ごめん節分で急遽書いたわ。
今回真面目です。安心してね。
でもその代わりほのぼのです。
🎭💉。
「あーあ、今日も負けたなぁ。」
少し落ち込みながら夜の街を歩く。
夜という事もあり、人は全く居ない。
負けた分金は無いが、公園の自販機でビールでも買って、飲んでいくか。そう思い、私は公園に立ち寄る。
昼間は子供達が遊んでいる為、賑やかな公園も、夜になると深い沈黙に落ちていた。なんだか少し寂しい気もする。
「鬼はー外!福はー内!!」
「ぐわー!!やーらーれーたー!」
しかし、そんな静かな夜の公園の沈黙もすぐに破られる。何の縁だろうか。沈黙を破った声の中の一つを私は酷く存じていた。それもその筈、今日だって私はその声を聞いているのだから。
「おや、明君。子供の相手ですか。」
そう、私の学園の随一頼もしい、否、危なっかしい部下の一人、保健医のたかはし明君だ。
「学園長先生!奇遇ですね。えぇ、今日は節分ですから。僕は鬼役です。」
そうか。そういえば今日は節分か。
暗くてパッと見では分からなかったが、よく見ると子供が明君に投げ付けたであろう豆が辺りに転がっていた。
「そうでしたね。そういえば、学園が少し騒がしかったのはそれでしたか。いやはや、私も少し子供達の相手をしてあげれば良かったですねぇ。」
「ははっ!本当は気付かなくて良かったって思ってる癖に。子供も面倒事も好きでは無いでしょう?」
図星つかれ、私はぴくっと反応する。すると明君は「やっぱり!学園長先生分かりやすーい!」と腹を抱えてケラケラ笑ってみせた。何故図星をつかれると私は反応してしまうのか、己の悪い癖を酷く恥じた。
「しかし、この子、両親は居ないのでしょうか?」
私が話題を逸らす様にそう聞くと明君は唸る。
明君から聞くに、「最初は自分も子供の両親を探していたが、見付からず子供が最初に居たこの公園に戻って来た」という事だった。豆は丁度節分であった事を明君が思い出し、子供が退屈しない様にとコンビニ等で買ってきた物という事であった。
「なるほど、こんな時間帯に子供がいなくなるとは、両親もさぞかし心配しているでしょうね……」
「……そうですね。」
私がそう言葉を零すと、明君は少し間を開けて私に共感する。間が気になったがとにかく今は子供の相手をしよう、そう思い、私も子供と少しの時間、激し過ぎぬ様遊んだ。
「すみません!うちの子が!」
そんなこんなで子供と遊び始め約数十分後、子供の母親らしき人物が現れた。明君は流れる様に「いえいえー、僕も楽しかったので!」と言い、子供に別れの挨拶を済ませ、母親に引き渡す。母親は私達にぺこりとお辞儀をすると「ほら、行くわよ」と言い、子供と手を繋ぎ、その背中は遠ざかって行った。やがて見えなくなり、親子の背中をただ見守る明君の綺麗で少し儚い横顔を、私は親子を見守る明君と同じ様にただ見つめた。少しの沈黙が私達を包み込む、あんなに先程まで騒がしかった公園は今やこんなにも静かだ。心地良い夜風に吹かれ、靡く明君のさらさらな髪とプラスし、先の横顔、更に美しくなったその横顔に私は心射抜かれる。
「そういえば、学園長先生。」
「なんですか?」
明君はそのまま目線を戻さず私を呼ぶ。
まだその目線は親子に向いたままだ。
完全に明君にハマってしまった私はそんな明君の目線にもや付きを感じる。
俺を見ろ。
そう言える訳も無く、私は少し複雑な気持ちで明君に返事をした。
「こんな夜遅くに、親子はどうして出歩いていたんでしょうか。」
「はい?」
「子供はまだ小さいし、夜に出歩かせるだけで危ないのに、お母さんは子供から眼を離していた。」
明君は静かに続ける。
明君の口からそんな常識的な言葉が出る事自体驚きであったが、私は何故か静かに明君の話に聞き入っていた。
「僕なら、眼を離さないのに。」
「学園長先生との子供なら、何よりも大切にしちゃうな。」
思いがけない言葉に流石に驚く。
そして私は全てを早急に察し、明君に問う。
「明君、貴方お酒を飲んでいますね?」
私が明君にそう聞くと明君は案の定、にひっと笑う。
「あは、バレちゃったぁ。」
「バレないと思ったんだけどな。」そう言う明君をそっちのけで私は明君の腕を引き、自身に近付ける。すると明君は先程の私の様な驚いた表情を見せ、次第にその驚いた顔は紅に染まっていった。早くも首までも紅色に染まりきった、そんな明君が愛おしくて、ただ愛おしくて堪らない。私と目線を合わせない明君に私はまたも、もやつきながら明君に言ってみせる。
「明君。見て。」
そんな一言。
しかし、明君には大打撃。
声にならない声を上げながら、渋々私を見る明君。
完全に目線が合わさったのを確認すると、私は自身の仮面を取り、明君に顔を近付ける。すると明君は硬く眼を閉じる。可愛らしく緊張している明君には悪いが、まだ明君が思っているそれはしてやらない。
こつん……
でことでこがぶつかり合い、そこで明君は「えっ」と声を上げる。私が「ふっ」と笑って見せるとまたもや明君の顔は更に紅に染まる。「キスをされると思ったんですか?」そんな意地悪な彼氏の言葉を明君は待っている事だろう。しかし、俺の意地悪はそんなに生ぬるくは無い。
「俺との子供…欲しいのか?」
「へっ……」
明君は俺を自慢の腕力で押し、退ける。
するとすぐさま自身の腕で顔を隠し、俯く。
「どうなんだ?俺はどちらでもいいんだぞ。」
「……だっ、大好きな彼氏との子供ですよ?欲しくない彼女がこの世に居るとお思いですか?」
やっとの思いで答える明君を見て俺は笑う。
すると明君は最初こそはむっとした表情を見せていたが、みるみる弱々しい表情へと変わっていってしまった。明君は弱々しい表情に見合った声で俺に問う。
「学園長先生は…欲しくないんですか?僕との子供は……」
「『欲しくない』」
「というとでも?」
俺のそんな当たり前の言葉で明君の表情はみるみる元気ないつものものに変わる。まるで子供の様な笑顔に俺はまた射抜かれながら「意地悪だって時には必要だろ?」明君にそう言い笑ってみせた。
「そうですね……」
照れながらそう言う明君に俺は再び近付き、今度はきちんと明君の要求に答えてやる。
ちゅ……
そんな少し卑猥な音が俺達を優しく包み込む。
「大好きですよ。学園長先生。」
「知ってる。」
この可愛いむすっと顔をいつまでも守り続けよう。
――
「ほら、鬼だって内に入らないと寒いだろ。」
「……!はい、お邪魔します…!!」
今日も我が家は暖かい。
ℯ𝓃𝒹☕︎︎𓂃 𓈒𓏸
コメント
8件
文才が…ありすぎますね……尊敬です!🥹✨️ 照れる💉とか可愛すぎではっ!? スーッ……🎭️と💉の子供に転生するか……()