あの日から、季節は何度か巡った。
時間だけが、静かに痛みを癒やしていく。
けれど、癒やしきれないまま残ったものもある。
あの時、掴めなかった指先。
言えなかった「好き」の言葉。
そして、助けられなかった――自分。
そんな僕の前に、ふたたび“彼”が現れたのは、春の終わりだった。
屋上じゃなかった。
どこかの花屋の店先でもなかった。
でも、まるでずっとそこにいたみたいに、
彼は、当たり前の顔で僕の目の前に立っていた。
英「……久しぶりですね」
仏「……うん」
英「今日、花を渡しに来ました」
仏「え?」
英「今度は、私の番なので」
そう言って、イギリスが差し出したのは、
赤・青・白のバラが一輪ずつ束ねられた、小さな花束だった。
仏「……これって」
英「あなたと私の色、合わせてみました」
仏「……それって、」
英「“あなたと、ひとつになりたい”って意味です。花言葉的には、青いバラは“奇跡”、白いバラは“尊敬”、
赤は―――
三色で、やっと私の気持ちが言えました」
仏「……そんな、ずるいじゃん」
ほんとはすっごく嬉しい、そうやって言いたい。
英「あなたに、ずるいって言われたくないですー」
仏「……それもそうか。」
イギリスは、花を渡したまま、僕の目をまっすぐ見た。
英「……あの日、屋上で言いかけた言葉、覚えてますか?」
仏「……うん」
英「“助けて”じゃなくて、“一緒にいてください”って、言いたかったんです」
仏「じゃあ今度こそ、ちゃんと言ってよ」
英「……」
英「……私と、ずっと一緒にいてください。二度と、貴方、いやフランスを悲しませるような場所には行きません」
仏「うん、……こっちから連れてくよ。君がどこにいこうと」
僕はその三色の花を受け取って、ふたりの手は、今度こそ、ちゃんと繋がった。
風が吹く。
三色のバラが揺れる。
まるで、ふたりの国が、心が、今ここで結ばれた証みたいに。
――やっと、花が咲いた。
コメント
8件
最高だぁぁぁぁ! 今さっき不安になってたのがバカみたいだわ
わぁぁぁぁぁぁ!!!!ハッピーエンド良いですねぇ!!
あぁぁぁぁぁぁ!!!!神です!!!! フライギを超えるカプは無い!!! 最高です…!!!✨️