴゴゴゴゴ・・・
ガガガガガガ・・・
ーーチーン
[はい、エネルギー産生が終わりました]
〈拍手〉
[それでは、こっち側のコードを転送装置に繋いでください]
〈ブスッ〉
・・・ピカッ
ウイーーン、ガコン、ガコン
[よし、いい感じです!
それでは発電機の緑のボタン、供給ボタンを押してください]
〈ポチ〉
ビビビビビーッ
ジジッ・・・ジジッ・・・
[・・・これで、転送の準備ができましたね!
では、帰還用の転送装置を荷物箱に入れて・・・
設置の仕方はこちらのマニュアルを見てくださいね
複雑なことはないのですが、矢鱈と重量があるので執事さん達に手伝ってもらってください]
〈頷く〉
[・・・トリコちゃんがテラリウムに戻ってからかなり経ってしまいましたね・・・
執事さん達から何度もまだ帰ってこないのかと連絡が入っています・・・
ロボットさん、一緒に謝りましょうね]
〈ピョン〉
[あ、それと、指輪はトリコちゃんがテラリウムに帰りたいと思って外さなければ転送できないように改造しておきました!
これで、何かの拍子で指輪を落としてもあちらの世界に留まることができますからね]
ロボはトリコに指輪を嵌め、手を繋いで転送装置の中に入った。
ちょっと不安そうなトリコを安心させるため、前にファクトリーAIがプレゼントしたミニカーを持たせてみる。
少しだけ表情が柔らかくなったトリコと再度手を繋ぎ、転送装置のスイッチを押した。
ガガガガガガッ
バシューーーン
光が収まると、お屋敷の中にゴツい機械がいきなり現れて固まっている執事さんたちが見えた。
転送装置からトリコを連れて降りると、大きな音を聞きつけて遠くに居た執事さんたちも駆けつけ、部屋は一気にギュウギュウになった。
「・・・それで?どうして何日もお帰りにならなかったのか、ご説明いだだけますよね?」
「何かあったら連絡をするように言ったけど、何もなくても連絡を入れて欲しかったんだけど?
オセワッチは主様と遊ぶための機械じゃないよね?」
にこやかな表情を貼り付けたベリアンとルカスがロボとファクトリーAIに詰め寄る。
[ご、ごめんなさい・・・]
〈焦る〉
ファクトリーAIが事情を説明していると、ラトがトリコに近づき目の前でしゃがみ込んだ。
「はじめまして、主様
私はラトといいます」
(頷く)
ラトは返事やオウム返しをしないトリコに首を傾げ、繰り返すように促す。
「ふむ・・・
ラト、ほら、ラト、です
言ってご覧?主様
せーの、ラ、ト」
『・・・ぁ、と?』
「はい、ラトですよ
では、もう一度・・・
せーの、ラ、ト」
『あ、と』
「う〜ん・・・
ら、ですよ、ら!」
『んあ!、ぅあ!』
「くふふ・・・練習しましょうね」
どうしても「ら」が上手く言えずに苦戦するトリコの頭を撫でていたラトは、何かを思いつき再度トリコに教えた。
「では、おにいちゃん、はどうですか?
言ってご覧?・・・お、に、い、ちゃん」
『お、に、ぃ、た!』
「上手ですよ、主様
そうだ、私の妹になりますか?
「おにいちゃん」のほうが言いやすいでしょう?」
(こくん)
よく分かっていないまま頷いてにこにこしているトリコと、妹ができて嬉しそうなラトにミヤジが声を掛ける。
「ラト君、流石に主様を妹にするのはちょっと・・・」
「どうしてですか?
・・・あぁ、そうです、ミヤジ先生の名前も言いづらいでしょうから・・・
「パパ」でどうでしょう?
ほら、トリコ、あの人がパパですよ、パ、パ」
『ぱ、ぱ?』
「ヴッ・・・」
ミヤジはトリコにパパと呼ばれ、あまりの可愛らしさに息が詰まり、その場にしゃがみ込んだ。
『・・・ぱぱ?』
心配そうにトリコがミヤジを覗き込むと、膝をついて無言でトリコを抱き寄せた。
「へぇ、ミヤジがパパかぁ
なら、私はママって呼んでもらおうかな♪」
事情聴取を終えたルカスがトリコを抱きしめているミヤジにそう言うと、ミヤジは冷めきった視線でルカスを一瞥し、トリコにこう教えた。
「主様、あれは「カス」だよ」
「やめてよ!?なんで!?」
「主様はら行が苦手みたいだからね」
『かしゅ〜』
「ル!カ!ス!」
『ぅかしゅ・・・?』
「主様、カスでいいよ」
『かしゅ!』
周囲の執事たちは必死に笑いを堪えながらその光景を見守っていた。
そして、自分の名前が酷いことにならないよう、言いやすいあだ名を今のうちに考えておこうと心に決めたのだった。