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ランside
事が落ち着いた後、僕たちは部屋の外に出て、ゲームステーションへ向かった。
その途中で気づいたことがあった。
「…マミー、左腕が治ってるね。」
…そう、僕が気づかないうちにマミーの左腕が治っていたのだった。
でも、一体どうして…?
「あなたが気を失っている間に、ポピーやハギーが色々してくれたのよ。」
なるほど……
「……って、え!?ハギー、生きてるの!?本当に!?」
「ええ、キシーがハギーを助けたんですって。…でも、ハギーから聞いたわよ。あなたは自分の手を伸ばして、彼を助けようとしていたって。」
……僕は、安堵と同時にひどい罪悪感を感じた。
予想できていなかったとはいえ、箱を落として、ハギーを落下させたのは僕だ。
だから…ハギーは、すごく怒っているだろう。
…僕の足取りが重くなったように感じた。
@ゲームステーション
…僕たちがゲームステーションに着いたと同時に、僕の目の前には少し怪我をしたハギーと、ハギーに寄り添うキシーがいた。「ハギー……」
「ラン、……数日振りだね、久しぶり。」
ハギーは何食わぬ顔でそう言った。
「大丈夫?君が気を失ったってマミーから聞いたよ。」
…ハギーは心配そうに聞いてきた。
「…ハギー、どうして?君は僕がしたこと、忘れちゃったの?」
「忘れてないよ。」
僕は混乱した。
どうしてハギーは怒ってないの?
「僕が君を転落させたんだよ!君は僕にもっと怒ったり、反撃しなきゃいけないはずだよ!!」
僕は混乱して、ほぼ叫ぶようにそう言った。
「…そうだとしても、僕を助けようとして手を伸ばしてくれた人に反撃する義理なんてあると思う?」
「でも!」
僕には理解できなかった。どうしてハギーは怒らないの?
「僕のせいで君は怪我をしたんだ!!僕が君に怪我を負わせたんだ……君が怒っていなくても、キシーは怒っているはずだよ___」
僕がそう言うと同時に、キシーが首を横に振った。
「子供達の気持ちを誰よりも本気でわかっていて、実験に反対していたあなたがもしもわざとそんなことをしたなら、ハギー名前を叫んで手を差し伸べようなんて事絶対にしなかったはずよ。」
キシーは真剣な顔で言った。
確かに言ってる事は事実だけど…!!
「でも僕が__」
「じゃあ何!?僕たちに起こった不幸は全部君のせいだって言いたいの!?」
ハギーは怒ってそう言った。
「……僕は__」
「君は辛くないの?ずっと自分を責め続けてさぁ!!」
…辛い。でも、そうしないと僕は実験の被害に遭った人たちを弔うことができない。
罪を償うことができないんだ。
「…子供たちのことを思う気持ちはわかる。けど、……自分を責め続けることが、その子たちのためになるとは思えない。子供たちにたくさん寄り添ってた君ならわかるよね?」
………ッ
僕は何も言えなかった。
ハギーが言う事はあまりにも的を得てるから…
「……それに、元はといえば僕が君を追いかけ回したことに原因があった。あの時の僕はどうかしてたんだ。」
「でも___」
僕が言葉を発したと同時に、ハギーは僕の言葉を制するように僕を抱きしめた。
「これ以上は埒が開かないよ…お願いだから、お願いだから、1秒でもいいから自分を責めるのはやめてよ…僕は、友達が辛そうな姿を見るのは、僕が辛いから…」
…友達…?
「どうして…?僕がここを辞めてしまったから、友達の関係はもう終わったって思ってたけど…」
「…君が会社を辞めた後も、君を友達だと思わなかった日は無かった。でも……研究員の存在がどうしても許せなかった……月日が経って、いつの間にか憎しみだけが一人歩きしていたんだ……君のことを忘れかけてた事は、本当に反省してるし、後悔している。僕が落ちていく時、必死に僕の名前を呼んで、手を伸ばした君を見て、やっと君のことを思い出せたんだ。」
僕の中で、たくさんの感情がぐちゃぐちゃになった。
後悔、混乱、安堵、嬉しさ、それらが全て混ざったような、何とも言えない感情になった。
「…友達でいてくれてありがとう…でも、どうして友達でいてくれるの…?僕、わざとじゃないとはいえあんな事したのに!!」
「僕だって同じ気持ちだよ!君を殺そうとしたのに、どうしてまだ友達でいてくれるんだろうって…!」
…気づけば、僕もハギーも泣いていた。
「…でも、仲直りができて正直ホッとしたわ…もしもすれ違ったままだと思うとちょっと胸糞悪いから…本当によかったわ…!」
キシーが、安堵した表情で言った。
「…ね、何も心配する事はなかったでしょ?」
…いつの間にか後ろで見ていたポピーが、微笑みながらそう言った。
「そうね、仲直りができたみたいで本当によかったわ。」
マミーも安心したように言った。
僕は、やっと笑顔になれた。
そして、もう独りじゃない。
「ありがとう、みんな。」
僕は心から嬉しくなった。