注意!
・これは完全なる二次創作作品であるため、韓国・北朝鮮及びその他の国々、もしくはその国の方たちを侮辱する意図は一切ございません。
This work is a complete derivative work and is not intended to insult South Korea, North Korea, or any other country or people.
・北朝鮮と韓国のお話。
・二人は双子です。
・中国さんが北朝鮮との絡みで後日譚に地味に出てきます。CPというより義理の親子みたいな感じです。
苦手でしたら読むのをお控えください。
・家族同士で争いに争い、今は休戦状態。
・暴力表現注意。
・二人の仲良し度は19話の『日に当たる僕と、闇に溶ける君』を読んでいただけるとよくわかるかと(さりげない宣伝)。ですが読まなくてもわかるように書いていきますのでご安心ください。
・そして今回は…
改めまして、お誕生日おめでとうございます!
大遅刻してしまって申し訳ありませんでした…クリスマスプレゼントとお誕生日プレゼントだと思って約2万字のこちらの小説をお受け取りください…
あと、もう一つ。
北君の挿絵を入れております。手書きです…雑で申し訳ない。
背景は商用利用可のフリー画像を使っておりますので著作権はご安心ください。
地雷さんはご自衛ください。
では本編Go。
不自然にならないよう辺りを見回しながら、電車を降りる。
しっかりとした地面に足がつく感覚がして、長旅の足の疲れが一気に楽になった気がした。
ソウル方面、と書かれた頭上看板を見つけ、人ごみに紛れて歩く。
ワイシャツを着たサラリーマン風の男性。
制服を着崩し、長い髪を巻いておしゃれをしている女子高生たち。
そんな人物たちに決してぶつからぬよう避け、今の自分の格好がおかしくないかとふと気になる。
今俺が着ているものは、深い青色のジーンズに白のパーカー。ジーンズと同じ色のキャップを被り、黒の斜め掛けバッグをかけている。
周りのおしゃれな雰囲気と俺がマッチしていないように思えて、深くキャップを被りなおしてから待ち合わせ場所へと再び歩き出した。
(…まさかソウルに一人で来るなんて、思ってもみなかったな)
しばらく歩いて疲れてしまったので、壁にもたれかかってひと時の休憩。
俺の名前は北朝鮮。本名は『朝鮮民主主義人民共和国』。
今日は色々あって…こうして、一人で電車などを使って何とか韓国の首都…ソウルへとやってきた。
慣れない人の波に揉まれ、激しい運動をしたかのように息が上がっている。
水を一口飲んでからスマフォを取り出すと、ちょうど見計らったかのようなタイミングで画面が点灯した。
液晶には、メッセージアプリからの通知として『今どこ?』の文字。
(韓国か…)
それは自分のよく知る人物からのメッセージだったので、すぐに既読をつけて慣れない手つきでフリック入力を行う。
『今ソウル近くの駅』
時間をかけて一言そう送ると、すぐに返信が来る。
『じゃあ〇〇駅?』
電光掲示板を見上げる。
確かに、メッセージに書かれた通りの駅名が記載されている。
『そう、そこ』
送ってから数秒、ポンと音がして返信。
『なら僕近いから迎えに行くよ。
近くにお店とかある?目印にしたいからさ』
『すぐ横にドラッグストアがあるが』
『了解、じゃあそこ向かうから動かないで待っててね』
…そこまで送られてきて、俺はスマフォの画面を消した。
(あいつ、本当に返信早すぎるだろ…)
水流のように流れていく人々をぼんやりと見ながら、双子の片割れなのにどうしてこんなにも能力が違うんだと純粋な疑問が湧き上がってくる。
俺を迎えに来ると言っていた人物。
それは、俺の唯一の家族で双子の片割れの━━━…韓国。
俺が北朝鮮領に居る時や公務をしているときは原則として『南朝鮮』と呼ぶけれど、こういうプライベート部分では『韓国』と呼んでいる。
…一応、北朝鮮の国民は『北朝鮮こそ本物の韓国だ』…って思ってるらしいし、その考えを崩しちゃいけないから。
(でもまぁ、世界的に見たら…南朝鮮が韓国なんだよな…)
日本やアメリカといった西側諸国は言わずもがな、東側諸国のロシアや中国ですらも、きっとそう思ってる。
結局、俺はどうあがいても決して韓国にはなれない。
あんな風に流行を作り出す能力もなければ、韓国のように機械系に強いわけでもない。
俺は…
(…ただただ、それなりの戦力を持ってる…)
……だけ。本当に、それだけ。
数十年間鎖国状態にあり、ソ連が崩壊するまではなんとか持ちこたえていた。
けれど、ソ連は崩壊。俺たちの生活物資も何もかもが不足し、少ない材料をやりくりしてなんとか蓄えた軍事力。
核兵器を作り、ICBMを作り。徴兵令を出して国境警備隊を編制し、必死に国を護るために尽くしてきた。
…けれども、決して韓国には及ばない。
(…考えるの辞めよう、暗くなるだけだ)
暗い考えを振り払い、俺は韓国を待ちながら流れていく人たちをただぼぅっと眺めていた。
「えーっと…ドラッグストアの近く、か…」
北から送られてきたいつも通りの無機質な短文のメッセージを確認し、この駅内の構造を思い出す。
(ドラッグストアがあるのは、南口付近…だっけか)
上を見上げると看板が下がっていたので、『남쪽 출구 방면』と書かれた方に従って人の波に逆らわぬよう歩く。
今は平日の朝だからか、やっぱり通勤や通学の人が明らかに多い。
だから、いつもは人目につかないように時間をずらして歩くのだけど。
(…北に会えるなら、このくらいどうってことないな)
数十年に何度もない、北と僕が会える日。
家族に会えるならこの程度の人混みなんともない。
そう思いながら歩いていくと、ドラッグストアと看板のかかった店が見えてきた。
「あそこかな」
ドラッグストアに向かいながら視線を向けると、壁に寄りかかって流れていく人を見つめる一つの姿。
キャップを深くかぶった、白いパーカー姿の小柄な人物。
探していた姿に大声で呼びたくなったが、ぐっとこらえて歩みを速める。
歩いていくうち、彼の視線が僕に留まった。その瞬間に、少々こわばっていた彼の表情が一気に緩む。
北のもとへと歩いていき、丁度北の正面に立ったところで彼に笑いかけた。
「やぁ、北。お待たせ…それに、久しぶり」
僕の表情筋も北の姿を目にして緩んだ感覚がした。
そういうと、北はこくりと頷いた。
「久しぶり、韓国。
全然待ってないから大丈夫だぞ」
「そっか、なら良かった。それじゃ早速行こっか、北。
僕君に案内する場所、もう決めてきてるんだよね!」
「…そうか」
自信満々に言うと、北は安心しきった表情で微笑んだ。
この笑顔を見るのも、実は15年ぶり。15年間、一度も北と会えてなかったから。
案内するうえではぐれないようにと握った北の手は、やけに冷えていた。
「前に北がこっち来たのって15年前だよね?
だいぶ街並み変わってると思うよ~」
手を引かれるままついて行っていた時、韓国が不意にそう聞いてきた。
地上の景色を一瞬だけ想像して、ほんの少し胸が躍る。
そのせいか、口元が勝手に緩むのを感じた。
「…嗚呼、15年ぶり…地上に出るのが楽しみだな。
地下鉄乗り継いで来たから、韓国の景色はまだ見れてないんだよ」
「そうなの!?…まぁ、目立ちにくいのは地下鉄だもんねぇ…」
うんうんと納得したように韓国が頷く。
「んじゃあ、なおさら見てもらわないと!
僕の国の、15年間の発展ぶりを!」
「…はは、楽しみにしてるよ」
そう答えると、韓国はパッと華が開くように笑った。
そうして短い会話をいくつかしていく内、階段にたどり着いた。
階段の登り終わりを見ると、上のほうから眩しい光が煌々と差している。
「あっちって、もしかしてもう地上か?」
「うん、そうだよ。登ろっか、足元気を付けてね」
「嗚呼、ありがとう」
韓国が前を歩き、俺は手を引かれるまま階段を登る。
横を通り過ぎていくスーツ姿の人物や集団の学生の間を韓国は綺麗に抜けて行き、俺はそのあとを何とか着いていく。
段々と日の光が顔に当たり、街の喧騒が一気に鮮明に聞こえてきた。
「ほら、北。もう地上だよ」
先に階段を登り切った韓国がこちらを振り返り、ふわりと微笑む。
俺も追いつきたくて、けれどどこか漠然とした不安が胸を締め付ける中、止まりそうになる足を必死に動かして階段を登った。
そうして、登りきる一歩手前。
韓国は似つかわしくない大人っぽい微笑みを浮かべ、まるでガイドのように恭しく言った。
「北。
その途端、朝日を正面からまともに食らった。
視界が一気にホワイトアウトし、じぃんと目の奥が光で痛んでいる。
それでも、決して目を閉じずにまっすぐ前を見据える。
「……ぁ…」
まず聞こえてきたのは、地下に居た時とは比べ物にならないほどの喧騒。
それは電子公告の音声だったり、道を行き交う人々の声だったり。
自然の音など無いに等しいほど、人々が作り出すオトでそこは満ち溢れていた。
それから次に、じんわりと中心から滲み出てくるように視界に色が付いて、ぼんやりとしていた街の輪郭がはっきりと線を取り始めた。
朝日で窓ガラスが反射し、たくさんの高層ビルが建っていることが認識できる。
高層ビルの下には店が大量に立ち並び、朝だというのにもうそこは賑わいを見せていた。
15年前とは明らかに違う賑わいに、思わず棒立ちしてしまった。
「…これ、は……」
「どう?北。これが僕の15年の成果。
随分と成長して、アメリカさんの支援を受けつつも今も頑張って成長中なんだ」
15年ぶりの進化を目の前で見せつけられて驚愕の二文字しか出てこない俺の横で、韓国は自慢げにそう言った。
「……っ、はは……」
何故か、目の前の光景を見ながら俺は笑い声が漏れた。
「…すごいな、韓国…」
一切の他意を含まず、素直にその言葉がするりと出る。
韓国は俺の隣で一瞬目を見開いた後━━━…
「━━━…当然っ!!
ここは他の何でもない、僕の国なんだから!!」
韓国は眩しいほどの笑みを浮かべ、パッと手を横に広げた。
ずっと闇の中で生きている俺には、その姿がとても眩しく映った。
タクシーを捕まえ、韓国の行くがままにやってきたのは『明洞通り』という場所。
沢山の人で賑わいを見せ、どこのお店も繁盛しているように見える市場だった。
「こ、ここは…凄い人だな…」
「明洞通りっていう観光スポット…かな?食べ歩きに丁度良くて、日本からの観光客の人も良く来るんだ。
地下鉄乗り継いできてお腹空いたでしょ?ここで食べていこうと思ってね」
「成程…」
確かに、どこか店に入ってしまっては帽子などを脱がなくてはいけないので国の化身である俺たちは随分と目立ってしまう。
それならば食べ歩きで人ごみに紛れながら移動するのが賢い選択だろう。
韓国は俺の手をぎゅっと握った。
「んじゃ、行こう北!
おすすめのお店、事前に調べてあるから!」
「わっ、ちょ、引っ張んな韓国ッ…!」
ぐ、と手を強く引かれ、俺はよろけかけた。
けれど…
(…まぁ、たまにはこういうのも…案外悪くはないな)
そう思った。
「北、これ美味しいよ!今日寒いし、温かいやつ!」
「えーっと…これ、なんだ?」
「10ウォンパンだよ。知らない?」
「嗚呼…北朝鮮じゃ出回ってないから…」
「そうなの!?こんなにおいしいのに!?」
「流石に敵国の食べ物は出回らないぞ…」
韓国に手渡された、大きく『10』という形に焼かれたパン。
紙で下半分が包まれているものの、それを突き抜けて熱さが手にじんわりと沁みる。
「僕の分も買ったしさ。さ、遠慮せず食べて!」
「…じゃあ、ありがたく…」
初めて食べる未知のものに少しの恐怖を感じつつ、韓国が買ってくれたものだから大丈夫…と言い聞かせてなんとか小さくほおばった。
「ん゛!?」
嚙み切った後パンを離すと、ピーンとチーズが伸びた。
(ちょっ…伸びすぎじゃないか!?てか中身チーズかよ!!先に言えよ韓国!!)
チーズが伸びすぎてあたふたとしている俺の横で、韓国は爆笑していた。
「ちょっ…北、何やってんの!!めっちゃチーズ伸びてるよ…っはは!!」
「ふぁひふぁらっふぇんふぁふぉ!!」
「あっ…あははっ!!北、面白ッ…!」
上が10ウォンパンであたふたしているので、右足で韓国の脛を蹴ってやった。
「痛っだ!?
痛いってば、何すんの!?」
「ん゛ん…
…笑った罰だ。それくらいはさせろ」
「酷ッ!!酷くない北!?ねぇ!?」
「はは、叩くな叩くな」
ぽこぽこと俺の胸元のあたりを叩き、大げさにリアクションをする韓国の表情は幼い子供の表情そのもの。
韓国も普段は俺に負けず劣らず無表情であることが多いから、自分の双子の片割れに言うのもなんだが━━━…かなり近寄りがたい雰囲気をまとっている。
けれど、今この時だけは…何事もきらきらと感じられる年代の、青春を謳歌している男子のようで…
こんな風にきらきらと笑う韓国の隣に立てているのが自分だという現実が、まだ信じられなかった。
そのあとも俺たちは明洞通りを周り、韓国のおすすめするお店で買ったものを食べ歩きしていた。
台湾発祥ではあるもののタピオカのお店などもあり、韓国が自撮りをしたいと言った。タピオカを買い、インカメに向かってウィンクを決める韓国の斜め後ろでタピオカを持ってピースを決めてやった。勿論韓国にしこたま文句を言われて最近の流行りのポーズなども教えてもらったが、そのあとも一貫してピースを貫いたので最終的に何も言われなくなった。
何かを買って写真を撮ることを何度か繰り返し、デザートとしてトゥンカロンというマカロンのクリームもりもりバージョンのようなものを食べていた時のこと。
カバンをごそごそとしていた韓国が、不意に叫んだ。
「……あっ!?」
いきなり隣から大きな声が聞こえたので、びっくりしつつも韓国のほうに目線を向ける。
視界に映った韓国は焦ったような表情をして、目を見開いていた。
「…どうしたんだ?韓国」
「あ、いや、その……忘れ物、しちゃったっぽくて…」
「忘れ物?」
首を傾けてそう尋ねると、韓国はこくりと頷いた。
「置いてきちゃったかもな、って場所はなんとなく目星付いてるんだよ。
ちょっと取ってくるからさ、北はここで待っててもらっても良い…?」
「嗚呼…場所がわかってるんならまだ良かった。
ここで動かず待っているから、早めに行ってこい」
「うん、ごめんね北…すぐ行ってくる!」
この会話を15秒で済ませ、韓国は小走りで人ごみの中へと紛れていった。
帽子を被っているから余計に紛れやすいんだろう。
一人残された俺は壁にもたれてしゃがみ込み、荷物を膝の上へと置いてぎゅっと縮こまった。
そして、脳の片隅にあった考えが表へと出てきてしまっていた。
(………怖い………)
…恐怖の感情。
さっきまでは、この国をよく知る韓国と一緒だったから…知らない土地を歩いても、『韓国と一緒だから大丈夫だ』…なんて安心感が生まれていた。
けれど、韓国が居なくなった途端、今俺が足で踏みしめているこの土地は本当に何もわからない場所へと姿を変える。
味方もおらず、韓国人は皆北朝鮮の敵。四面楚歌の状況はただただ、怖かった。
(怖い、怖い、怖い………)
ぎゅぅと荷物に顔を埋め、街の喧騒すらうるさく感じてさらに縮こまる。
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い
段々と手が震え始めた。もう俺はそこから動けなくなった。
顔をあげようと思っても力が入らない。
しゃがみ込み、顔を埋めたまま俺はずっと固まっていた。
そうして、大体5分か10分後。俺からすれば、5時間にも10時間にも思えるほどの長い時間に感じられた。
不意に肩をトントンと叩かれた。
(韓国……?)
韓国が帰って来たのだと思った。
一気に恐怖心が薄らぎ、体全体から緊張が解きほぐれた気がした。
けれど、俺はこのあとすぐに顔をあげてしまったことを後悔することになる。
顔をあげ、そこに居たのは━━━…
「おにーさん大丈夫~…?ずっとうずくまって動かないけどさぁ…」
「お兄さんもしかして辛いことあった?俺らに話してみる?」
…若い、韓国人の二人組だった。
「…ッぁ…」
一気に心臓が跳ねた。
(ダメだ…ダメだ、もし、もしこちらの人たちに、俺が北朝鮮の化身だってバレてしまったら━━━…)
思考が一気にクリアになり、冷や汗が意図せず出てくる。
問うても問うても何も答えない俺に、男たちは段々と不信感を抱き始めていたようだ。
「…なぁ、こいつ本当に大丈夫か?」
「さぁ、知らね。まぁ相手が何だろうがいつも通りやるだろ?」
「嗚呼、当然だ」
男たちは何度か短い会話を交わしていた。
けれど、俺は韓国ではないやつを目の前にして、ただパニックになっていた。
男は俺の目の前にしゃがむと、片手を差し出してきた。
「おい、兄ちゃん。その荷物渡せ」
「……ッ、は?」
唐突にそう言われた。荷物をさらにぎゅっと抱えた。
「だからー、その大事に抱えてる荷物出せって。
大丈夫大丈夫、金さえ渡してくれりゃあ荷物は返すよ」
目の前の男はにこにこと笑っている。
韓国が事前にメールで送ってくれた、用意しておくものリストの最後に書いてあった言葉が脳裏によぎった。
『韓国って意外と犯罪発生率高いんだよね。
だから、恐喝とかカツアゲとかにもしかしたら遭うかもしれない。
そんなときは、“絶対渡しません!!”じゃなくて、少額のお金が入ったお財布を丸々渡してね。
そうすれば相手は満足して帰ることが大半だから』
…そういわれていたので、一応安い財布に日本円換算で1万円くらいのお金を入れたお財布を用意してある。一応これくらいあれば満足してくれるだろうと思って。それに、本物の財布は腹巻式でパーカーの下に隠してある。
だから、俺は抵抗せずに震える手で荷物を渡した。
「おわーっ、こいつ馬鹿素直じゃね!?めっちゃ簡単に荷物渡してくれたんだけど!!」
「いい金ヅルじゃねぇか、ほら、さっさと財布探せよ」
「えー、めんどい…おいお前、財布出せよ。全額な」
荷物を俺のもとへ放り投げられ、上から目線で指示される。
なぜ見知らぬ人に上から目線で命令ができるのかと疑問に思いつつも、こういう時のために財布を用意したんだと思ってさっさと財布を取り出して男たちに渡す。
男は笑顔で受け取ると意気揚々と開き、中の金額を確認すると━━━…
「…全ッ然入ってねぇじゃねぇか!!!!」
財布を放り投げ、俺のことを思い切り殴った。
「痛ッ゛…!?」
本気の力で腹を殴られ、一瞬で吐き気が催した。男が胃のあたりでも殴ったのだろう。
さっき韓国料理をたくさん食べ歩きしていたのが、こうして返ってくるとは思いもしなかった。
「お前さぁッ、もっと金持ってるだろ!?見たところ観光客じゃねぇか!!
もっと金出せやッ!!」
男は脳を一ミリも使わないような暴言を吐きながら、何度も何度も俺のことを殴ったり蹴ったりしてきた。
白い服なのにやめてほしいなぁ、と殴られながらどこか楽観的に考え、韓国にこの場面を見られたら嫌だな、とも思った。
韓国に、俺が弱いところを見せたくないという思いが強かったから。
「おら、さっさと金出せや병신!!!」
強い痛みとともに、どこもかしこも殴られている音が聞こえる。
でも、戦争で負った傷に比べればこの程度痛くもかゆくもない。戦時中は普通に頭を縦断で貫かれたことだってある。だから俺は、ただひたすらに耐えた。
ここでもし相手を殴ってしまえばうっかり殺してしまう可能性もなくはないし、逆に俺はいくら殴られても傷がすぐ治ってしまう。
だったら反抗せず、新しい火種を作らないことに尽力したほうが良い。
そう思って、耐えていたその時。
「………ねぇ」
…聞き覚えのある声が、唐突に耳に届いた。
けれど、それはいつも聞く声からは遠くかけ離れた…低い、低い、地の底から響くような声だった。
男たちの殴る行為が止んだ。
「…あのさぁ、その子。僕の連れで、ちょっと待っててもらっただけなんだけど。
なんで2対1でリンチしてるわけ?しかも2対1の1の方は一切抵抗してないしさぁ…僕の連れが君たちになんかした?」
ダンッ!!と、スニーカーがアスファルトを強く踏む音がした。
痛む体に鞭を打ち、必死に顔を動かす。
その声の、正体は━━━…
「……か、ん…こく………」
「……北」
俺が待っていた、韓国の姿だった。
首にはヘッドフォンをかけ、嗚呼、そういえばさっきはなかったから忘れ物ってこれか、なんて少しズレたところに目が行った。
…韓国の瞳がひどく冷たいことにすぐに気づいたが。
けれど、その瞳は俺…ではなく、明らかに男たちに向けられていた。
「なっ…関係ないやつは引っ込んでろよ!!」
「は?関係ないって何?その子の連れって関係ないの?あぁっそう、君たちって本当に馬鹿なんだね?人の関係もまともに理解が出来ないなんてさ」
「はぁ!?てめぇ煽んのも大概にしろよ!!」
呆れたような表情を浮かべ、あー、これだからチンピラって嫌なんだよ…とボヤいた韓国は、余裕そうにポケットに手を入れたまま一歩一歩、踏みしめるように韓国はこちらへと歩みを進める。
男たちはそれに呼応するように、一歩下がった。
ただ歩いているだけなのに、妙に威圧感があった。
「それよりもさぁ。
なんで僕の連れを一方的に殴ってんのって聞いてんだけど。さっさと答えてくんない?」
「ッ、うるせぇ!!俺らが何者か知ってその口利いてんのか!?あ゛ぁ!?」
「あーうるさい、知らない知らない。お前らが何者かなんて別に興味ないし」
「はぁ!?ッお前、俺らを馬鹿にすんのもいい加減にしろよ━━━…!!」
男のうちの一人━━━…俺をずっと殴っていた方が勢いをつけて、ゆるりと歩いてくる韓国に拳を振りかぶった。
韓国はその拳をちらりと見ただけで、特に何の反応も示さない。
(このままじゃ、韓国が…ッ!)
別に自分が殴られる分には全く問題はなかった。怖くもないし、痛いけれどすぐに治るから。
けれど、韓国が殴られるのは絶対に嫌だった。
なんとか体を動かそうとしても、自身の体は痛みを訴えて脳からの命令に従おうとしない。
もがいているうちに、韓国の目の前に拳が迫る。
「韓国ッ!!」
━━━…当たる。
そう本能的に思い、ぎゅっと目をつむった時。
「…あのさぁ、しつこいんだって君たち」
殴られる音は聞こえなかった。
その代わりと言って良いのか、パシ、と軽い音が聞こえる。
「……?」
つむっていた目をそうっと開いた。
「…韓、国…?」
「嗚呼、北。大丈夫だよこのくらい、どうってことないって」
目の前の光景に、俺は思わず愕然とした。
男の拳を、いとも容易く片手で受け止める姿。それも、パーカーのポケットに片腕を突っ込んだ、ラフな立ち姿で。
男のほうは力をこめるためにプルプルと震えていたが、圧倒的に体格が小柄な韓国は微動だにせず何もないぞと言わんばかりに受け止めている。
「くっ、そ…動かねぇ…ッ!!」
「…君らが僕に勝てるわけないでしょ?
君らさ、俺らが何者か知ってんのかって言ったよね。
じゃあ聞くけど、逆に僕を誰だと思ってんの?」
韓国は冷ややかな目で男たちを見つめた。
もう一人の男は、蛇に睨まれた蛙のように固まっていしまっていた。
「…世界にはそれぞれ、国の化身が居ることくらいは小耳に挟んだことあるでしょう?
化身は国民の総意によって姿かたちを変え、時に時代が変わるときには新たな国の化身が生まれる…」
「何…言って…」
「…君ら本当に馬鹿だね?なんでこの話の流れで分かんないかなぁ…」
韓国は眉を寄せ、しかめっ面を作った。
そうして、男の拳をぎゅっと握ったかと思えば━━━…
そのまま腕を後ろへと引き、、男を後方へ放り投げた。
「…な、っ…!?」
積まれていた段ボールが崩れる音がして、それから韓国は手をぱんぱんと払った。
そして、顔面から段ボールに突っ込んだ男に言葉を吐き捨てた。
「…僕は国の化身。君たちの祖国である大韓民国の化身なんだよ。
僕を基盤としてこの国は成り立ってる。この国を基盤として成り立っている君たちが、国の大元である僕に勝てるわけがないって話」
そういって韓国は腕を組んでため息をついた後、拳を何度か握ったり開いたりした。
「んじゃあ、反撃だ。
これは北の分ね?」
そう言いながら、段ボールに突っ込んだ男を仰向けにひっくり返した後、顔面を殴った。
ぐっ、と男のうめき声が聞こえた。
「…じゃあ、次。
……これは僕の分だ」
もう一発、さっきよりも強い音で男は殴られた。
うめき声をあげ、男は動かなくなった。
もう一人の男のほうは、動かなくなった仲間を見て小さくヒッと声をあげていた。
…意外と小心者だったらしい。
「…で?君もぶっ飛ばされたい?」
「いっ、いえっ、つ、慎んでご遠慮いたします!!」
「あっそ、まぁ良いけど……
…でもさぁ……」
男の言葉を聞いて韓国はうなずいたものの、また歩を進めて男のほうへと近づく。
韓国が歩を進めるごとに、男の表情が恐怖でゆがんでいった。
倒れている俺の目の前を韓国の足が通って行った。おろしたてだと言っていた、黒い靴がやけに目に付く。
あくまでも冷静に、紳士的に。ゆっくりとわかるように韓国は男に話を振り続けた。
「…君はさぁ、目の前でこの子が殴られていたのに一切止めなかったんだよね?
じゃないと、こんな風に国の化身が動けなくなるなんてありえない。
つまり、止めなかった君も共犯で同罪だってこと気づいてる?」
「え、あ、は、はいぃ…!!」
「…だからさ……」
俺から見える韓国の姿は後ろ姿だけで、果たして彼が笑っているのか怒っているのかの判別はつかなかった。
パキ、と手の鳴る音が聞こえた。
「二発分。
僕と北の分、勿論受けてくれるよね?」
明るい声でそう言った韓国は、何かを言わせる間も与えず男を2回殴った。
…そのあと、警察が来た。どうやら韓国が事前に通報しておいたらしかった。
韓国は男たちをボコして黙らせ、男たちが警察に抱えられ連れられて行ったあと…すぐに怒りの表情から一変させて泣きそうな表情になった。…いや、泣いていたが。
倒れ伏している俺に駆け寄り、必死で立ち上がらせ、なんとかパトカーまで連れて行ってもらった。
その間、ずっと韓国はぼろぼろと無言で涙を流していた。
その涙の理由は、俺が殴られたからじゃない。
自分が守れなかったことの不甲斐なさに、自分で自分に憤って泣いていた。
そして、警察署のとある個室にて…
俺は延々と韓国から謝られていた。
「ごめん、北…僕が一人にさせてしまったから…ッ!!」
「大丈夫だって、韓国…だからもう謝るな…」
さっきからずっとこの構図だ。
韓国が謝り、俺が宥める。
けれど、韓国はいくら宥められても自分が居なかったから俺が怪我したのだと言って聞かなかった。
勿論頬をひたすら殴られたりしたので腫れあがり、そのほかにも細かい怪我がいくつか。
だが、警察官の応急処置で大事には至らずに済んだ。
…と、いうのに。
「だって、あんなに…あんなに動けなくなるまで、殴られて!!
僕が早く戻らなかったから…!!」
「良いんだよ、韓国。俺はただ反撃したら…また戦争の火種になると思ったから反撃しなかっただけだし。
お前のせいじゃない、俺が望んでやったことだ。だから大丈夫」
「でも、怪我もたくさんして…!」
「こういうのはすぐ治る。国の化身なら知ってるだろう?」
「それは、そうだけど…!!」
韓国は唇が破れそうなほど強く噛んだ。
「…それでも、北が痛い思いをしたのには変わりないじゃん…!!」
「………ッ」
とても悲痛な韓国の声が、室内に響いた。
その声は、今にも泣いてしまいそうなほど震えていた。
韓国がここまで弱ることはあまりない。
あったとしても、朝鮮戦争の最中くらい。
(…それくらい、傷つけてしまったのか……)
ここまで韓国がショックを受けてしまうとわかっていたら、俺はあの場で国際問題にならない程度の反撃をきっとしていた。
でも、時は戻らない。
俺はどうすればいいのか数秒間視線を彷徨わせたあと、韓国の頭にそっと手をのせた。
「北…?」
「…韓国」
不安そうに韓国は俺を見上げる。
けれど、これ以上決して不安にさせないために…表情筋を必死に動かして、慣れない笑顔を浮かべた。
「…俺は、他の誰でもない…韓国が助けに来てくれて、本当に嬉しかったんだよ。
怪我ももう痛くない。あいつらのことなんか、数十分経てばすぐに顔なんか忘れる。
…だから」
俺は、韓国の背を、ぎゅぅと抱きしめた。
「…来てくれて、ありがとう」
そう言って、背中をぽんぽんと叩いた。
その瞬間、小さく韓国の体が震えた。
「━━━ぅ、ぁ━━━…」
小さく母音を漏らしたかと思えば。
「っ、うわぁぁ…あぁ…うわぁぁぁん…ぁぁ…!!」
声をあげて、韓国はまるで堰を切ったように泣き出した。
顔は見えないが、肩のあたりに顔を埋めて…肩のあたりが濡れている感触がして、嗚呼、泣いてるんだな、なんて冷静に思った。
大粒の涙をぼろぼろ零すほど、俺の身を案じてくれていた韓国。
俺が韓国のことを一番に想うように、きっと韓国も俺のことを大切に想ってくれているだろう。
南北分裂から数十年。その間、会えた回数はたった数回程度。体が離れていたからこそ、きっとこうして心は強く結びついている。
韓国は多分あんなチンピラに出会ったとき、もしも一人なら通報するだけして放っておいたのだろう。
けれど、あの場面で来てくれた。来て、俺のために怒って、わざわざ殴るというリスクのある行動をしてくれた。
韓国は俺を守れなかったと嘆くけれど…
(…俺のために行動してくれたのが、何よりも嬉しい)
じわ、と、視界がにじんだ。
俺は泣きじゃくる韓国の背中をぽんぽんと叩きながら、韓国が泣き止むまで…
いつまでも、いつまでも傍に居た。
…韓国はいつの間にか泣き止んだみたいだった。
お世話になった警察の方は、事前に俺の存在を知らせていたらしく『またいつでも祖国様といらっしゃってください』と笑顔で言ってくれた。敵国だというのに、その親切な心遣いが嬉しかった。
親切な景観に見送られて警察署の外へと出ると、もう空はかなりオレンジがかってきていた。
「…もう夕方か」
「少し寝ちゃってたからね、仕方ないっちゃ仕方ない…」
困ったように韓国が微笑んだ。
「…ごめんね、北。せっかくの韓国旅行…ほとんど警察署で過ごすことになっちゃって」
「いいや、お前が気にすることじゃない。
明洞通り…楽しかったからな」
韓国は、そっか、とだけ言ってまた黙りこんでしまった。
綺麗な横顔のライン。白い肌に夕焼けのオレンジ色の光がよく映えていた。
なんだかその表情は憂いを帯びているようで…どこか、胸がぎゅっとつかまれたような感覚が襲う。
「…韓国」
「なぁに、北」
韓国は一切目をこちらに向けずに俯いたまま答えた。
俺は、それでも韓国のほうをじっと見たままゆっくりと話しだした。
「…今日のこと。韓国、まだまだ俺に案内したいところがあったんだろ?」
「…まぁ。まだまだいっぱいあるよ。明洞通りでご飯食べて、そのあとキムチ作り体験して…それから買い物を楽しんで、ソウルタワーに行こうかなって…」
「そうか。結構しっかり考えてくれてたんだな」
「もちろんだよ!!
…折角、北が来てくれるって言ってくれたんだから…日帰り韓国旅行、楽しんでほしかったし…」
韓国は拳を握り締めながら、溢れてくる感情を抑えるように言った。
韓国のポケットに入っているスマホにはきっと、今日回ろうと思っていた場所の候補やスケジュールがたくさん記入されているのだろう。
それが、あのしょうもない二人組のせいで水の泡になったのだ。
俺は何でもない風を装って続けた。
「あのな、韓国。
俺、もうじき仕事が佳境に入ってかなり忙しくなるんだよ」
「…うん」
「でも、そのあと…大体1か月程度は殆ど仕事が入らなくなるんだ。まぁ、もし入っても部下に任せてもいいくらいの小さい仕事だけって話でな」
「…うん?」
話の流れが変わったのを感じたのか、韓国はゆっくりと顔をあげた。
瞬きもせず、驚いたような表情を顔に貼り付けて。
(…そう、その顔が…今、見たかった)
自然と口角が上がるのを感じた。
「…だからさ、韓国。
またこっちに来た時…今日回れなかった分も全部全部…案内してくれるか?」
ヒュ、と、韓国が細く息を吸い込む音が聞こえた。
俺たちの間を、透明な風が流れていく。
ふわりと自然の匂いが薫り、それは俺の国でよく流れている香りでもある。
国は違えど、俺たちは同じ『朝鮮』なのだと知らしめるかのように。
韓国はしばらくの間、固まっていた。
その大きな瞳に、段々とまた涙が溜まっていく。
でも、韓国は笑っていた。
「あ、たり前でしょ…?」
「そんなの、言われなくたってわかってるよ…!!」
ぼろ、と、また涙が韓国の頬を伝っていった。
でも、これはさっきのように怒りと悲しみに満ちた涙ではない。
きっとこれは、良い涙。
俺は韓国の頭を撫でた。
韓国は、それに呼応するかのようにさらに涙をぼろぼろと落としていた。
「…また来る。だから、泣くな韓国」
「これ、嬉しい涙、だから…!!だから大丈夫なの!!」
「悲しくても嬉しくても、俺はお前が泣いてるところが嫌なんだよ」
俺は韓国の涙をそっと拭った。
「お前には笑顔が一番似合うのだから」
…無意識にその言葉が出た。
出て、コンマ2秒で気づいた。
(俺ッ…今、すごくッ、恥ずかしいことを…!!)
悲しみの涙ではないとはいえ、泣いている韓国を落ち着かせるために無意識に出た言葉。
無意識だろうが何だろうが、恥ずかしいことに変わりはない。
一気に顔に血が集まる感覚がし、思わず空いていた右手で目元を覆った。
多分、こういうキザな台詞はフランス辺りが似合うんだろうな、と思いつつも、必死に韓国に弁明するように手をわたわたと動かした。
「すっ、すまん韓国ッ…今の、忘れて…!!」
慌ててそう言ったとき。
韓国の静かな声が風に乗って聞こえてきた。
「…大丈夫だよ、北」
顔をあげた韓国は、もう泣いてはいなかった。
「…僕、僕ね、君にそう言ってもらえて…すごく、嬉しいから…!!」
無きかけだとばかり思っていた韓国の表情は、意外にも満面の笑みだった。
泣き腫らした赤い目元は痛々しくも、表情全てを使って嬉しいという感情を示して。
夕焼けでオレンジ色の光に照らされてくっきりと陰影が浮き出ている韓国は、ただただ…
…綺麗だった。
「…なぁ、韓国」
「ん、なぁに?北」
優しく呼びかければ、隣で微笑みを浮かべた韓国が視線を向けた。
韓国は俺の言葉を待っていたけれども、言おうと思った言葉は決して声として発されることはなかった。
代わりに出たのは、苦笑い。
「…やっぱり、何でもない」
「えー?何それー!気になるじゃんか!」
困ったような笑顔で韓国は冗談めかして笑った。
俺は、言葉の代わりと言わんばかりに韓国の手を握った。
ソウルで再会したとき、韓国から握ってもらった。
けれど、今回は自分から。
「…また次回、韓国旅行楽しみにしてるよ」
「勿論。頑張って計画立てとくから頑張ろ!」
「旅行に頑張るとかって概念あるのか…?」
「え、だって次回は今日の分と次回の分とで合わせて1泊2日でしょ?」
「なんでそこまで話が進んでるんだよ!!」
さも当たり前かのように言った韓国に驚きを隠せず、左手で目元を覆った。
「流石にそこまで休み取れるかわからんぞ…」
「取れる取れないじゃない、二日分の休み取るの!」
「お前なぁ…」
流石に横暴だ、とも思ったけれど、そういえば昔っからこんな奴だったと思えば自然と笑いが込み上げてきた。
「ちょっと!なに笑ってんの!?」
「いや…やっぱりお前、昔と変わんねぇなと思って…っ、ふふ」
「何をぉ!?そういう北だって全然変わってないからね!?」
怒ったように叫んだ韓国の表情がどうにもおかしくて、とうとう俺は笑い声をあげてしまった。
韓国がぽこぽこと俺の体を叩き、それもまたおかしくて笑う。
数秒そうしてからふと笑い声は止み、冷たい空気が頬を撫でていく感覚で現実へと引き戻された。
空を見上げれば、そこにはいくつかの星が瞬いている。
「……もう夜か」
「…うん、もう夜だね」
辺りは一面暗くなり、夕空の面影も水平線のギリギリしか残っていなかった。
そろそろ帰らなければ、明日の仕事に間に合わない。
「…じゃ、韓国。
そろそろ…駅に行こう」
「……うん」
韓国は寂し気に頷いた。
ソウル近くの駅に着いた頃には、もう空は真っ暗だった。
人工灯ばかりの韓国で星は殆ど見えず、見ようと思えば夜も遅くなった頃合いに高い山にでも登らなくてはいけない。
駅の改札前まで来たとき、北は僕を振り返った。
つないでいた手がぱっと離れ、一気に右手がひんやりとした冬の冷気にさらされる。
「寒っ…」
「ここは一応大陸だからな。冬は死ぬほど寒い」
そういう北が深く息を吐くと、その息は急激に冷えて白い煙となって空へと散っていった。
「…でもこっちは少し暖かいな。人が多いし、店も火を使っているところが多いから」
「北朝鮮はもっと寒いの?」
「…もっと凍えるような寒さだ。
空気が澄み渡って、不純物が少ない。だから、毎夜空を見上げると満天の星空が視界いっぱいに広がるんだ」
まだ祖国を出発してから一日も経っていないというのに、北はおもむろに空に指を指した。
駅前、人通りの多い時間。
道の端っこに寄り、二人して見えない星を追う天体観測。
周りから見れば、上を指さして何かしゃべっている不審者の2人組にでも見えそうだ。
「韓国だと見えにくいからこうして指を指すしかないんだが、あのあたりに冬の大三角形がある。で、もう少し上を見れば冬の大六角形も見えるんだ」
北は迷うことなく、次々と見えぬ星を繋いで形を作っていった。
「あれがベテルギウス。その下にリゲルという星があって、その二つを結んで上方向に三角形を作ろうと思ったらあのあたりにアルデバランという星が見つかる。
…なんだ、ちょうど少し見えるな」
北が指を指した方角を目で追うと、少し明るい星が目に映った。
「ちょうど見えているのがアルデバランだ。12星座でいう、おうし座に当たる星だな」
「…すごい、こんな人工灯ばっかりの街でも見えるんだ」
「あれは明るいからな。意外といつでも見えるものだ」
北は笑った。
「あ…ねぇ、じゃああれは何?
二つ星が並んでるやつ」
「ん?…嗚呼、あれか。
あれはふたご座だな。右側にある青っぽい星はカストル、左側にある赤っぽい星がポルックスという星だ。
カストルは2等星、ポルックスは1等星でカストルのほうが見づらいのだが…今日はちょうど綺麗に見えるな」
「いや色言われてもよくわかんないって!どっちも白っぽく光ってるんだもん!」
移動する際には星を頼りにすることの多い北と違って、僕は星に関して疎い。
そんな僕を見て北は笑っていたけれど、すぐに少し悲しそうな表情を浮かべた。
「…でも、やはり見える星が少ない。北朝鮮なら、もっとたくさん星が見えるんだが…やはり韓国だと限界がある」
天体観測は終わりなのだろうか。
北は腕を下げ、壁にもたれかかった。
なんだかこのまま終わるのが惜しくて、僕はずっとふたご座のカストルとポルックスを見上げていた。
「北朝鮮なら…もっと綺麗に見える?」
「嗚呼…そうだな。人工灯が手元の明かりくらいしか無いから、視界いっぱいの星空。韓国で見るよりももっとたくさんの星座を見つけられる」
「そこで天体観測したら楽しい?」
「まぁ…星が好きなやつなら気分が高ぶって仕方がなくなるだろうな」
北がそう言っている間、僕は漠然とあるアイディアを思いついた。
本当に突拍子もないことだし、確実に一度は拒否されるであろうアイディア。
でも、どうしても…どうしても、彼に提案したくなった。
「…ならさ、北」
ほとんど深く考えないまま、声が出る。
頭で考えることなく、無意識に言葉を連ねた。
「今度、僕を北朝鮮に連れて行って…北の言う、満天の星空を見せてよ」
…なんて変な提案なんだろう。
開国している僕の国に北が直接足を運ぶことすら危うい行動だというのに、この提案は僕が鎖国している北朝鮮に行くという危険極まりない提案。
もちろん、北は一気に顔を顰めた。
けれど、僕は彼の言う満天の星空を、この目で見てみたくなってしまったのだ。
「…何を、言って…」
「そのままの意味だよ。僕は、いつも君が見ている風景と同じものを一度でいいから見てみたいんだ」
「ッ、馬鹿なことを…命の危険があるってわからないのか?」
「そんなこと、とうの昔に戦争したんだからこの世界の誰よりもわかってるよ」
あくまでも静かに、冷静さを欠かぬようによく言葉を吟味して発する。
僕は北の目をじっと見つめた。
「でもさ、僕、ずっと気になってたんだよ。
南北分裂から数十年経って、君は僕の暮らしをこうしてこっちに来ることで知れているでしょ?
…だけど、僕は君の生活を全然知らない。どんなふうに普段過ごして、国民がどんな人なのか…全くと言って良いほど」
北は黙っていた。まさにその通りだから。
だから、ここは強気に出れる。
僕は少しだけ声を張り上げた。
「だから僕は知りたいんだよ。
君の記憶の中にある星空とか、街並みとか。
そういったものを、己の目で見て、知って、聞いて…
…君にもう一歩近づきたい」
「…ダメ、かな」
溢れそうになる感情を何とか抑えて、笑顔を作って北に微笑みかける。
北はしばらく考え込むような表情で、顎に手をあてて黙っていた。
そんな風に考えている人を決して急かしてはいけないとわかっていたから、僕は聞きたくなる衝動をこらえて北の返答を待った。
…長い長い時間が経ったように思えた。
北はゆっくりとその顔を上げた。
少し乾燥しているらしい唇をゆっくりと開いた。
「………わか、った…」
小さな声で、ぽつりと声が流れた。
「……本当?」
思わずそう聞くと、目の前の北はこくりと子供のようにうなずいた。
「…やった!!」
僕は思わずガッツポーズを決めてしまった。
何人かの人にはちらりと見られてしまったけれど、この嬉しさには代えられないから仕方がない。
「そ…そんなに嬉しいか…?」
「そりゃあそうでしょ!!だって北が…北が僕に、そっちの国来ても良いなんて言うの初めてだし…!」
僕は興奮気味にそう言った。
北は困ったようにはにかみ、片腕を組んだ。
その何気ない行動ですら様になってしまうのだから、少し怖かった。
北は不安そうな表情で首を傾けた。
「…でも、本当に命の保証はできないぞ。いつ銃殺されるかなんて俺にもわかったもんじゃない」
「それでも良い。君の国に行けるなら、命くらい」
「さすがに命は賭けるなよ…」
あきれたような北の声のあと、数秒間僕らの間には沈黙が流れた。
そして━━━…
「…じゃあ、もう帰るな」
北は、そう言った。
…もうこの辺りで良いだろう。
ちょうど話の区切れも付いたことだし、そろそろ切符を買っておかないと平壌へと帰るための列車に乗る時間に間に合わない。
少しだけ韓国が名残惜しそうな雰囲気を出した。
「…そっか、もう帰らなきゃか」
「嗚呼。列車の時間があるからな」
「そっかぁ…ならしょうがないかな」
韓国は微笑んだ。
こういう時、誤魔化しの微笑みを自然に浮かべられるのが韓国の特技。
悲しくても、こいつは泣くほどのことじゃないと感じればすぐに笑顔を浮かべて流そうとするのだ。
たとえこのことを口に出して指摘したとしても、韓国のこの特技というか…癖は中々治らないことは俺も重々承知している。
だから、見なかったふりをして韓国の手を握った。韓国は俺の手を握り返した。
「今日はありがとう、韓国。色々あったりはしたが、楽しかったぞ」
「楽しんでくれたなら良かった。…じゃ、また次回は…一泊二日だっけ?」
「…ぅ、一応空けられるように調整はしておく…」
「ならいいや、僕も一泊二日の予定で色々プラン立てとかないと!」
うきうきとした様子で韓国は満面の笑みを浮かべた。今度は偽物じゃない、本物の笑顔。
それを見れただけで、今日は満足だ。
「韓国。もうここでいいぞ」
「ううん、北がホーム入るまで見送りたいんだよ」
「そうか」
いくつかの短い単語での会話が飛び交い、俺たちはさよならを言うこともなく自然と離れた。
韓国の手を握っていた手が今は外の冷気にさらされてとても冷たい。
けれど何とか慣れない券売機で切符を買ってから振り返ると、駅の外には白い息を吐きながら笑顔で立っている韓国の姿があった。
韓国は笑顔だった。
切符を通して改札をくぐってからも、韓国は変わらずにそこにいた。
「…ほんとに最後まで見送る気か、彼奴は」
ほんの少しの微笑みがふと零れた。
最後に手を振ると、韓国もぶんぶんと大きく手を振る。
俺たちの間はそれだけで十分だった。
別れに、『さよなら』の四文字は要らない。
口先ではもう会えないかもしれない…なんて言っていても。
また会えると、互いに確信しているから。
北は行ってしまった。
改札をくぐり、僕に手を振ってから人ごみの中へと消えていった。
何とも言えない、喪失感。
だけど、これは朝鮮分断の時のような喪失感じゃない。
あのときは、本当にもう二度と会えないと思った。
でも、今はもう自由に会える。
(…次北が来るの、楽しみだなぁ…)
夜空に瞬くふたご座の星を見あげて、未来に思いをはせるのだった。
Fin.
(ここからは後日譚。
中国さんと北朝鮮の絡みがありますので、地雷の方は閲覧をご遠慮いただくと幸いです)
電車を乗り継いだりして、約4時間。
ようやく俺の国の首都、平壌へと着いた。時間はもう深夜の12時だった。
自分の家へと入ると見覚えのある靴が一足綺麗に並べられて玄関へと置かれている。
(これはまた…)
一瞬でその靴の持ち主を察し、リビングの扉を開けた。
想像通り、そこには一人椅子に座る人物がいた。
「おかえり、北」
「…ただいま、」
「中国さん」
赤色のチャイナ服がやけに目を引く。エプロンをつけているところを見ると、おそらく何か食事でも作っていたのだろう。
一体どういう原理で浮いているのかと物理学的な問題を投げかけたくなる星を頭もとに浮かべ、中国さんは笑顔で座っていた。
「韓国旅行はどうだったアルか」
「…それなりに、楽しめましたよ」
「そうアルか。…その顔の怪我は?」
「少し転んだだけです」
「あちゃ…それはご愁傷様アルな。消毒はしたか?」
「ちゃんとしてもらいましたよ」
「なら良いアル。
膿んだりしたら大変アルからな、しっかり治すヨロシ」
まるで親のように振る舞う中国さん。
けれど『親のよう』という表現はあながち間違っていない。
この人はあの人が崩壊した後、身寄りのなくなったまだ幼い俺を引き取って育ててくれたから。
「一応いろいろ作っておいたアル。お腹空いてるアルか?」
「あ、はい…空いてます」
「よしよし、じゃあいっぱい入れておくからしっかり食うヨロシ」
よっこいせと中国さんが立ち上がり、キッチンのほうへと歩いていく。
ちらりと見えたキッチンには中華鍋があったので、今日はおそらく炒飯か天津飯。俺の好物。
ご機嫌な横顔で湯気の立つ炒飯が皿へと盛られていく。
その姿をまじまじと見ていると、いつのまにか中国さんもこちらを見ていた。
彼は眉を下げて笑顔を作った。
「…やっぱり、いつまでも不思議アルか。
こうして食事が用意されるっていうのは」
「そうですね。
…あの人のところに居たときは、ほとんど食事とか用意されませんでしたし」
「やっぱりあいつ崩壊する前に一発ぶん殴っておいたほうが良かったネ…」
渋い表情でスープやらも用意する中国さんの姿を見ていると、話の流れからも少し昔のことを思い出す。
『Будь сильным, Северная Корея!!
Ты не можешь жить в этом мире!!』
……何度も何度も言われた、ロシア語のその言葉。
首元に触れると、皮膚が少しばかり凹んでいるところに指が引っかかる。
鎌と槌の焼き印を入れられた首筋。
あの人が崩壊しても尚、俺のことを縛り続ける烙印だ。
ふと物思いにふけっていると、中国さんが俺の肩をたたいた。
「大丈夫アルか、北。準備できたアルよ」
「あ…すみません、考え事してました」
「そのくらい別に大丈夫アル。料理が冷めてしまうとよろしくないけどナ」
机の上に置かれている皿は、二人分。
「まさか中国さんも食べてないんですか」
「オマエを待ってたアル。いらないって言われたら一人で食べる予定だったアルが」
「なんで待ってたんですか…今夜の12時ですよ」
「だって、一人で食う飯ほど不味いものはないアルよ?」
中国さんはさも当たり前かのようにあっけらかんと言った。
「家に帰ってきて、誰もいないご飯を食べるのはとても寂しいことアル。
勿論、オマエは一人暮らしだからしょうがないことではあるけども…今日みたいな楽しい日を過ごしてきた後に、そうして孤独になるっていうのは色々嫌アルからな。我の体験談的にも断言できるアル」
「………」
中国さんは微笑んでいた。
この人は俺以上に苦労してきた国の一人だ。俺に同じような道をたどってほしくない一心なんだろう。
「…ほれ、料理が冷めるアル。早く食べるヨロシ」
「あ、はい…頂きます」
レンゲでチャーハンをすくって口に含むと、いつも通りの美味しい中華料理の味。
本場の炒飯は塩だけで仕上げるらしく、野菜の甘みとパラパラとしたご飯がベストマッチ。
この味が好きで、昔まだ小さかった俺は中国さんに『今日はチャーハンが良い!!』とよく強請ったものだ。
「味は大丈夫アルか?」
「はい。美味しいです」
「じゃあ良かったアル」
二言三言、短い会話を交わしてから沈黙がまた流れる。
食器の鳴る音だけが響いていた。
「…そういえば、次回また会う予定はあるのか?」
中国さんが不意に話を切り出した。
その質問に俺はうなずいた。
「次回は、また俺の仕事が落ち着いてから…一泊二日の予定です」
「へぇ、一泊二日…またそれは長く行くアルね」
「色々韓国に紹介したいって言われたところがありましたから」
「成程なぁ…」
中国さんも同じようにチャーハンをレンゲで口へと運ぶ。
あんなにあったチャーハンが美味しすぎて一瞬で半分ほど消えた。ソウルから平壌までの4時間の空腹は大きいことを改めて身に染みる。
中国さんは逆にレンゲを止めて、ぽつりとつぶやいた。
「……我としては、お前ら二人が政治とか戦争とか…そういうの関係なく『韓国』と『北朝鮮』という存在が仲良かったらそれで良い。
表面上は我と韓国は敵同士だけども、それでもやっぱりオマエたちの幸せを祈るばっかりネ。
昔からずっと、面倒を見てきた国からすれば」
そうつぶやいた中国さんの言葉に、俺は何も言えなかった。
「谢谢你的饭菜。
美味しかったです」
「不,不客气。
お腹いっぱいになったアルか」
「はい、すごく膨れました」
満足そうに中国さんは笑った。
「…じゃ、我は色々片付けしてから帰るアル。風呂入ってきたらどうアルか?」
「そう…ですね、じゃあお風呂に入ってきます」
中国さんに促され、俺はリビングを出た。
電気のついてない廊下を歩き、自室へと入ったところで深いため息が出た。
じくじくと未だ痛む、首筋の烙印。
早いところ消えてほしいものだ。
部屋の扉を閉め、ドアにもたれかかってしまうとそのままずるずると座り込んでしまった。
「……韓国」
兄弟の名が意識せず零れ落ちる。
「………ごめんな」
一言、ぽつりとその言葉が続いた。
俺は首筋にこの模様がある限り、韓国とは決して一緒に歩んでいけない。
“ソ連”によって占領され、あの人の方針で発展させてきた国とアメリカの方針で国を発展させてきた国とではそもそもの立場が違う。
俺は、韓国と一緒に居ちゃいけない存在。そういうことは、もうわかっているはずなのに。
あの笑顔を見ると、どうしてもいつまでも一緒に居たくなるんだ。
「……会いたい」
さっき会ったばかりなのにもう会いたい。一瞬たりとも離れていたくない。
あの北緯38度線を越えて、あいつにどこまでも会いに行きたくなる。
そんなことを思ってぽろりと涙が頬を伝い落ちる。
その時、不意にポケットに入れていた携帯が震えた。
取り出すと液晶が光り、メッセージの受信を知らせる。
震える手でそれを開くと、韓国からのメッセージだった。
『북, 이미 집에 왔니?
이제부터 자러갈 준비를 하고 있습니다.
오늘은 재미있었습니다!
또한 다음에 만날 수 있기를 기대합니다!』
韓国語のメッセージ。
短文で内容が短くまとまっているこのメールは、韓国の送るメールの特徴だった。
それを見た途端、ぐ、と携帯を持つ手に力がこもる。
本当なら俺たちは、メールで会話せずとも隣でたわいもない会話を出来る関係の筈なのに。
外の人間が勝手に決めた占領政策の所為でそんなこともできない、自分たちの間にできた溝がどこまでももどかしかった。
「…」
どこか力のこもらない体を動かして立ち上がる。
自室のカーテンを開け、平壌を見下ろすことのできるベランダへと出た。
あちら側と違ってこちらは灯火管制があるから、ほとんど真っ暗な北朝鮮の街。
(…いつか)
(いつか、あいつの隣に立てるようになりたい)
無意識に手に力が入って、そんな思考が頭を巡った。
(あんな風に隠密で会いに行くような関係じゃなくて、いつか本当に、堂々とあいつのもとを訪ねられるような、そんな国になりたい)
そう思うと同時に、あの人の姿も同時に現れる。
昔からずっと怖かったあの人に、『出来るわけがない』と言われているような気がした。
社会主義の国と資本主義の国。到底分かり合えるはずがない。そんなことわかっている。
けど、そんな理屈どうだっていい。
ただ兄弟と幸せに暮らしていきたい。
それが、俺の今望むすべての願いだから。
「……ぁ、ふたご座だ…」
ふと空を見上げれば、ふたご座のカストルとポルックスが煌々と空に輝いていた。
灯がない分韓国よりもずっとずっとたくさん見える星空。
その中でも一際目を引くふたご座。
願わくば、あんな風に隣に居たい。もっといえば、この先ずっと、永遠に。
ちかりと瞬いた流れ星に、俺はそう祈った。
Fin.
お久しぶりです天原です。
色々言い訳させてください((
まずですね。
11月。予定が立て込みすぎてました。
12月。こりゃまた予定が立て込みまくってました。
プラスで冬休み直前期。インフルにかかり熱39度出してダウン。
こんな感じでびっくりするくらい一瞬で時が吹っ飛んでいきました。トキノナガレッテコワイ。
亜衣さんの誕生日をお祝いするために書き始めたこの小説だったのですが、気が付けば2か月が経とうとしておりました。
その事実に気づいた私天原はインフルが治ってすぐの病み上がりの体に鞭を打ち後日譚のチャーハン食べてるシーンで止まっていたこの小説の続きを急いで執筆。おかげで文章力がけた違いに下がっておりますご了承ください。
そして、今このあとがきを書くに至っておる始末です…まじで亜衣さん、お待たせしすぎて申し訳ありません…
というわけでなんとかインフルも完治したことですので、小説をたくさん執筆!!!!!
…したいところだったんですが。
皆さんご存じの通り私中学三年生で受験生でして…冬休みもあまり時間が取れる気はしておりません…
なんで始業式の三日後に実力テストあるんだよふざけんなよコノヤロー(早口)
てなわけで死ぬほど時間がない今日この頃ですがなんとか時間は捻りだして小説の執筆を行いたいと思います…
色々書きたいテーマはあるんですがなかなか筆が進まないのもあるのでゆっくりのんびり書いていきたいと思います。
とりあえず今の目標はソ連さんとロシアさんのクリスマス物語。12月26日も近いということで頑張りたい。
ではこのあたりで筆をおかせていただきます。
改めまして亜衣さん、お誕生日おめでとうございました!!
そして皆様、良いクリスマスを!!
2024.12.24 天原彗
コメント
8件
神作ありがとうございます!!(( 約2万文字は凄すぎるぅ…、(私は途中でやめて放置してます() 冬″休み″なんだから休ませろよコノヤローって感じですよね。(
私は中学一年ですが受験だからと言って無理しないで体調気をつけて受験勉強を頑張ってくださいね!いつも神作ありがとうございます!(主さんと年近くね?
泣けるよぉお! もう1年2年余裕で待てますので! てか……同い年だとッ!?(初めて知った人)受験頑張ろうです!