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魔の森にアンデッド軍団?
見えているだけでもびっしりいるな。骨軍団しか見えないとはいえ、しばらく来ないうちに魔物の勢力が随分と変わった気が。俺自身中立都市周辺に来ることも少なくなっていた。だけど、気づかない間に魔物そのものも強くなっていたみたいだ。
「ミディヌ。どうす――」
――っという間に、ミディヌが敵に向かって突っ込む。
不死《アンデット》には拳か、弱点となる魔法属性が有利。それにもかかわらず、ミディヌは二本の剣を交差させながら斬り込んでいる。
「うううーーうりゃぁっ!!」
勢いのあるミディヌは双剣使い。両腕に備わるその剣は自分の意思で自在に使いこなせる。致死的ダメージを与えられずともビシッ。としたひび割れを生じさせ、敵の動きを鈍化。暗闇に紛れて向かって来るのを遅らせている。
「ちぃっ、双剣のミディヌにばかりいいところを譲ってたまるかよ!!」
暗くて足下がおぼつかない中、ファルハンも負けじと腕を上げたまま突っ込む。直後、骨が砕けヒビ割れる音が周辺に響く。どちらも口は悪いが、上手く連携が取れている感じに見える。
「ちっ、ダメージは通るけど骨相手に繰り返したところで無駄だな。おい、お前! 拳で破砕出来ねえのかよ?」
「無茶言ってくれるぜ。一撃の強さはあってもおれの攻撃は一点集中タイプだ。双剣のあんたこそ、いつまで経っても骨を粉々に出来ねえだろうが!」
言い争いしながらも何とか攻撃だけは出来ている感じか。しかし確実に命中するでもなく、その動きが止まることは無い。
「ああああーー、アンデットは相性が最悪すぎる!! ルカスにいいところを見せたいっていうのに!」
「それはこっちも同じだ。マスターに偉そうなことを言っておいてこれはあんまりってもんだ」
魔の森に入る前、マスターに相応しいかを見極めさせてもらう。ファルハンがそんなことを言っていた。よりにもよって骨相手にいいところを見せられない彼の焦りもあるわけか。
「ファルハンに対する見極めは、もういいんじゃありませんか?」
「え?」
「骨相手には火属性魔法か格闘が優位……だとしても魔の森の影響を受けた敵では倒すこともままならない。マスターが黙って見ているのは、わたくしたちの力量をはかっておいでですよね?」
そんなつもりは全く無かったんだけど……。むしろ俺が見られてるものとばかり。冴眼が単なる光る目だと思われてるのもあるのかな?
このままではジリ貧。呪符探しがメインなのに、アンデッド軍団に時間をかける意味は無いか。相手がアンデッドなら、なおさら冴眼の力を示すには丁度いい。
「ミディヌ、ファルハン! 今すぐその場から引くんだ!!」
二人は疲れを見せていなく、まだ余力はある。しかしアンデッド以外に絡まれても厄介だ。それなら即終わらせる。その方が二人にとって次につながるはず。
「……マスターのお力、見せて頂きますわ」
「イーシャ。君の方こそ、呪符が見つかったら見せてもらうよ」
「呪符さえあればこの辺りの敵など、軽くひねって差し上げますわ!」
四肢を砕かれた骨の動きは鈍く、後ろに下がる二人を追う早さは薄まっている。
「ルカスっ! やっちまいな!!」
「ハァッ、ハァ……くそっ、情けねえ。マスター、ひとおもいにやってくれ!」
熱と生命感知だけを頼りに向かって来る骨に対し、俺がする”動き”。それは向かって来るだけのアンデッド軍団を一斉に『見つめる』だけだ。
回復魔法を手でかざす”つもり”で敵の前に立ち尽くす。
「な、何やってんだ、マスター!! そんな無防備に立ち尽くすだけじゃ、何も――!」
「あれでいいんだよ、ルカスはな」
「……光るだけでは無かった――そういうことですのね」
首も動かさない立ち尽くし。俺はその姿勢で視界に映るアンデッド軍団に”治癒”効果を放った。