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直近の『遡行』から二時間が経過し、妖術師である俺と晃弘は『京都の魔術師』を探しに行動を開始した。
目指す地点は京都の中央付近。ビルやマンションなどの建物が立ち並ぶ箇所に、景観条例に違反するほど、大きなビルがひとつ存在する。
そこが街中の監視を行う偽・魔術師の巣窟となっている場所。情報共有の要となる地点だ。
そこを、俺と晃弘で 一気に攻め落とす。
そうする事で監視塔を失った魔術師側は、分かれたSaofaのメンバーを追跡出来ず、こちらは楽に移動が出来る。
「………晃弘さん、見えました。例の監視塔です」
一見するとただの超高層ビルに見える建物。しかしその中は大勢の偽・魔術師が居る魔境。
俺と晃弘は捜索の目を避けながら建物の影に隠れ、暗闇の中で監視塔の様子を見る。
遠く離れている場所からではあるが、感じる魔力は弱く、強力な偽・魔術師があの場にいる可能性は低い。
「なら惣一郎の作戦通り、俺の『双縄猟銃』で入口を破壊。そこに妖術師が乗り込んで 、俺が遅れて合流する。いいな?」
「はい、お願いします!!」
晃弘が小声で惣一郎から伝えられた通りの動きを再確認し、『双縄猟銃』を背中の筒から取り出して構える。
晃弘が注意深く狙うは超高層ビルの一階入口付近。 ―――ではなく、その真逆。
ガチッとトリガーが力強く引かれ、 偽・魔術師が監視を続けている最上階に向かって、大砲と同等の速度と威力を持つ銃弾が放たれた。
轟音が鳴り響き、ソレはいとも容易く強化ガラスを突き破りって建物内部の障害物と接触する。
「行け、妖術師」
晃弘の合図と同時に、放たれて障害物と接触した弾丸が大きく爆ぜた。 窓ガラスは爆風で割れ、中で保管されていたであろう書類の山が外へと吹き飛ばされている。
大半のガラスが地面に落ちた瞬間を見計らい、俺は全力疾走でビルへと近付いて周りの様子を伺う。
付近に偽・魔術師の姿は見えない。好都合だ。
一階部分を支えている柱に足を乗せ、俺は物理法則を無視して超高層ビルの側面を駆け上がる。
足元に伸びる影を『黒影・深層領域』でガッチリ掴み、一歩一歩力強く踏み出す事で走れる仕組みだ。
ビルの中階層から数人の偽・魔術師が顔を出しているのが見えた。晃弘の攻撃に困惑しつつ、周囲の状況確認しようとしているのだろう。
「邪魔ァ!!」
強く振るわれた『岩融』の刃が偽・魔術師の首を綺麗に切断し、俺の身体は鮮血で染まる。 俺は止まらない。
俺の声と異変に気付いた偽・魔術師が窓から上半身を出し、手に持っている拳銃を発砲する。
偽・魔術師の中には小さな火の玉を作り出す者、大きな岩を生成している者もいる。
ビルの側面と平行に突き進む弾丸が、俺を捉える。 駆け上がる速度と弾丸が落下する速度が合さり、一瞬で俺の真正面まで近付いた。
これは回避出来ない。例え回避したとしても、同じような弾丸が無数に降り注ぎ、蜂の巣にされて終いだ。
これは、回避出来ない。この場にいるのが、ただの人間なら。
「『月封』!!」
俺が手を翳した瞬間、その先で空間が捻れて小さな孔が開く。
その孔に吸い込まれるかの様に、魔術と弾丸は軌道をズラして中心付近に集まり、ほぼ全ての攻撃が俺の真正面へと移動した。
一箇所に集まった弾丸を、影から取り出した『岩融』で全て弾いて再び走り出す。
俺の妖術を見た偽・魔術師は驚愕し、急いで拳銃のトリガーに指を掛けた。だがもう遅い。その時点で、勝敗は決まっている。
窓から出ている無数の腕を真っ二つに斬りながら、猛スピードで最上階を目指す。
恐らくここは二十七階辺りで、この超高層ビルの最上階は六十階。速度を維持しつつ、偽・魔術師の攻撃を全て回避すればものの数分で最上階 へ到達出来る。
「………ここで合図を!!」
脚を止めずに、腰に装着していた発煙筒を取り出して点火する。そのまま発煙筒を手放して地面まで自由落下させる。
次第に落下中の発煙筒の先から紅い煙が吹き出し、晃弘に向けての簡易的な狼煙が上がる。
この赤い発煙筒は『二発目求む』という意味を持ち、事前に晃弘と話し合って決めた合図だ。
そしてその合図が無事伝わった様で、再び最上階に向けて音速を越えた弾丸………というより、砲弾が撃ち込まれた。
暫くして、駆け上がる俺に向かってガラスや壁の瓦礫が降り注ぐ。俺はそれを『月封』で一箇所に集めては避け、集めては避けを繰り返す。
次第に偽・魔術師の攻撃回数が少なくなり、窓から人の顔が見えなくなった。今までの攻撃が全て無駄だと察しての行動だろう。
「………攻撃が止まった、か。最上階まではあと少しだが―――、嫌な予感がするな」
戦闘に夢中で気づかなかったが、最上階へと近付く度に、魔力の濃度が高くなっている。
地上からの魔力探知では捉えきれなかったのか、一歩踏み出せば物凄い威圧感が俺の全身を襲う。
「異様なほど魔力が濃い。まさかとは思うが、偽・魔術師の中に桁違いのヤツが潜んでいるとか無いよな……」
そのまさかは、十分に有り得る。
そもそも魔術師の情報元となる場所が存在すれば、妖術師は第一に監視塔を攻め落とそうと考える。
それを見越した上で、京都の魔術師は監視塔に何人か強い偽・魔術師を配置していてもおかしくない。
「………念の為にもう一個、合図出すしかねぇな」
ガラスの上を高速で駆け抜けながら、俺は影に『岩融』を仕舞い、腰に装備しているポーチへと手を伸ばす。
その中には『赤の発煙筒』と『青の発煙筒』、『黄の発煙筒』が入っている。
『赤の発煙筒』は、最上階に向けて二度目の狙撃。先程、晃弘に向けて合図を出した時に使用したのがコレだ。
『青の発煙筒』は、最上階の下辺りに向けて狙撃。
『黄の発煙筒』は、異常が発生した為撤退。の意味を持つ。
そして俺が今取り出したのは、『青の発煙筒』だ。 最上階より下に、強い偽・魔術師が居る可能性が高い。
故に、晃弘の『双縄猟銃』で可能性を潰す。
「………穿て」
俺が呟くよりも早く、晃弘が撃ち込んだ弾は窓ガラスを突き破り、部屋内部の天井へと着弾した。
その弾丸はさっきと同じモノ。部屋全体を埋め尽くす程の炎が内部を包み込み、激しい音を立てて爆ぜる。
「………魔力の濃さが変わらない。いや、それ以上に濃くなってる」
最上階まであと少し、妖力の減りも想定内。 この魔力の圧は想像系統偽・魔術師と出会ったとほぼ同じ、下手するとそれ以上だ。
このままただの勘違いで終わって欲しいところだが―――、
「―――まぁ、そんな訳がねぇよな」
俺の目線の先、最上階より数個下の階層。 先端が尖った何かが窓ガラスを貫通し、機械の様なモノが突然現れる。
機械全体、と言えるほどは窓から露出してないが、一目見ただけで分かる。
「………またまた厄介な奴が現れたな」
俺の台詞に合わせる様に、ソレは大きくガラスから身を乗り出し、その全体像が露になる。
パッと見はバレリーナに似た格好だが、全身が装甲に覆われていて全体的に先端が鋭くなっている。
あの巨大な機械で構成されている身体。本当なら重さで地面へと真っ逆さまなはずだ。
「………魔術で物理法則を 無視してんのか?」
それに、あの脚。魔術的な何かを感じる。
そしてさっき窓ガラスを突き破ったモノの正体は脚だ。 強化ガラスは一点の衝撃に弱いと知りながら、脚で勢い良く貫いたのだろう。
「だとすれば………見た目は機械だが、ある程度の知能があるって事か」
喋りながら駆け上がる俺を認識したのか、ソレは華麗に踊る様にビルの側面を動き回る。
強化ガラスの上で動けば割れてしまうと知ってるソレは、綺麗にガラス部分を避け、柱となるコンクリート素材部分のみを足場にしている。
「………攻撃を仕掛けて来ない、のか」
ソレは突然現れ、圧倒的な魔力で威圧したかと思えば、コンクリートを足場に踊り続けていた。
俺に対しての敵意は見せず、踊りに夢中になって戦う事を忘れているのか分からない。
―――戦闘にならないのなら、好都合だ。 このまま ソレ を避けるように突っ走り、最上階まで一気に駆け上がれば、すぐに到着する。
俺はなるべく音を立てずに再びビル側面を走り出した。その間もソレは踊り続け、攻撃を開始する雰囲気は全く無い。
俺はソレとほんの数メートルの距離まで近付き、真横を素通りして駆け抜ける。
そのまま何事も無く、ソレは踊りに夢中のまま―――、
『命令承認。妖術師排除プロトコルを確認、違反無し』
背後、俺が通り抜けた後。ソレは人間を不快にさせる程に歪な電子音声を発した。
俺はその場で脚を止め、ぐるりと振り返ってソレの場所を再び確認する。………居ない。さっきまで踊っていた機械が居ない。
「………っガラスをまた突き破ったのか!!」
俺が意識を逸らした時、目線を離した時に、ソレは自身が居る階の窓ガラスを破壊し、内部へと戻ったのだ。
そして、消失のカラクリを見破ったその瞬間、俺が止まっていた階のガラスに大きな亀裂が入った。
「………クソ、足元かよ!!」
このビルで扱われているのは強化ガラス。ソレが初めて姿を現した時と同様、一点の衝撃を加えれば、一瞬で粉々になる。
足場となるガラスが割れてしまえば当然、俺は地面に真っ逆さまだ。
「『氷解銘卿』!!」
俺の足元からビル中腹を全て包み込む程の距離。炎上している最上階辺りは避け、崩壊寸前の強化ガラスを凍らせて足場を補強する。
ソレも『氷解銘卿』に巻き込まれ、鋼鉄で作り上げられた全身が凍結して行動を停止した。
「………はぁ、はぁ……」
予想外の妖術使用に、妖力管理の調整が狂う。 せっかくここまで駆け上がってきたのに、危うく最下層まで落下する羽目になる所だった。
………いや、それより今は早く、ソレを止めている間に最上階へ向かわなくては。
『変形機構。エンジンを再始動させ、凍結を解除。………完了。起動します』
嘘だろ。
俺のすぐ足元、あの至近距離で『氷解銘卿』を全身で受けて凍ったんだ。 制御機能は失われ、冷気で張り付いた鋼鉄の身体は動くことすらままならないはず。
だと言うのに、ソレは。あの化け物は。
『重要報告。戦闘対象である妖術師を視認。作戦を開始します』
ギリギリと音を立てながら、厚い装甲で覆われた機体が変形し始める。
胸部にあった装甲は脚部へと移り、腰部の装甲は頭部の装飾品へと変わった。
「………ヴィヴィアン。アーサー王伝説に出て来る『湖の乙女』か」
あの立ち振る舞いに魔力の圧。伝承に極限まで似せた機械の形状。
そして、俺の所持する『選定の剣よ、導き給え』が微かにソレに反応を示していた。
「………いや、待て。それはおかしいだろ。どうして『選定の剣』が反応してるんだ」
アーサー王伝説に登場する『湖の乙女』は、ペリノア王との戦いに敗北し、剣を折られたアーサー王に対し新しい剣を授けた張本人だ。
それが『エクスカリバー』であり、アーサー王が手にした二本目の剣。
それに対して俺の『選定の剣』は、アーサーが石から引き抜いて血筋を証明した剣と称されるモノである。
アーサー王が持つ一本目と二本目の『エクスカリバー』は別物と扱われているが故に、根本的に湖の乙女は『選定の剣』と関わりが無い。
「………お前、創作上の『湖の乙女』なのか?」
アーサー王伝説には多数の話が存在する。
だが、目の前にいる『湖の乙女』は、実在するどの伝承にも当てはまらない。有り得ない存在だ。
「………クソ、歴史補正の性質上。俺の『選定の剣』が『湖の乙女』に引き寄せられる感覚がするな」
歴史補正。簡単に言えば、伝承と関連のある武器や力は、歴史通りの働きを見せる事が度々ある。
この『湖の乙女』が『選定の剣』とどのように関係があったのかは分からない。
もしかすると、一本目と二本目が逆だった。もしくはそもそも選定の剣は岩に刺さってなかった。なども考えられる。
故に、別世界線で『湖の乙女』と『選定の剣』は非常に近い関係にあった可能性が高く、俺の『選定の剣』は持ち主である『湖の乙女』を傷つける事が出来ない。
「………どこの誰がお前を創ったのかは知らないが、間違った歴史は正す。ポンコツ機械は直さねぇとなァ!?」
俺は足元の影から『岩融』を取り出し、ソレ―――。否、ヴィヴィアンは補強された脚先で強化ガラスを包んでいる氷の膜を突き破った。
怒号と同時に二人は動き始め、『岩融』の刀身とヴィヴィアンの脚部が激しくぶつかり合う。
接触点から凄まじい衝撃波と火花が散って、俺は反動で何階か上まで吹っ飛ぶ事になった。
このまま最上階へ向かう手もある。ヴィヴィアンを完全に無視し、逃げ切り、この監視塔を占拠する。
全妖力を使用すれば確かに可能なのだが、結局最後はヴィヴィアンとの戦闘になる。
「そうなったら、妖力切れの俺は速攻殺されちまうだろう……よ!! 」
だから今、ここでヴィヴィアンをぶっ壊す。撤退も一つの案として浮かんだが、ここまで来たんだ、やり切るしかない。
初めて創造系統偽・魔術師と戦った時、もしかするとその倍以上の速度で、俺とヴィヴィアンは攻撃を行い続ける。
『…………。』
隙を見つけては『岩融』を振るい、ヴィヴィアンの胸部を狙う。機械となれば大体この辺りに制御装置があると読んでの攻撃だ。
だがヴィヴィアンは華麗なステップで攻撃を回避し、その勢いを利用して攻撃へと転ずる。
「…………うおぉっ!!」
鋭利な脚先がキレイに弧を描き、俺の顔面向かって進み続ける。
俺は咄嗟に頭を限界まで後ろに引き、体が倒れるか倒れないかギリギリのところで姿勢を維持する。
ヴィヴィアンの攻撃を完全に回避出来た訳では無く、脚先は 頬を軽く掠り、ほんの少しだけ血が流れ始めた。
「………正史のヴィヴィアンはここまで戦闘能力に長けて無かった気がするんだがな!!」
『…………。』
あくまで仮説だが、この『湖の乙女』は正史とは違って自ら『選定の剣』を作り出し、アーサー王へと渡した可能性が高い。
いやもしかすると、ヴィヴィアン本人が円卓の一員として戦っていたなんて事も。
有り得ない、と思うかもしれない。だがそこまで考えなければ、『湖の乙女』と『選定の剣』が引かれ合い、正史とは違って戦闘能力が高いヴィヴィアンの説明がつかない。
『理解不能。妖術師の生存確率は20%弱。これから先行われる攻撃は全て無駄な抵抗と捉えられます』
「だから何だってだァ!?こっちは最初っから生存確率とか勝率とかはアテにしてねェんだよ!!」
ここで全ての妖力を使うのは流石にマズイ。後々に控えている京都の魔術師戦が苦しくなる。
妖力の節約………となれば、少ない量でかつ性能を底上げさせる為に、高密度の妖力が必要となる。
「もっと、もっともっともっと!!極限まで俺の妖力を『月封』で圧縮する!!」
俺が『氷解銘卿』を使う時と同じ妖力量を、一気に押し潰して小さく。更に『月封』で発生する圧力差を利用して、もっともっと小さく。
『重要報告。戦闘対象である妖術師から高エネルギー反応。短期戦へと変更します』
俺の動きを読み取ったヴィヴィアンは直ぐに行動に移し、 凍ったガラスに脚を貫通させ、一歩一歩と走り出す。
さっきまで殴り合ってた距離だ。ヴィヴィアンの脚の長さからして、俺に攻撃が当たる距離に入るまで約十秒。
「………妖術師相手に短期戦を挑むたァ、いい度胸じゃねェか!! 」
十、九、八、七……これ以上の圧縮はマズイ。 出来るなら五秒前には圧縮を辞めて妖術を発動させ無ければならない。
分かってる。命に関わる行為、ヤメ時は俺が一番分かってる。
「………分かってるからこそ、まだ行ける。まだ圧縮は出来る!!ヴィヴィアンを壊すには、もっと圧縮しなきゃなァ!!」
俺は自分の胸を強く掴み、妖力の圧縮に神経を集中させる。
目を閉じ、耳は聞こえず、呼吸を忘れ、感覚を無くし、俺の中。俺の妖力に意識を向ける。
次第に無からひとつ、赤黒い球体の様なモノが俺の内部で誕生した。
………足りない。この程度の密度だと、性能が上がった妖術を二回だけしか扱えない。
「妥協は、俺が許さねェ」
そう、無意識的に声が出た。 俺の本音、俺が今一番考えている事が、自然と。
目を閉じていても、ヴィヴィアンの位置、動きは濃い魔力の流れで把握出来ている。
俺のすぐ正面、鋭く尖った脚先が俺の胴体を貫こうと直進し続けている。接触まであと二秒。
接触まであと、一秒。
「…………っおおらああああ!!」
胸を掴んでいた俺の片手で、高速で動くヴィヴィアンの脚先を力強く掴む。
常時発動していた『黒影・深層領域』を解除し、ヴィヴィアンと共にビル側面からの落下を選択した。
俺は決して『遡行』をするために選んだ訳じゃない。落下する事によって、地面と接触する寸前まで、妖力を圧縮する時間を確保する為だ。
この行動に、機械であるヴィヴィアンも驚いたのか、俺を貫かんと微動だにしなかった脚先が少しだけ揺れた。
「………脚を動かしたなァ、ヴィヴィアン!!」
そのタイミングを逃さず、俺は片手で脚先を強く押してヴィヴィアンの体勢を崩す。
ヴィヴィアンは空中で横向きになり、人間の体よりも重い体で俺の倍早く落下し始める。
俺を見失ったからか、それともこのまま着地すればバラバラなってしまうからか。
ヴィヴィアンはビル側面のガラスに向かって機械の腕を向け、指先を貫通させて落下の速度を落とした。
勿論、俺もビル側面に映った影から『岩融』を取り出し、タイミング良くガラスに向かって突き刺す。
『………回避不可。全装甲を頭部に集中させ、防御形態へと移行を開始』
全身の装甲が擦れ合い、激しく金属音が鳴って聞こえる。 制御装置がある頭を守る為か、他の部位の守りを捨て、頭部のみに装甲が集中している。
「させねェよァッ!!」
全ての装甲が一箇所に集まったのを見計らい、俺は『岩融』から手を離して全身で風を浴びながら落ちて行く。
ギリギリのギリまで圧縮を続けた高密度な妖力を右手に巡らせる。それはヴィヴィアンの頭部目掛けて、鋼鉄を貫く一撃を与える術。
「『衝撃・打 』!!」
俺の右手の拳から、ヴィヴィアン目掛けて一直線に空間が歪み、何層にもなる空気の膜が誕生する。
その一枚一枚の膜が順番に振動を始め、最終的に全ての膜が共振し、その力は増幅される。
『―――回避不可。』
増幅された空気の歪みは、何枚も重なっている頑丈な装甲を完全に貫き、圧縮し、ただの薄い鉄板へと変貌した。
同時に、ヴィヴィアンの頭部にも歪みが到達し、まるで耐久度が無い潜水艦が深海に放り出された時と同じように。―――鉄塊へと姿を変えた。
だが、
『至極当然。私の核は、そもそも存在しませんから』
潰れた頭部、その中から銀色に輝く光が溢れ始める。
どこかで目にした、その眩しく光がしい光が俺の全身を覆光がくし肉体光が全て溶かさ光が俺を含む光が全体光がし、光がごと光がを光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光がを光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光がを光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光がを光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光がを光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光がを光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が光が。
▇▇が、俺の上半身全てを消し飛ばした。