中学校入学当初、大好きで入ったバレー部。最初は上手くいくことが多くて、楽しかった。だけど、だんだん激しくなっていくレギュラー争い。増えていく自分のミス。そのミスから起こる敗北。負けたくない。誰にも。と思うようになり楽しいと感じることがなくなってしまった。
もっと上手くならないと。そう思って沢山努力した。ダメなところは徹底的に直すために練習したし、食欲がなくても筋肉をつけるため胃の中に押し込んだ。
そして、そのおかげか優秀選手賞をとった。だけど浮かれている暇は無い。もっと、もっと上手くならないと。
そう思っていた時、チームメイトの会話が聞こえた。会話の内容は最近上手くいかない、スランプだ、など。
じゃあもっと努力しろよ
心の中で悪態をついた自分に気づき急いで自分に言い聞かせた。他人を責めるのは弱い奴がすること、と。だけどそのチームメイトを苦手になってしまった。
帰り道、今日の試合でのミスを思い出す。どうして頑張ってるのにミスが起こるんだろう。疑問を抱くとすぐに答えが出た。
ミスするこの手が悪いんだ
罪滅ぼしをするようにミスする右手を壁に押し当てた。足を動かすにつれ皮がめくれ肉が削がれたが、痛くはなかった。ミスしなくなったらそれでいい。そう思いながら歩いていると突然後ろから「何やってんだーお前!!」と誰かに叫ばれ引っ張られた。誰か確認するために見ると、ちっこい二軍のやつ。ちらっと見たことはあるけど喋ったのは初めてだ。体全体を向けると手から血が滴った。その様子を見て「ぎゃー!!」と叫ぶこいつ。こういうの苦手なのかな。なんだか素直なこいつを見てると自分で否定してきた事実が口からするりと出た。
「多分あんまバレー好きじゃないや」
出してみると言えた、という達成感とやっぱり好きじゃなかったんだ、という悲しみが出てきた。視界がぐにゃり、と歪んで目の前のこいつも歪んだ。だけど目の前のこいつは、はっきりとこう言った
「じゃあやめればいいんじゃね?」
別に死なねぇ
前までなら何をそんな簡単に、と怒りが湧いて文句を言っていただろう。だけど今はこの言葉にとても救われた気がした。ふと、視界が明るくなり右から光がはいった気がして右を見ると広い空と住宅街。
こんなに世界って広かったんだ。
当たり前なことに気付けてなかった。だけど、こいつのおかげで気づくことが出来た。
それからこいつ__星海光来と学校に行き保健室に行った。今まで痛いと思わなかったのに気が楽になった瞬間痛みが主張し始めた。だけど痛いことに関して嫌だな、とかはあまり思わなかった。そして、手当をしてもらい2人で帰った。名前で呼び合うくらいの仲にはなれた。
その日から少しづつ今までの当たり前が戻ってきた。それと同時に、変化もあった。最近は部活で精一杯で一切なかった恋心、と言うには小さすぎるかもしれないが、光来くんに対する気持ちが他のみんなとは違うことに気づいた。
学校内で関わりが増えた。
光来くんの意外な一面を見つけたり、ふざけたことを言ったり…年相応のことを2人でした。そんな感じで、中学時代は幕を閉じた。
高校は2人とも鴎台に入った。俺は兄姉のように高校が終わっても続けたりはしない。俺は最後に高校で光来くんとバレーをして、終わる。
高校に入ってからは光来くんに少しでも意識して欲しくて髪を伸ばした。自分で言うのもなんだがかっこよくなれた気がした。実際に高校に入ってからはモテた。告白もされた。だけど俺が告白して欲しい人じゃないから断った。そして高校二年生の半ば、俺は思った。
もしかしたら光来くん俺のこと好きなんじゃないか、と
光来くんは無自覚かもしれないが俺と他のやつで距離感が違う気がする。勘違いじゃなかったらいいな。いや、勘違いでないで欲しい。
願望でなく事実になるまであともう少し。
コメント
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めっちゃサイコーです!! 続きください