貴方へ
私は運命と出会った。
貴方は素晴らしく美しかった。
全て。美しかった。
私が育ったこの街に、貴方は突然引っ越してきた。
私は貴方を一目見た時分かった。
これは運命なんだと。
太陽に輝かされてる貴方の金の毛は風になびいて美しい。
私がそれに見とれていると貴方は弾けるように笑って話しかけてきてくれた。
私は貴方の美しさに見とれ、笑顔に射られた。
貴方はどう思っていたんだろう、私を見た時、私に笑って話しかけてきた時。
もう分からない。
貴方は死んだ。貴方は病気で倒れた。ひっそり家で亡くなったと聞いた。
私はご飯も喉に通らず、日課の散歩も難しい状態だった。
貴方はある日の夢に出てきた。私が悪夢にうなされてる時、貴方はその悪夢を追い払ってくれた。そして、出会った時と同じ輝く笑顔でいなくなってしまった。
貴方が私のことは忘れて、と言ってるようで、私はもっと苦しくなった。でも、貴方の分まで生きたいと思った。ずっと、ずっと、そうやって生きて過ごしてきた。
でも、私ももう死ぬ。
病気とお医者様に言われてから、1ヶ月。
自分の死ぬ時くらい分かる。
ああ、貴方も分かってたんだろうか。
だから家でひっそり死んでしまったの?
貴方は、散歩に行く度私に話しかけてくれた。
貴方が亡くなってしまう日の2日前、貴方は変わらぬ笑顔で話しかけてくれたけど、どう思っていたの?
もう分からない。
でも、貴方にもう少しでまた会えるかもしれない。
そう思ってしまってごめんなさい。
結局私は貴方のことを引きずってしまった。
貴方がせっかく夢に来てくれたのに。
ああ、死を受け入れてしまう私を許してくれますか?
こんな愚かな私でも、また会えたら、変わらぬ笑顔で笑ってくれますか?
天国に届きますように 1匹の愚かな犬より
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