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◇◇◇◇◇
「んん……ッ」
今までの奪うような激しい唇とは違う。
快楽を引き出すような舌とも違う。
ただ大切に、温かい愛情を注がれるキスが、右京の腰を溶かしていく。
思わず蜂谷のたくましい腕にしがみ付くと、彼は優しく右京の身体を包み込んだ。
互いのTシャツを介しても、蜂谷の体温と、鼓動と、硬さと、逞しさを感じる。
――そうか。
やっとわかった。
こいつの熱を感じるたび、欲望の籠った視線を受けるたび、湿気の帯びた吐息が掛かるたび、身体が反応して、欲しくなった。
あんなに恋焦がれていた永月には感じなかったこの欲望の正体が、今やっとわかった。
俺はこいつを――――。
こいつとの未来のために、自分を守りたいと思えるほどに―――。
ゆっくりとベッドに押し倒される。
その緩い衝撃で腰が軽く痛む。
―――痛い。
彼が歯を立てた唇が僅かに痛む。
―――痛い。
彼の肩にしがみ付いた右手から、引きつるような痛みが走る。
―――痛い……!
右京は1年半ぶりに感じる痛みに陶酔するかのように、ゆっくりと目を閉じた。
◇◇◇◇
―――これって……。
蜂谷はプルプルと震える右京の腰を見ながら、小さく首を捻った。
―――本当に痛いわけじゃないんだよな……?
右京に入れた指を3本に増やし、奥まで突っ込むと、身体に力が入り腰が震えてた。
瞳に涙が溜まり、歯を立てた唇に僅かに血が滲んでいる。
前を擦るようにして指を抜き差しすると、細い顎が上がり、首元に浮かんだ汗が光った。
この前は―――。
エアコンが切れてて蒸し風呂のような部屋でも、ほとんど汗をかいていなかったのに。
「―――大丈夫か?」
思わず聞くと、右京は手の甲で両目を交互に拭った。
「―――いいから早く」
言った足先が、まだ短パンを履いている蜂谷の股間を撫でる。
そしてソレが硬くなっていることを確かめると、親指をTシャツの裾から入れ込んでパンツのゴムに引っ掛ける。
「……おいおい。いつからそんな痴女みたいなことができるようになったんだよ」
呆れながら顔を近づけると、右京は自分から蜂谷の首に手を巻き付け、唇を近づけてきた。
「!」
顎を逸らせ、必死に唇に吸い付いてくる。
―――きっと。
これが最初で最後だ。
右京が自分を心から慕い、自分から唇を求めてくるなんて、きっとこれが―――。
「――――んんッ」
小さい頭を掴むと、噛みつくように右京の唇を奪い、飲み込むように舌を吸った。
「……ああッ…はあ……っ!」
だらしない涎と共に、右京の声が漏れる。
入れた指をどんどん奥に伸ばしていく。
「ああ……はああ…!。ふ……深い……!」
痛みを感じないくせに一丁前に恐怖は覚えるのか、右京が悲鳴のような掠れた声を上げる。
もっと。
もっとだ………。
もっと、右京の中に入りたい。
こいつの身体の熱と、
こいつがくれる感情と、
こいつへの想いを―――。
すべて、この1回に込める……!
蜂谷は指を引き抜き、彼の脇に手を突くと、正面から右京を見下ろした。
「右京、俺……。お前のことが……。好きだよ……」
「――――!」
右京の大きな目が見開かれる。
そのグレーの瞳が蜂谷を映す。
―――驚いた顔しやがって。
そんなに意外か?
好きじゃなかったら―――。
文化祭で2階の窓に登ってまでお前のことを助けたりしない。
おぶって病院に駆け込んだりしない。
多川に酒飲まされてもお前のことを黙っていたり、
書店を回ってまで永月の本性を暴いたり、
抱きしめたり、
キスしたり、
いじめたり、
試したり、
こんなにお前に―――
執着するわけないだろ……。
蜂谷は自分の短パンをパンツごとずらすと、右京の入り口に自分のソレを宛がい、一気に奥まで突き入れた。
◇◇◇◇
視界が一瞬、チカッと赤色に光った。
それくらいの強い痛みを感じた。
指では到底届かないそのさらに奥に、蜂谷の硬いモノが、めり込んでくる。
「……う……。は……っ!」
息ができない。
身体の中心が、貫かれてしまいそうだ。
「ふ……。きっつ……」
蜂谷が呟く。
―――誰と比べてきついんだ、馬鹿!
言ってやりたいが言葉を発する余裕はない。
下半身に太い針を刺され、まるで標本にされた蝶のように動けない。
もし今、動いたら……確実に裂ける気がする……。
「―――動いていい?」
こちらの気も知らないで、蜂谷が恐ろしいことを聞いてきた。
―――ダメだ!ダメに決まってんだろ……!
叫びたいのに声が出ない。
「……なあ、右京……」
蜂谷が多量に息を含んだ声で囁く。
「……いい?」
「……………」
そんな辛そうな声を出されたらダメだなんて言えない。
「ゆ……ゆっくり、な……?」
やっとのことで言うと、蜂谷はふっと笑って、
「了解」
右京の頬にキスをした。
―――こいつ……。
「あ……!」
睨む暇もなく、蜂谷が腰を動かし始める。
入り口が、死ぬほど痛い。
ジェルかローションかはよくわからないが、蜂谷が十分に潤わせてくれたそこは、それでも腰の動きに合わせてビリビリと電気のような痛みが走った。
―――痛い。
右京は薄目を開けて蜂谷を見上げた。
―――セックスってこんなに痛いものだったのか。
眉間に皺を寄せて目を瞑っていた蜂谷の目も、細く開いて右京を映す。
―――でも……。
優しく唇が落とされる。
――耐えられなくも……ない……。
「……もっと奥まで、いい?」
蜂谷が裏腿を押さえつけて、右京の腰を少し上げた。
「奥までって―――ッ!」
「……もっと、お前の中に入らせて」
その言葉に反応する前に、
「―――あぁッ!!」
蜂谷はさらに深く強く、右京の奥に入ってきた。
痛くてたまらなかったそこはいつしか感覚が鈍くなり、ほんのりと熱を感じる程度になった。
しかし自分の中を抉るように暴れるその先端が、腹の奥の何かを刺激し、波打つような快感が上ってくる。
「あ…、は、アアッ、ああっ!!あああ!!」
口から自分のものと思えない獣のような声が出る。
どんなに自分が喘いでも、叫んでも、おそらく隆之介は来ないだろう。
右京が発した言葉に、酷く傷ついたような顔をした、15歳の少年の心を想う。
あんな態度を取りながらも、きっと根はやさしい奴なのだろう。
―――こいつと、同じだ……。
体位を変えるたびに、右京を見つめ、その反応を確かめるようにゆっくり動く蜂谷の柔らかい視線に、気づかないわけはなかった。
確かに彼の心を感じる。
――きっとこいつは、ここから抜け出せる。
自分の力で。
自分の目で将来を見据え、
自分の足で歩きだすことができる。
今、ここから、彼の人生が始まるんだ。
そして―――。
自分の人生も―――。
ジンジンと響くような快感の波が上がってくる。
入り口の痛みも、中の違和感も、もう感じない。
今ここにあるのは、奥にある何か熱いところを突かれる快感だけだ。
それがどんどん強くなる。
揺さぶられる下半身全体に熱が広がっていく。
「……と、溶ける……!」
思わず呟くと、その反応を楽しんでいるかのように微笑んでいた蜂谷がさらに吹き出した。
「溶かしてやるよ」
言いながら上下に角度をつけて、さらに刺激を加えてくる蜂谷を見つめる。
見つめたいのだが、いくら瞬きをしても、なぜか滲む。なぜか歪む。
「何泣いてんだ……」
蜂谷が笑いながら両の親指で涙を拭いてくれる。
その間も、下半身への刺激は止むことなく、右京を容赦なく快感の高みに導いていく。
「……蜂谷……。俺……」
「……イキたい?」
蜂谷が聞きながら、右京の痛いほどに反り立ったまま、ブンブンと振られているそれを握った。
「……あっ……」
「じゃあ、一緒にイくか」
言いながらソレを擦り上げる。
「あ、ああ…!アッ!ああっ」
右京は蜂谷に抱きついた。
彼の匂いがする。
甘いような、それでもちゃんと、男の匂いが―――。
「蜂谷……!」
「あ?」
「俺、お前のこと、いつのまにか、こんなに……!」
「……右京……」
「好きだ……!蜂谷……!」
視界が一気に白くなった。
後頭部から落ちていく。
ベッドを突き抜けて、
床を突き抜けて、
1階を突き抜けて、
下へ。
さらに下へ――――。
―――ホント、馬鹿なやつ……。
意識を失う瞬間、誰かの声が聞こえた気がした。