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充電の切れたスマホを見て、颯は後悔する。
「ここ、どこだろっ」
辺りを見回し場所を確認してみるが、よく分からないお寺に着いてしまった。
「生徒会で夏祭りなのに…」
お寺には人がいる気配がなく、風で揺れる葉が恐怖心と悲しさを湧き出させる。颯は階段に腰を下ろし、鳥居集合を諦める。
「誰か来ねぇーかな…」
「ね?ここどこだろ、」
「うわぁ!」
颯は驚きすぎて階段から落ちそうになった。
「おっと、、大丈夫??」
「は、はい、大丈夫っす」
間一髪で颯はいかにもイケメンな男性に助けられたおかげで落ちずに済んだ。
「急にごめんね、そんな驚くとは思わなくて、、」
「あ、いや、ぜんぜんっ!俺が驚きすぎただけっすから!」
「それにしても、君はここでなにしてるの?」
「お寺を見たいなーと思って、」
そう言うと、イケメン男性はクスクスと笑う。
「嘘つかなくていいのにw嘘つくの下手だね」
「い、いや!ほんとっすよ!見たいな〜と思ったから来ただけっす!」
俺は腰を起こし、弁解する。弁解と言っても、本当は迷子になっているだけだが、恥ずかしいので隠す。
「迷子でしょ??」
心がどきっとした。こいつ、エスパーかなにかなのか?と疑問が頭に浮かぶ。
「ほら、合ってるじゃん」
「え、なんで?!」
こいつ、やっぱりエスパー?!なのかと再度浮かぶ。
「顔に出てるよw」
そう言われ、友達とトランプでババ抜きをしていた時を思い出した。ババ抜きなどでは俺はいつも負ける。そして、友達からは「颯、わかりやすい」と絶対に言われた。
(今まで、その意味が分からなかったけど顔に出てたのか…)
「実は俺も迷子なんだよね、」
「え?!」
しっかりしてそうなのにと言いそうになったが、それは偏見だと思い、颯は言葉を飲み込む。
「人がいたから、道聞こうと思ったんだけど」
「俺も、迷子から救い出してくれる神様かと思ってましたよ、さっきまでは」
気が抜けて、颯はまた腰を下ろす。
「スマホの充電も切れちゃって、つかないし…」
「俺もっす!」
こんな偶然あるんだな、と颯はイケメン男性を見て心の中で呟く。
「君はなんでここにいたの?」
「夏祭りを学校の生徒会メンバーで、行くために鳥居集合だったんですけど…」
「俺と一緒だな、とりあえずここにいても変わらないから、動こ」
「そうすっね」
イケメン男性から手を差し伸べられ、その手を取り立ち上がる。
(やることもイケメンだな…)
「一旦、この階段から降りようか」
「はい!」
長い階段を降りると、そこにはたくさんの屋台があった。そして、イケメン男性は屋台の人に話しかけた。
「すみません、この近くに鳥居はありますか?」
「あぁー!あるある!ここを真っ直ぐ行けばいつか見えると思うぞ〜」
射的を開いていた中年のおじさんに感謝をして、鳥居に向けて足を動かす。イケメン男性は途中の屋台で止まる。
「ちょっと、待ってて!」
「は、はい」
初めて会った人なのに、こんなに心を許してしまう。(不思議な人だ…)
イケメン男性は「ごめん、ごめん、」といいながら、屋台定番のチョコバナナを持って、帰ってきた。
「はい、これ!」
両手に持っていたチョコバナナの片方を俺の前に差し出す。そのチョコバナナはイケメン男性が持っているものと比べ、カラフルなチョコスプレーが付いている。
「え、いいんですか?!」
「どうぞ、受け取ってください」
(やっぱり、イケメンだ…)
「ありがとございます!いただきまーす!」
バナナが大きく、チョコスプレーが口に入ってきて咽せる。
「大丈夫ですか?」
「は、はい大丈夫です、すみません」
「あ、では俺はここら辺で」
「そうですか、色々とほんとありがとございました!」
イケメン男性は手を振り、奥に消えて見えなくなった。
少し歩くと鳥居が見え、生徒会のみんながいた。
「すみませーん!待たしちゃって、」
「ほんとだぞ!どんだけ待ったことか、」
会長が俺に怒る。
「まぁまぁ、竜凰さん、そんな怒らずに」
副会長の新木先輩が会長を宥める。新木先輩は2年生で、いつも優しく、すごく親切な先輩だ。
「なにがあったの?五十嵐」
書記で同級生の七瀬が俺に聞いてくる。
「や、普通に迷子になってて…」
「なら、スマホで連絡や電話してくればいいでしょ!」
「スマホの充電切れて、」
「あっそ、どうでもいいけど!バカ颯も来たし行こ!」
「そうですね、行きましょうか」
新木先輩がそう言うと俺の背中を押して、耳打ちする。
「七瀬ちゃん、あんなこと言ってるけど1番颯くんのこと心配してたから、勘違いしないであげてね、後これ、よかったらモバイルバッテリー使って」
「は、はい、ほんとすみませんでした!」
新木先輩からモバイルバッテリーを受け取り、みんなで屋台を回る。
「みんなでお揃いの光るブレスレットつけましょ〜!」
七瀬がお子ちゃまなことを言う。
「さすがに恥ずかしくないか?」
会長が言うが、七瀬は「記念にしましょうよ!」と押し通した。俺は手首に付けられた黄色に光るブレスレット見ていた。前を向くと、誰もいなくなっていた。
(また、迷子に…)
どうしようかと立ち往生していたら、声をかけられた。
「あのwもしかして、迷子ですか??」
少し聞き慣れた声が後ろからした。振り向くと、イケメン男性が立っていた。
「あ!はいwまた迷子です…」
「2度も会うなんて、運命ですかねw連絡交換しますか?でも、充電無いんでしたね、」
「いえ、モバイルバッテリー貸して貰えたので、充電溜まってます」
「俺もです」
そういうと、イケメン男性はモバイルバッテリーと繋がってるスマホを出してQRコードを出てきた。
「はい!いつでも連絡してきてw特に迷子になったらね?」
「はい!ありがとございます」
「いた〜!るいさんほんと何回迷子なるんですか?かいも迷子だからたいへんなんですよ!」
「ごめーん、れお」
イケメン男性の後ろから俺と歳の近いかっこいい男子が出てきた。類は友を呼ぶとはこのことなのだろうと、思った。
「そちらの人は?」
「あー名前知らない、友達」
「どんだけ迷子友達作るんですか、ほんとに…
かい探しに行きますよ!」
そう言って、れおと呼ばれるかっこいい男子はイケメン男性を連れていった。スマホのバイブが2度なり、確認すると、1つは七瀬からの心配のメール。2つ目はさっき交換したばっかのイケメン男性からの「るいって呼んでね」という内容のメールだった。颯は生徒会と無事合流し、頭の片隅にるいというイケメン男性を思い浮かべながら花火を見た。