ー 叶 side ー
「……かなえ、さん…?」
「うん」
僕は、彼が安心するように優しく微笑んだ。
僕だけが君を守れる、僕だけが君を愛してあげられるんだと。
これまで長い間計画し、様々な人に根回ししてきた。慎重に事は進めてきたつもりだったが、こうも上手く行くとは。
「俺、あんなことしてないのに…っ」
……可愛いなぁ。無防備にぽろぽろと涙を流す姿は、とても愛らしい。
この整った端正な顔を、もっと歪ませたい。そんなことを考えるのは、僕自身が歪んでいるからだろうか。
世界に絶望して、もう死んでしまいたいくらいにまで苦しませたい。なのに、誰の悪意にも晒されない真綿に包まれたような場所で、なんの憂いもなく、ただ幸せに過ごしてほしい。
そんな相反する感情が、僕を支配する。
彼はどうしてこうも、僕の嗜虐心と庇護欲を煽ってくるのだろう。
「心配は無用。不破くんは黙って僕に守られてて!」
そう言うと、彼は笑ってくれた。
『大丈夫、僕だけが信じてあげるからね。』
コメント
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こんな神作をありがとうございます! 続き楽しみにしてます!