コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
XII I話の続きです。
進展させるの頑張ります!今回も短いと思います。
でも、ほら、長いと読むの疲れちゃったりするじゃ無いですか……。
献花の為の白百合の束を持って、俺達は再び、廃れた工事現場まで戻ってきた。
さっき、助けを求めていた呪霊の居た、錆びて赤茶色になった足場に、白百合の束を置いた。百合の白が、陽の光を反射して、白く光を纏っている。こんなにも、此処は荒れ果てているのに、余りにも対極的で、対照的だ。
人が死んでいる場所だ。薄れているとはいえ、嫌な臭いがしていた。だが、今は、白百合の、甘くて華やかだが、清楚な香りが、辺りを包容している。未だ、左胸辺りの苦しさは有るが、何だか曇っていた気分が、白百合を見ていると、少し、マシになった様な気がする。
(ヘンテコ前髪野郎)「黙祷をしようか。」
「あ。」
「黙祷も知らなかったりするかい?」
「そんくらい知ってるわ。お前は俺を何だと思ってんの。」
(ヘンテコ前髪野郎)「献花すら知らなかった癖によく言うよ。」
「るっせ。」
「あー…。でも、黙祷って言っても、目ェ瞑ってる間、何を思っとけば良い?」
黙祷をする間、何を思っていれば良いのか分からず、俺はヘンテコ前髪野郎に聞いた。すると、半目で此方を見てくる。
「なんだよ。」
(ヘンテコ前髪野郎)「はあ”ぁ……。」
「なんだよッ。」
(ヘンテコ前髪野郎)「君は本当に無知だね…。」
「あ?しゃーねェだろ。黙祷とかやった事無いんだから。」
(ヘンテコ前髪野郎)「やった事無いのが先ず驚きなんだよ…。」
「あーもう、うるせェ。分かんねェから教えろってんだよ。」
(ヘンテコ前髪野郎)「だから…。人に物を頼む時の態度じゃないんだよ。」
「はぁ…。黙祷してる時は、亡くなった人に対して、『無事に天国に行けましたか?』とか、『成仏して下さいね。』とか、その人を思う言葉を、その人に伝わる様に、話しかける様に思えば良い。」
「成る程ね。分かった。」
瞼を閉じて、さっきヘンテコ前髪野郎が言っていた事を参考に、心の中で、此処で亡くなった人に語りかける。
無事に天国に行けましたか。て言うか、天国って有るの?有るのなら、どんな感じ?漫画とかゲーム機とか、食べる物とか有る?其れに、三途の川ってガチで有るの?三途の川って、水綺麗だった?
あ、それから、死んだら、頭に三角の白くて変なのって付いてる?
(ヘンテコ前髪野郎)「五条君。黙祷は終わりだよ。」
「あ、もう終わった?」
(ヘンテコ前髪野郎)「嗚呼。結構長い間黙祷してたね。」
「あー。聞きたい事が山程あってさ。」
(ヘンテコ前髪野郎)「へぇ。」
「天国って、もし有るのなら、どんな感じの所何だろうとか。」
(ヘンテコ前髪野郎)「え?」
「三途の川の事とか。」
(ヘンテコ前髪野郎)「ん?」
「死んだら、頭に白くて三角の奴って付けるのか、とか。」
(ヘンテコ前髪野郎)「……黙祷って、そう言う事じゃないんだよ…。」
「え?」
(ヘンテコ前髪野郎)「…ま、良いや…。高専に戻ろうか…。」
「なんだよ。」
ヘンテコ前髪野郎の、微妙な態度が疑問だが、俺達は、工事現場を後にして、高専へ戻った。
無限を使って飛んで帰ろうとしたら、ヘンテコ前髪野郎に、「非術式に見られたら如何するんだ。」と言われ、止められた。高専までのうんざりする距離を、徒歩で帰る事になったのだった。
「はぁ”…。やっとだ……やっと高専…。」
(ヘンテコ前髪野郎)「此れくらいでへばっているのかい?」
「るせェ……。あんなうんざりする距離歩いたら…体力的には大丈夫だけど、気分的に疲れるんだよ……ッ…。」
高専は山の中にあるのだ。上を見る度、歩いても歩いても、中々距離の縮まらない高専が前方にずっと有れば、何時迄、此れが続くのかと、疲れもするだろう。逆に、疲れていないコイツが可怪しいのだ。
「はあ”…っ…。つっかれた…。」
教室に入るなり、俺は、椅子に体を沈める。
(茶髪の奴)「お疲れ〜。何処行ってたの?」
(ヘンテコ前髪野郎)「献花をしに行ったんだよ。」
(茶髪の奴)「へぇ〜。献花ねぇ…。」
(ヘンテコ前髪野郎)「ん?」
(茶髪の奴)「いや、夏油は分かるんだけどさ。五条が献花しに行くイメージが無い。」
(ヘンテコ前髪野郎)「あ、其れは分かる。献花しに行くか聞いた時、てっきり、却下されるかと思ってた。」
(茶髪の奴)「あ〜分かる。想像付く。」
コイツ等の中の、俺のイメージは一体、如何なってるんだ。
「お前等さぁ…。めっちゃ失礼な事、言うじゃん。」
(茶髪・前髪)「「其れ、君が言う?」」
「腹立つ所でハモんな。」
「大体さぁ。お前だって、見た目ガラ悪いし、不良みたいだし、前髪は変だし。」
「其れで一人称が〝私〟ってめっちゃ違和感有るんだけど。」
(ヘンテコ前髪野郎)「前髪は関係無いだろ。」
「いや、関係有るだろ。」
(ヘンテコ前髪野郎)「無いから。」
「有るって。」
(茶髪の奴)「お前等仲良いね〜。(笑)」
(前髪・五条)「「何処が。」」
(茶髪の奴)「其処が(笑)」
何処を、如何見たら、コイツと俺が仲良しに見えるのだろうか。口煩くて面倒臭いし、腹立つし。一緒に、任務をして行かなければいけないと聞いた時に、既に、うんざりしていた程だ。仲が良い奴だったら、うんざりなんてしない筈だ。
「コイツと俺が仲良しとか、勘弁して。」
(ヘンテコ前髪野郎)「こっちのセリフだよ。」
(茶髪の奴)「あ、そーだ。」
(ヘンテコ前髪野郎)「ん?」
「ん。」
(茶髪の奴)「五条ってさ。何時も、なぁとか、おいとか言って話しかけて来るけどさ。」
「名前で呼んでくんない?」
「え、名前で?」
(茶髪の奴)「そう、名前で。」
「まさか、覚えてないの?自己紹介したんだけどなぁ。」
「そーだっけ。」
(ヘンテコ前髪野郎)「あー、そっか、君。自己紹介聞いてなかったんだっけ。」
(茶髪の奴)「私の名前は硝子だよ。家入 硝子。」
「あー…なーんか言ってた様な…。」
(硝子)「夏油の事も、名前で呼べば?」
「えー……名前なんだっけ?」
(ヘンテコ前髪野郎)「何回言わせる気だい…?」
「夏油 傑だよ。」
「あー!何か言ってた気がする。」
「傑ね。オッケー。」
(ヘンテコ前髪野郎)「いきなり呼び捨てで、下の名前呼び行くのか。」
「それなら私も、君の事は悟って呼ぶからね。」
「お、おー…。」
下の名前で呼び合う様な関係の人間は、今まで俺には居なかった。其の所為か、落ち着かない気分だ。でも、何故か弾んでいる自分が居る。苦しかった左胸は、何時の間にか、熱を帯びていた。
(傑)「そう言えばさ、悟はもう運動服は買って有るのかい?」
「明日から、かなり授業も本格的になるって聞いたよ。」
今日は、入学から二日目になり、慌ただしさも、次第に減って来ていた。時間に余裕が出来て来たらしく、明日から、本格的に授業時間を増やして行くみたいだ。
体術の授業が始まると言う事で、ジャージ等の、動きやすい服を買わなければいけない。だが、如何言う店に行けば良いのか、俺は知らなかった。取り敢えず、携帯で調べて、出て来た店に、今日の放課後に行く事にした。
(夜蛾先生)「今日は、此れで終わりとする。」
「規律。」
「礼。」
「それじゃあ、明日に備えてゆっくり休む様に。」
担任は、帰りの挨拶を済ませると、さっさと教室から出て行った。
(傑)「夜蛾先生、さようなら。」
(硝子)「さようなら〜。」
「やっと終わった……。じゃ、俺これから用事有るから。」
(傑)「へぇ。そうなのかい?」
「うん。」
(硝子)「じゃあさ。用事終わったら連絡して。」
「え、何で。」
「と言うか、連絡先知らない。」
(傑)「まだ、連絡先交換してなかったね。今交換しよっか。」
(硝子)「だね。」
「え?あ、うん。」
連絡先を交換した事なんて、今まで無かった。そもそも、携帯ですら、最近初めて買ったのだ。だからか、トクトクと、心臓が刻む一定のリズムが、少し速くなって来ている。
(硝子)「じゃ、終わったら連絡よろしく。」
「う、うん。」
(傑)「じゃあまた後で。」
手を振りながら、二人も教室から出て行った。
「何だ此れ…。」
トクトクと言っている左胸に手を当てて、初めて感じる弾んだ気持ちに、俺は戸惑いを感じていた。
「早く運動用の服を買いに行くか…。」
体術の為の服を買いに、俺も教室を出た。
朝は、白い柔らかな明るさだった校庭は、今は、温かそうな柿色に染まっている。淡い青色だった空も、赤味掛かっていた。この時間帯は、不思議な安堵感がある。
「おっと。早く買いに行かないと。」
夕日をのんびりと眺めている場合では無い。さっき検索して出て来た、スポーツショップへと、地図を見ながら向かった。