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「……そうね、小谷の話を聞く限り、私もその意見には納得がいくわ。ねぇ葉月、その関根さんって人、本当に信頼出来る人なの? 優しい先輩を疑いたくない気持ちは分かるけど、葉月に気がある以上、ストーカーにならない可能性は否定出来ないと思うよ?」

「…………」


小谷くんの挙げた根拠は、確かに筋が通っている。


それを聞いてしまうと、絶対に無いとは言い切れない。


「……もし、ストーカーが関根さんだとしたら、どうすればいいのかな……」

「お前、アイツにストーカーの事は話したの?」

「ううん、話してない。シフトが増えたのも学業優先する為って話したよ」

「引っ越した事は?」

「特に話してない……はずだけど……」

「まあとりあえず、アイツは疑っておいた方がいい。それと、俺の事は友達じゃなくて彼氏って話しておいてよ」

「えぇ!?」

「アイツがストーカーじゃ無かったとしても、どの道疑ってると思うよ。二人で祭り行くくらいの仲なんだって」

「で、でも……」

「最近は特に何もして来ないけど、いつまでも大人しくなんてしてないと思う。だったらそろそろこっちから仕掛けるべきだって思ってるから良いんだ。アンタに彼氏がいるって聞いた後、また嫌がらせが始まれば……タイミング的にもほぼその男がストーカーの犯人で決まりだろ?」

「…………」


関根さんがストーカーだなんてにわかに信じ難いけれど、小谷くんの言う通り、彼が私の彼氏だと話をしたタイミングで再び何かをしてくるとしたら、そうなのだろう。


それに、話をしても何も起こらなければ関根さんは違うと証明出来る。


後者だと信じながら、私は小谷くんの提案に頷いた。



それから数日後、関根さんと勤務が一緒になると早速機会は訪れた。


休憩時間が被った事で事務所に丁度二人きりになる。


(……小谷くんがあんな事言うから、変に構えちゃうよ……)


もしかしたら関根さんがストーカーの犯人かもしれないと考えると少し怖くなってしまうし、変に萎縮してしまう。


けれど、ここではっきりさせれば良いだけだと私は自分に言い聞かせながら世間話を混じえて機会を窺っていく。


「そう言えば葉月ちゃん、来週末は連休だったよね?」

「はい。久しぶりなんですよね、連休」

「珍しいよね、本当。何か予定があるのかな?」

「はい、その……ちょっと旅行に」


実はこの連休はこうして話のきっかけになるようにわざわざ取ったもので、旅行というのは嘘。


小谷くん曰く、普段滅多に休みの希望を出さない私がわざわざ希望すれば気になって聞いてくるだろうと読んでいた。


見事その読みは当たり、理由を聞いてくる関根さん。


「もしかして、この前祭りで一緒だった人と……?」

「……実は、そう……なんです。この前は恥ずかしくて隠してたんですけど……付き合ってるんです……彼と」


そしてその『旅行』を彼氏である小谷くんと行く為だと嘘を教える事に成功したのだ。


「やっぱり、そうなんだ? 葉月ちゃん可愛いもんね。彼氏が羨ましいよ」

「そ、そんな事……ないです……」


小谷くんが彼氏だと話した後も特に変わらぬ様子の関根さん。


(どうか、小谷くんの予想が外れていますように……)


そう願いつつ、私は彼と話を続けていた。

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